第9章「記憶の研究所(ラボ)へようこそ」
「……ここが、“俺たち”の始まりの場所……?」
俺たちは今、山奥の廃墟にいた。
元・国家医療機構。
ゾンビ化ウイルスの開発源とも噂される“伝説の研究所”。
とはいえ、見た目はただのボロ屋。
「廃墟にしか見えないけど……」
「でも、ここでレイジと出会った。たぶん、最初に」
クラリッサがぽつりとつぶやく。
施設の中に入ると、まだ動いてる端末が1台だけあった。
ヒナが起動ボタンを押すと――
《被験体No.6:起動認証完了》
「……出たよ、No.6ってまた言ってるよ!!俺が被験体なの!?」
端末の映像に、映っていたのは……
白衣姿の俺だった。
「やっべええええええ!!俺、科学者っぽい!?え、イケてる!?これは夢か!?」
クラリッサが、まるで恋する乙女のような顔で呟く。
「レイジ……カッコよかった……あのとき、研究者としても、人としても、優しかった」
映像の俺は、こんなセリフを言っていた。
「この実験、やっぱり止めるべきだ。死者を生き返らせるなんて、神の領域に踏み込むことじゃない。
でも……彼女だけは、助けたい……彼女を、俺は――」
クラリッサは、ふっと目を伏せた。
「レイジ……あのとき、ワタシを助けようとした。
でも、事故があって……ワタシ、死んで、ゾンビになって……でも、愛は残った」
「こえぇよ!?愛だけデータとして残るなよ!!バックアップ愛とかやめてくれ!!」
ヒナ:「兄貴、マジで“元・天才研究員”だった説あるんじゃ……?今からでも論文書いたら?」
「今このタイミングで書いて誰が読むんだよ!?ゾンビ学会か!?」
だがその時――
施設の奥から、カツン、カツンと、ヒール音。
「お久しぶりね、レイジくん」
現れたのは、謎の美女研究員。名前は――Dr.ミナミ。
・黒髪ストレート
・眼鏡+白衣
・声が妙にエロい
・ゾンビにモテそうな雰囲気
「君は、被験体No.6……この計画の“核心”よ」
「やめて!!核心とか言わないで!!そんな重要人物だったらもっとちゃんとした人生歩んでるはずなんだ!!」
Dr.ミナミは、説明を始めた。
「“愛着記憶”だけを残し、肉体をゾンビとして蘇生させる――それが《L.O.V.E計画》。
君は、その実験の“記憶インプラント”の提供者だったのよ。
つまりクラリッサの中には、君の“愛”が組み込まれてるの」
「やめろォォォ!!俺の愛を素材にすんなァァァ!!データ化すんなァァァ!!」
クラリッサは震えながらつぶやく。
「だから、ワタシ……レイジしか、愛せない。ずっと、ずっと……忘れられなかった」
Dr.ミナミは言う。
「クラリッサを“完成形”にするには、君の“脳”が必要なの。
つまり――脳、ちょーだい♡」
「ホラーすぎるだろォォォォ!!なんでそんなカジュアルに脳くれって言うの!?!」
ヒナ:「はい兄貴アウトー!その脳、商品価値あるってよ!」
「黙れ妹ぉぉぉ!!親族なら止めろォォォ!!」
――そのとき。
クラリッサがDr.ミナミの前に立ちはだかる。
「レイジは、渡さない。レイジの脳も、心も、ぜんぶ……ワタシのものだから」
ミナミ:「それじゃあ、力ずくでいただくわ」
――戦闘開始!
クラリッサ vs Dr.ミナミ
・クラリッサ:ゾンビパワー全開、手から紫電のビーム
・ミナミ:注射器型ドローン×12を召喚して空中戦
ヒナ:「すっごい戦ってるけど、ここ風呂場だよ!?濡れた床でめちゃくちゃ滑ってるよ!?」
俺:「誰か止めてくれこの温泉ドラマァァァ!!」
◆
結局、ミナミは一時撤退。施設も崩壊寸前。
俺たちは、クラリッサに手を引かれて脱出する。
彼女はぼそりとつぶやいた。
「……次、ワタシが壊れたら、止めてくれる?」
「何言ってんだ。俺が止めなきゃ、誰が止めんだよ。お前のこと、見捨てられるわけないだろ」
クラリッサの目が、少し潤んだ気がした。
ゾンビなのに。
感情があるのかもわからないのに。
でも確かに――その手は、温かかった。