表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/17

第8章「湯けむりゾンビと、ぬるめの真実」

温泉。

それは日本人の魂。

終末世界でも、人は(ときどきゾンビも)湯に浸かりたい。


俺は脱衣所で、タオル1枚の姿に震えていた。


「なんでまた、こうなるんだ……」


ヒナ(妹)が風呂桶を抱えて言った。


「だって兄貴、疲れてるでしょ?ゾンビたちも“愛の特訓で汗かいた”とか言ってるし。みんなで温泉、行くっきゃないでしょ!」


「ゾンビって汗かくのかよ!!てか混浴!?混浴かこれ!!」


 


案の定、湯けむりの向こうから見覚えのあるシルエットが現れた。


「レイジ〜! 一緒にあたたまろ〜♪」


「お前か!!絶対お前だクラリッサ!!」


彼女は浴衣(なぜか背中が破けている)姿でつかつかと近づいてくる。


湯けむりの中、ゾンビ美女たちが背後にずらりと並ぶ。


・軍人ゾンビ、頭にタオルを三角折り。

・元アイドルゾンビ、湯船でポーズ決め中。

・保育士ゾンビ、桶で脳みそ洗ってる。


「なんでみんなリラックスしてんだよ!!!お前ら終末世界感ゼロか!!」


 


そんな混浴地獄で、クラリッサが静かに呟いた。


「レイジ……ワタシ、思い出したこと、ある」


「え……?」


クラリッサが、珍しく真面目な顔だった。


「ゾンビになった時のこと。……少し、思い出したの」


 


――数年前。


彼女は“ある医療研究機関”で働いていた。


表向きは再生医療、裏では「死者の蘇生実験」が行われていた。

クラリッサは優秀な研究員であり、志願して被験者になった。

恋人が事故死したことがきっかけだったらしい。


「……でも、ワタシ、死んだ。実験、失敗だった。でも、目が覚めたとき――レイジ、見たの」


「えっ、ええ!?」


「レイジ、研究員の一人だった。ワタシ、ずっと見てた。……笑ってたレイジ、好きになった」


 


俺は頭が真っ白になった。


「ちょ、待って、俺!?研究員!?そんな過去、ないぞ!?俺、フリーター歴10年で、最新の医療なんか針すら触ったことないぞ!?」


「でも、アナタの顔、夢で何度も見た。たぶん、“記憶操作”されたかも。ワタシの、愛だけ残った」


「都合よく残るなよ!!ゾンビの執着ってすげぇな!!」


 


その時――浴場の隅のモニターが起動する。


《ようこそ、被験体No.6。計画は、まだ終わっていない。》


謎の音声が響く。


ヒナが湯船から顔を出す。


「No.6……お兄ちゃんのことじゃない?」


「おい待て、俺、なんかの人体実験参加者だったのか!?」


クラリッサ:「やっぱり、レイジ、特別。運命、つながってる」


「怖ぇぇぇぇぇぇ!!!つながり方が怖ぇぇぇよぉぉぉ!!!」


 


そのとき、外から爆発音。


「ゾンビ狩り部隊だ!男を確保しろ!!ゾンビはすべて焼き払え!!」


 


――戦闘開始。


浴衣のまま戦うクラリッサ(湯気で髪ふわふわ)、

桶を武器にするヒナ(超強い)、

脳スープをかけて攻撃するマイちゃん(味で溶かすタイプ)


俺:「頼む!俺に平穏な入浴時間をくれぇぇぇぇ!!!」


 



騒動の末、なんとか敵は撤退。

温泉はボロボロになったけど、クラリッサが一言。


「レイジ。ワタシの秘密、もっと知りたい?」


「……ちょっとだけなら、知ってもいい」


その時、クラリッサが優しく微笑んだ。


「じゃあ、次は……“最初に会った場所”へ、行こう?」


 


俺は、何かが動き出したのを感じた。


恋?運命?ゾンビウイルス?


どれも怖ぇぇぇぇぇ!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ