第7章「地下迷宮とゾン美選手権」
俺は今――巨大な大浴場の真ん中で、全裸のまま土下座していた。
「ごめんなさい……俺が悪かったです……パンツ返してください……」
「レイジ、カワイイ。モジモジしてるの、エロくてイイ」
「やめろ!その目で言うな!!ゾンビ特有のドス黒い目で言うな!!」
事の発端は、ほんの数時間前だった。
◆
張り紙:《ゾン美選手権 開幕》
その案内に従って進んだ先にあったのは、巨大地下迷宮&闘技場。
クラリッサ曰く、「ここで一番“愛”にふさわしいゾンビを決める」とのこと。
レイジ争奪戦、まさかのバトルロイヤル開幕。
クラリッサは言い放つ。
「優勝者には、レイジのハツツガイケン、アゲル」
「勝手に俺の人生のイベント配布すんな!!ハツツガイケンってなんだよ!!初夜券じゃねーか!!」
参加者たちは、何をどう間違ったかみんな超美人のゾンビ。
・【エントリーNo.1】元女優ゾンビ「ミレイ」:常に決め顔。キスで窒息させる技持ち。
・【エントリーNo.2】元軍人ゾンビ「コマチ」:全身義肢、パイルバンカーで愛を表現。
・【エントリーNo.3】元保育士ゾンビ「マイ」:笑顔が怖い。口癖は「ぜんぶ食べちゃおっか?」
・【エントリーNo.4】元お天気キャスターゾンビ「セラ」:低気圧でテンション上がる。
・【エントリーNo.5】クラリッサ(シード枠):執念で生きてる。ていうか死んでるけど生きてる。
ヒナ(妹)は観客席からポップコーンを食べながら実況中。
「いやぁ〜すごいね兄貴。人生でこんなに“求められる”ことある?」
「黙って見てろって!!実況すんな!!」
第1種目:《ゾン美ボディビル対決》
ゾンビたちが筋肉美(ない場合は骨格美)を競い合う謎競技。
筋肉の代わりに“肉片”をどう魅せるかが評価ポイントらしい。
ミレイ:「このハムのような太もも……見て……♡」
コマチ:「肩甲骨から火が出せます。愛です(ボオオッ)」
マイ:「お腹で音楽鳴るよ♪(ぽんぽんぽん♪)」
審査員ゾンビ:「マイちゃん、感動のドリ腹」
「ドリ腹って何だよ!?どこのゾンビ専門用語だよ!!」
第2種目:《愛の短歌コンテスト》
ゾンビたちが自作の“愛の五・七・五・七・七”でレイジを口説く。
クラリッサ:
「レイジへの おもいかたくて あたまわるい
でもだいすきで しんでもすきよ」
「知能の低さで愛を語るな!!でもちょっと韻がいい感じで腹立つ!!」
第3種目:《脳ミソクッキング》
ゾンビたちが“レイジに食べさせたい脳料理”を調理して審査。
当然、材料はお察しである。
マイ:「今日はね〜、元上司の脳でスムージーつくったよ〜♡」
セラ:「低気圧で発酵した脳味噌って、トロッとして絶品〜」
「食わねえよ!?誰が食うんだよ!?人類なめんな!!」
ヒナ:「お兄ちゃん、こっそり味見してみたら?以外とイケるかもよ?」
「妹ぉぉぉぉぉ!!どっち側についたんだよお前ぇぇぇ!!」
そして――クライマックスは《最終種目:愛の告白ガチンコ対決》。
選手たちが一人ずつ、レイジに「本気の愛の言葉」を投げかける。
審査員はレイジ本人。つまり、俺が誰に一票入れるかで、結婚相手が決まるという地獄。
クラリッサは、深く深呼吸してこう言った。
「レイジ。ワタシ、キミのこと、まえからずっと見てた。
オニギリ食べてるときの顔も、ATMで残高みて絶望してる顔も、
スカートの中ちら見してバレて土下座してたときも、ぜんぶ、ぜーんぶ、スキ!」
「その愛の履歴、監視カメラかよ!!あとやたら恥ずかしい場面多すぎない!?俺のプライドどこ!!」
観客ゾンビたち:\フゥゥゥーーーーー!!/(スタンディングオベーション)
俺:「えええ!?なんで盛り上がってんの!?なんでゾンビにウケてんの!?俺、死ぬの!?」
クラリッサが静かに歩み寄る。
「レイジ、決めて……ワタシか、それとも……死?」
「選択肢ェェェェ!!!命か結婚っておかしいだろ!?」
しかしそのとき――迷宮の天井が崩れ、外から突入してきた謎の影。
「そこまでだぁぁぁ!!」
現れたのは、レイジの元カノ(生存者)、ユカリだった。
「レイジ……私、あんたのこと、まだ……忘れてないのよ!!!」
ゾンビたち:「誰この女ァァァァ!!!?」
クラリッサ:「ライバル、増えた。ワタシ、嫉妬、する!」
俺:「やめろォォォォォォ!!!恋のバトルロイヤルやめろォォォォ!!」
愛は止まらない。狂気も止まらない。
ゾン美選手権、まさかのシーズン2突入を迎える気配。
俺の明日はどっちだ!?