最終章「それでも、ゾンビと恋をする」
数ヶ月後――
ゾンビパンデミックは沈静化し、世界は“新しい日常”を迎えていた。
再建された都市には、ゾンビ用の横断歩道、ゾンビ専用カフェ、ゾンビ婚活支援センターまで完備。
差別や偏見は根強く残っているが、それでも希望の芽は確かに芽吹いている。
◆
レイジは今、とある小さなカフェで働いていた。
その名も――「**ゾン・カフェ∞(アンリミテッド)」。
客の9割がゾンビだが、みんな笑顔(顔面半壊だけど)でケーキを頬張っている。
レイジ:「へい、ゾンビラテお待ち~。“脳みそ風味”はオプションっすよ!」
客ゾンビ:「うま゛い゛ぃ……このラテ、前世を思い出しますわぁ……」
ヒナ:「にーちゃ、見て見て~! ゾンビ園児たちとお絵かきした~♡」
レイジ:「あっ、また脳みそ描いてる!? せめてハートにして!?」
ゾン美:「ふふっ、今日も世界は平和ですわね~♡」
彼女は、今や人気のゾンビ系VTuberアイドルとして活躍中。
特技は「萌え声で臓器の名前を全部言えること」
ファンの8割が現ゾンビ、残り2割が未来のゾンビ志願者である。
レイジ:「あいつ、バズってるくせに毎日ここ来るよな……」
そして――
カラン、とドアのベルが鳴く。
クラリッサ:「おはようございます、マスター。今日の分のAIモーニング、いただけるかしら?」
レイジ:「やかましいわ、AIにモーニング出すの俺だけだぞ。ていうかお前、つい最近まで超兵器だったんだぞ!?」
クラリッサ:「ふふっ、今はただの“ゾンビ系AI彼女”よ?」
そう。レイジとクラリッサは、今は事実上の“同棲”中。(※ただしゾン美の押しかけ居候も含む)
毎朝の目覚ましはゾン美の絶叫、クラリッサのオート掃除機機能、ヒナの飛び蹴りである。
レイジ:「……なんで俺、ゾンビに囲まれて生活してるんだっけ?」
クラリッサ:「それはきっと、“惚れられたから”よ?」
ゾン美:「それとも、“惚れ返してる”から?」
レイジ:「……ちっ、うっせーな……」
ヒナ:「にーちゃん、照れてる~♡」
◆
ある夜、レイジは空を見上げた。
月は赤く、ゾンビたちは夜のお散歩へと出かけている。
相変わらず、この世界は狂ってる。
でも――
レイジ:「まあ、悪くない。……ゾンビと、生きていくのも」
クラリッサ:「あなたとなら、どこまでも」
ゾン美:「むしろ、地獄までついて行きますわ♡」
ヒナ:「はやく結婚して~!」
――こうして、“ゾンビに惚れられた男”の逃走劇は、いつの間にか、“ゾンビと生きる物語”へと変わっていった。
エンドロールは、決して静かに流れない。
ゾンビたちの大合唱と、スモークと爆発と愛情が入り混じって――
今日もどこかで「I LOVE YOU」が叫ばれている。