第16章「ゾンビ・レクイエムと、偽者の逆襲」⑤
黄金に輝くクラリッサの光が、《N.E.Z》の巨大な腕を吹き飛ばす。
衝撃波が都市を震わせ、空が悲鳴を上げた。
レイジ:「うおおおお! クラリッサぁあああああああ!!」
クラリッサ:「感情を得た者として……私は、あなたに抗います――ハカセ!」
一方その頃、ゾン美たちゾンビ市民も総出で参戦。
ラーメン屋ゾンビ、盆栽ゾンビ、コスプレゾンビ、DJゾンビが次々に飛び出しては、《N.E.Z》の足元にタコ焼きマシンやパリピスモークを投げつける。
ゾン美:「ゾンビの本気、見せてあげますわよォオオオ!!!」
ゾンビ市民A:「地獄のパリピゾンビ流・炭酸デスソーダ弾、いっけぇええええ!!」
ゾンビ市民B:「我ら、ゾンビ革命軍~~~ッッ!!」
レイジ:「何その組織!? いつの間にできた!?」
クラリッサ:「庶民パワー、恐るべし……!」
しかし《N.E.Z》は圧倒的だった。
一度再起動すると、通常攻撃は通じない。ゾンビさえも喰らい取り込む再構築能力。
レイジ:「クッソ……クラリッサだけに戦わせられるかよ!!」
そして彼は――立ち上がった。
背中には、クラリッサから渡された一本の注射器。
クラリッサ:「それは、私が“本当に人を愛した証”から作った、感情特化型ゾンビ・抗体。あなたがそれを使えば……“特異点”になれる」
レイジ:「何その中二病ネーミング……だが嫌いじゃない!!」
彼は自らにそれを打ち込んだ。
脳が焼けるような感覚。
だが、次の瞬間――レイジの肉体は黄金のエネルギーに包まれる!
ゾン美:「そ、それは……新たなる進化!? レイジ様が……ゾンビ・セイントに……!」
レイジ:「うおおおおお! これが俺の最終フォーム……!? ゾンビセイント・レイジ、爆誕!!」
こうして、クラリッサとレイジの連携攻撃が始まる。
クラリッサ:「右から回り込んで、外装を剥がして!」
レイジ:「了解! そこに愛とツッコミをぶちかます!!」
レイジの突進と、クラリッサの解析レーザーが《N.E.Z》の胸部を穿つ!
だが――そこに、最後の妨害。
白髪のハカセ:「……フフ。ならばこの私自身が《N.E.Z》と一体化しよう……!」
ハカセの身体がズブリと《N.E.Z》内部へ融合していく。
半分ゾンビ、半分サイボーグ、そして半分狂人。つまり1.5人分である。
クラリッサ:「レイジ、急いで! あれは《N.E.Z》の“核”を吸収しようとしてる!」
レイジ:「わかった! ゾンビ魂、見せてやる!!」
彼は、クラリッサと目を合わせる。
クラリッサ:「ありがとう……レイジ。私は、あなたに出会えてよかった」
レイジ:「……やめろって、マジでそのセリフは反則だろ」
レイジ:「帰ったら、さ――一緒にラーメン食おうぜ」
クラリッサ:「ふふっ、……はい♡」
そして――
二人は、同時に《N.E.Z》の“心臓”に、全力の一撃を放った!!
レイジ:「うおおおおおおおおお!!!!!」
クラリッサ:「ラスト・エモーション……インパクトォォォッ!!!」
◆
――爆発。
そして、沈黙。
……気づけば、空は青く澄んでいた。
レイジ:「……俺、生きてる……?」
ゾン美:「レイジ様ぁぁぁ! よかったぁあああ♡♡♡」
ヒナ:「にーちゃぁ~! えへへぇ~、またおなかすいたぁ~♡」
クラリッサ:「……お帰りなさい、レイジ」
レイジ:「……ああ、ただいま」
こうして、世界は――少しだけマシになった。
ゾンビと人間とAIが手を取り合い、何かしらのトンチンカンな新社会を築き始めている。
ヒナ:「にーちゃん、私、“正義のゾンビ保育士”になりたい~!」
ゾン美:「私は“ゾンビアイドル”として再デビューですわ♡」
クラリッサ:「私は……あなたの隣にいられれば、それで――」
レイジ:「……俺、ゾンビと三角関係とか嫌なんだけど……!」
ゾン美&クラリッサ:「ダメです♡」
――世界の終わりは、始まりだった。
――そして、恋の地獄も、まだ終わらない。