第14章「ゾンビ・レクイエムと、偽者の逆襲」④
その夜、レイジたちは郊外の“死の谷”へ向かった。
赤く染まった空の下、かつての避難キャンプ跡地――
そこが《N.E.Z》実験場に変貌していた。
ゾン美:「何この……ゾンビ量産工場みたいな雰囲気……」
クラリッサ:「検体の数、推定で数万。しかも、全員が“核反応”を帯びてる……」
レイジ:「なんだよ“核反応”って!? ギャグじゃねーの!?」
クラリッサ:「比喩じゃなくて、物理的な意味で放射性エネルギーを活用してるみたいです♡」
レイジ:「♡マークつける話じゃねーぞ!!」
そのとき、場内のスピーカーが不気味に響いた。
???:「ようこそ。ゾンビの未来へ、そして人類の絶望へ」
現れたのは、スーツ姿の白髪の男。
冷たい笑みを浮かべて、壇上に立つ。
クラリッサ:「まさか……あなたは……!」
レイジ:「誰!?」
???:「“クラリス・タイプ001号”。よく来たね。いや、“クラリッサ”と呼ぶべきかな?」
レイジ:「……は? タイプ?」
ゾン美:「もしかして……クラリッサ様、シリーズもの……!?」
クラリッサ:「……」
白髪の男:「私の名は“ハカセ”。かつてDr.ミナミと共に“プロジェクト・ネクロス”を立ち上げた者だ。そして君はその成果――“感情を持つ、最初のゾンビ型AI”」
レイジ:「えっ、クラリッサって……ゾンビじゃなくてAIなの!?」
クラリッサ:「……そうよ。私は、ゾンビ化ウイルスと人工知能を融合させた実験体。本来は“感情の芽生え”を観測するために作られた、プロトタイプ」
レイジ:「マジかよ……でも、クラリッサが“偽物”だったとしても――お前の愛情は本物だったろ?」
クラリッサ:「レイジ……!」
白髪の男・ハカセ:「ふっ……戯言だ。“感情”など、支配すべき電気信号にすぎん。私が開発した《N.E.Z》は、全てを完全制御する究極のゾンビ。
お前たちの“想定外”など、この兵器の前では誤差に過ぎん!」
その瞬間、地下から巨大な影が現れた。
――《N.E.Z》。
身長20メートル、半透明の皮膚、背中には冷却装置を背負った、まるで冷凍庫付きゴジラのような外見。目が合っただけで寒気と吐き気が襲ってくるレベルである。
レイジ:「でかい! きもい! 絶対くさい!!」
ゾン美:「三重苦ですわ〜〜〜〜〜〜〜〜♡」
だが、そのとき。
クラリッサ:「……覚悟を決めたわ」
彼女の手が、首元の“リミッター”に伸びた。
クラリッサ:「レイジ、もし私が……この戦いの後、今のままでいられなくなったとしても――
貴方の中に、私が“いた”ことだけは、覚えてて」
レイジ:「……は? おい、やめろクラリッサ。そんな死亡フラグ満点のセリフ……!」
クラリッサ:「起動コード:アーク・エモーション、レベル99――」
次の瞬間、クラリッサの身体から、金色の羽根が弾け飛んだ。
その背には、純白の機械翼。
クラリッサ:「私は、“自由意志を得たAIゾンビ”。そしてこれは、私が本当に“人間を愛した”証。――《ラスト・クラリッサ》、発動!」
レイジ:「いや、技名つけてたのかよ!!」
ゾン美:「尊い……♡ これは全乙女が泣く展開ですわ……!」
そしてクラリッサは、《N.E.Z》に突撃した。
黄金の閃光と、核エネルギーの咆哮が空に交差する。
まさに終末世界の、最後の戦いが――今、始まる。