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ぼくを攫って  作者: すがつさじ
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運命の歯車





「流石フォース様、どんなに殴っても死なないって噂、勘違いしてたぜ。俺の母さんのように、お前もきっと苦しんでくれるんだから、清々するよ」



呪いだ。恨みが連なる。

私が起こした戦争によって国軍兵士たちが毎晩のように地下牢にいる私へ暴力を振るようになった。



お母様が殺されてから、私はいつからここにいるのだろう?私は一体何がどうして?他人に恨まれて毎日痣を、切り傷を作られているのだろう?




……………もう疲れた。





「……呪いをかけた。お前の親もお前も……この国はおかしくなった。こんなもので済めば容易い!どうせお前は死なない。もっと!もっと、もっともっともっと、…苦しまなければ、許せない…!」





痛い、痛い、助けて。人の辛い気持ちが突き刺さる。

私が死なないから、私が『未知数』だから?





___お母様、会いたい。お願いまた微笑みかけて。



わたし、普通の子になりたい。 


お母様の子に生まれた幸せより、今を生きている方があまりにも苦しくて苦しくて、命を投げ打つことばかりを頭が妄想する。










この世界は残機がある。


ファーストは3つ命がある。

セカンドはあと2つ。



残りの1つはサード、と呼ぶ。

この人たちに人権はなく、守られなければすぐ死んでしまう。その厄介さに、国たちはエデンと呼ばれる場所にサードを送り込む。


そこにいる人たちの多くは自殺を選ぶ。

生きている意味がわからないのだ。"生きている"という実感が得られないのだ。



そうした感覚は精神の危うさを招いて、自殺を増幅させる。







生きることは恵まれている?






いいえ。






…生きることは呪いだと感じる。




私のお母様は未知数、この世界ではフォースと呼ばれる者だった。



フォースとは死なない者。

この世に1人以上存在してはならない者。




私が小さい頃に、フォースとしての生命が尽きていってしまったお母様は死んだ。


私が新しいフォースを後継したから、お母様は死んでしまった。



最後まで幸せになることもなく、それでいて私には地下の冷たい床で私を冷えさせまいと、とびきり抱きしめてくれた。




私が幸せだったのはお母様といた時だけで、もう何年経ったか?感覚が分からない。1000年は経ったろうか?それとももっと?




この世界はおかしくて、残機が減らない限り生き続けてしまう。




一般人のサードの多くは国軍と呼ばれる組織に入る。そうして、自分の存在価値や永遠の命に安心を覚える。愚かなり、人類!







…それでも



遥か昔、フォースは神様と呼ばれる存在であった。

 



___近年新しい事実が見つかるまでは。




新しい事実。

フォースの中に歯車が入っていることがお母様の遺体から見つかった。




その歯車を砕いた途端、世界は変わってしまった。

ただの人類であった人々は、残機が3つある世界へと変わった。




そして、残機を誤魔化すことはできない。

この世界では残機を問われた際、嘘を吐かないように仕組まれている。






………そう。全て。私の体の中にある歯車の仕業。




だから、私を恨む人はわざわざこの部屋に来る。そして毎日何かを呟いて私を痛めつけて、それなのに自分は泣いている。



終わりにしたい。私だって。





運命の歯車はランダムで、体内のどこにあるか分からない。

たとえ肉体を引き裂かれようとも、フォースは再生してしまう。生きている内にフォースの体内を探ることは不可能である。



 


____皮肉だ。

こんな体、さっさと解放してお母様に会いたい。





もう幸せが何だったか、とっくの昔だ。

思い出せない、どんな感情だった?嬉しかった?生きている気がした?






私は幻覚を毎日見る。

この地下牢が、深海にあるような、ぶくぶくと気泡が見える。



私を恨む国軍兵士が、放つ言葉が泡のように聞こえて、溺れるような感覚。




視界が青くて、暗い。

物心ついた時から同じ景色。また、同じ色。







早く誰か、私を殺して。

今の私が求める最も幸福でありふれた望み、叶えてくれたらいいのにな。







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