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ぼくを攫って  作者: すがつさじ
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1000年のぼくと、生まれたばかりのきみ



元々漫画にしようと思って眠っていたものを掘り起こしました。気楽に続けたいです。




____音が聞こえる。ごうごうと風を立てるような音。ひどく、胸の中を荒らされるようなこわい、こわい音。




『…ほら、あの人じゃない?何十年も前の易崙戦争に巻き込まれたって人。』





『アイツ、家も家族も友達も一気にいなくなっちまったって話だぜ。1人で1000年以上なんて…。』





傘は嫌い。誰かに守られているような気がして、不安になる。ぼくはいつだってひとりぼっちだ。ざあざあ雨が降って、耳にかかった雨。首に滴る不快さを拭わず、歩き続けた。





『アレが噂の。先生以外にもいたのね…。そうは見えないけれど、誰も知り合いがいないなんてどんな気持ちなのかしら。』



『同情はするが、そんなに生きてるのなら国軍に入ればいいのに。アイツ確か“ファースト”様だろ?…やっぱ高貴な方は俺たちと考えることが違うのかね。』





雨にかき消されるはずの、ぼくを傷つける音がどうしようもなく耳に響く。拒否しているのはぼくで、あなたたちは悪くない。それでも人らしく傷ついてしまうのはぼくが弱いからだろうか?





…きっとそうでもないんだろう。

ぼくは死に損ないの生きる死体だ。ただ運命の手のひらに踊らされてただただ死ぬその瞬間を天国みたいに期待してる。





『“サード”の集まり、エデンにも行ってるらしいぜ。あんなところに行くなんて本当変わり者だな。』



『もう廃人みたいな気分なんじゃねえか。たまに先生と崙の後継者様が何十年に1回訪ねてくるみたいだが、ロクに会話もできねえらしい。かわいそうなお方だ。死んでも死にきれないのだろう。』





ぼくは歩き続けた。何も音がなくなるまで。ぼくを飲み込んでしまう何かが出てこなくなるまで。そうしたらぼくはやっと…雨が止んでいることに気付いた。





おつきさま、どうかぼくをまもって。なんて、子供みたいに甘えられたら。ぼくだってきっと幸せになれる?



ぼくは一体いつから、1人でここに生き続けているんだろう。






 











_____あなたの望みは?



ぼくはただ生きているということ。

家族がいること。

毎朝、トースターが動くこと。

おはようという友人が明日も生きていること。

知らない人も笑顔でいること。




そうだ。ぼくはみんなを愛している。




でもぼくはひとりぼっち。この小説に似合わないくらいぐらい1人だ。




呼吸していて、誰も。ぼく以外この国で生きていないから。

エデンより死に近い、ぼくが生まれ育った国。




ぼくはたったひとりの生き残り。

死んでも死にきれない、希望の片想い生命。




常識なんて、人それぞれが生きてきた人生とそれらを取り巻く環境の物差しでしかないのに。

ぼくはきっと死なない意気地なしのレッテルを貼られている。




…かみさまどうか。ぼくをひとりにしないで。

おつきさま。ぼくよりはやくねないで。










少年は震える体を床に抱き寄せる。








 

___ああ。ひとりだ。










なあ。聞こえている。













挿絵(By みてみん)

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