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絶対に癒やしをお届けする配信(2)

 美味しいモンスターを探して、深層を徘徊する私とミライちゃん。

 しばらく歩き、やがてのっそりのっそりと歩くイノシシ型モンスターを発見する━━名前は、クレイジービッグボアと言ったはずだ。


「ちゃんと目と耳を塞いで下さいね!」


"ヒャッハー! 狩りの時間だァ!"

"なんで耳もw!?"

"お腹すいたからね。仕方ないね"


 私が飛びかかろうとした時、ミライちゃんが、


「レイナ様! ここは私がやってみたいッス!」


 そんなことを言いながら、身を乗り出した。



「ミライちゃん? ここ、深層だよ? 大丈夫……?」

「はいっス! 任せて欲しいッス!」


 ミライちゃんは、自信満々にモンスターの前に飛び出すと、


「そのお肉! 大人しくレイナ様に献上するッス!」


 そう声を張り上げた。


 ブモゥゥゥ!

 クレイジービッグボアは、怒り狂った様子でこちらを見ると、脇目も振らずにミライちゃんに飛びかかる。

 ミライちゃんは、回避する素振りすら見せずにクレイジービッグボアを迎え撃ち、


 ━━そのまま凄い勢いで吹っ飛ばされた!



「ぇええええ!? ミライちゃん、大丈夫!?!?」


(いざとなったら割って入って仕留めつつ!)

(エリクサー、エリクサー……!)


 慌てる私をよそに、ミライちゃんはムクリと起き上がり、



「痛いッス〜!?  レイナ様、活きがいい獲物ッスよ!」


 テンション高そうに、そんなことをのたまった。


 驚くことにピンピンしている。

 さらには次の攻撃は軽やかに回避。ポンと飛び上がり、モンスターが姿を見失ったところに、上からかかと落としを決めてみせる。



 ブ、ブモゥゥゥ!

 怒り狂ったクレイジービッグボアは、やがては動きに精彩さを欠いていく。

 数分かかったものの、最終的に、ミライちゃんは危なげない勝利を収めてみせた。


「パチパチパチ! ミライちゃん、また強くなった!?」

「えへへ、でもレイナ様に比べたらまだまだッス!」

「最初に攻撃を受けたのは?」

「えへへ。なんか攻撃を喰らってみると、スキルが生えてくる可能性が高い気がしたっす! だからとりあえず、未知のモンスター見つけたら試してみてるッスよ!」


(な、なるほど……!)


 先手必勝を常にしている私では、とても思いつかないトレーニング方法である。


「なるほど! ミライちゃん、天才! たしかに攻撃なんて、もらおうと思わないともらわないもんね!」


 私はミライちゃんの頭を、撫でまわす。


"撫でられて気持ちよさそうなミライちゃん!"

"ドヤ顔かわいい!"

"攻撃なんてもらおうと思わないともらわないwww"

"【朗報】新たなトレーニング法、見つかる"



「でも、危なくない? 」

「へ?」

「だって、深層モンスターの攻撃をまともに喰らって無傷ですむわけが……。あれぇ」

「この程度なら余裕ッス!」


 ドヤドヤドヤっと胸を張るミライちゃん。



「打撃耐性特大に、対獣相手の有利スキル。あと、初撃ブースター(HP満タン時に防御400パーセントアップ)で、あ、常時スーパーガード状態になる、亀神の心得も便利ッス!」

「……へ?」


 やだ、どうしよう。

 うちの弟子、強すぎ?


"なになに、どうしたの?(英語)"

"《英検一級はクソゲー》なんかレイナちゃんの弟子も人間やめてた。防御系の激レアスキルが大量に生えてる"

"そんなに人間卒業したやつが現れてたまるか! いい加減にしろ!!"

"《英検一級はクソゲー》ぶわっ(´;ω;`)"



「レイナ様、スキルって忘れられるッスかね? たとえば、これ━━肉厚脂肪ガードナーとか、持ってるだけで太りそうで嫌ッス!」


"悩みだけは乙女ッ!"

"若者の人間離れ"

"これにはレイナちゃんもニッコリ"

"ミライちゃん、ちゃんとダンジョンイーターズだったんやなって"

"↑↑ダンジョンイーターズを非常識集団みたいに呼ぶのやめれww"


「どうしましょう!  なんか気が付いたら、ギルドメンバーが人間やめてたんですが!?」


"おまいう!"

"おまいう!"

"おまいう!"


 ……あれえ?



 気を取り直して閑話休題。

 ミライちゃんが人間をやめてたり、心躍る新種のモンスターを見つけたり、色々なことがあったけど……、

 今日のメインは、癒やし配信なのである!!(強調)


「あ、そろそろ目を開けて下さい!」


"草"

"さっきまで会話しとったやろ!"

"今見たもんは忘れろって圧やぞ!"



 私は、ラクラク・ハコベールに向かって呼びかける。


「おもちくん! 何食べましょう!?」


 どうして忘れていたのだろう。

 本来、真っ先に聞くべき相手なのに。


(栄えあるグルメ案内人!)


 私の呼びかけに答えるように、おもちくんは、すごすごとラクラク・ハコベールから出てきた。


「そう言えば、えのきのこ採れました! 毒泉であげると美味しいんですよね、一緒に食べましょう!」

「エッ……? イヤ、チョット、オナカのチョウシが……」


 ぷるぷる震えるおもちくん。


"滝汗w"

"毒殺(未遂)"

"痛烈なカウンター草"

"まずはブルーマスカットから始めよ?"


 一方、ミライちゃんはマイペースに「本当に美味しそうッスねえ」などとヨダレを垂らす。



(本当に試したいのは、フェニックス使ったお料理だけど……、さすがにまだ無理!)

(もっと戦力拡大を図りたいところではあるけれど、今は目の前の料理配信を成功させないと!)


 その後も私は、おもちくんに珍味を聞こうと試みる。

 しかしおもちくんは、ぷるぷると震えるだけで、なかなか答えてくれる様子がない。



(そんなにお腹痛いのかな……?)


 結局、私はあり合わせのもので済ませることにする。



(えのきのこの毒泉揚げは、試してみたかったのでやるとして……!)


「レッツ、クッキング!」


 久々の料理配信!


"レイナちゃん、鍋爆破しちゃ駄目だからね?"

"レイナちゃん、奇声あげちゃ駄目だからね?"

"レイナちゃん、おもちくんうっかり食べたら駄目だからね?"


「…………レッツ、クッキング!!!」


 悪ノリしたコメント欄に、ちょっぴり出鼻をくじかれつつ。

 私は、意気揚々と料理配信に取りかかるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 奴はデュラハンの中でも、耐性の無い最弱(レア)
[良い点] 英検ニキノルマ達成
[一言] もはや深層攻略には魔物食が必須ですね(ニヤリ
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