収益化記念配信(2)
新宿ダンジョン深層――第1地区。
そこは下層までの雰囲気とは、ガラッと異なっている。
高純度のマナが漂っており、あたりには結晶化したマナが淡く発光していた。
ごつごつした岩肌もマナを帯びて、七色に輝いている。
ダンジョン内のマナの濃さは、そのままモンスターの凶悪度合いにも比例すると言われていた。
その地区のモンスターが、いかに凶悪であるかを示すバロメータなのだ。
きらきらとダンジョン内を照らすマナは、一見すれば美しく幻想的。
しかしモンスターは互いに覇を争い、侵入者を喰らいつくそうと牙を剥く。
1つのミスが死を招く――それが新宿ダンジョン深層という世界である。
そんな選ばれた者しか入れない道を歩きながら、1人の少女が配信をしていた。
10万人を超える人々に見守られながら、少女は――
「はぁ――あの辺の魔力溜まり、綿あめみたいで美味しそうですね」
そう、うっとりした声を漏らした。
"えぇ……(困惑)"
"言われてみれば綿あめみたいに見えてきた・・・"
"でも絶対食べても美味しくないゾ"
"人間には濃すぎて毒みたいなもん"
私――彩音レイナは、流れるコメントを見ながら、
「毒なら無力化できますよ?」
"違う、そうじゃない!"
"平常運転すぎるw"
そんなことをリスナーさんと話していると、前方からモンスターが現れた。
ずるずると地を這うジャイアントバジリスク3体。
下層でフロアボスにもなっていたモンスターだ。
ちなみに鱗を剥いで、丸焼きにすると美味しい。
オーラを拳に纏わせ、私は迷わずバジリスクの群れに突っ込んだ。
相手が反応する隙を与えず、拳を叩き込み三連撃。
モンスターの群れは、一瞬にして消滅した。
"ほわっ!?"
"正面突破wwww"
"うそやろ・・・こいつら、下層のフロアボスだったよね?"
"瞬間移動してない!?"
"(つд⊂)ゴシゴシ・・・・(;゜д゜)!?!?"
"¥10000: ぽかーん( ゜Д゜)"
(油断してると私が食べられかねないからね)
(本当は、本当は……、副菜として入手しておきたかったけど――!)
「食べれなくてごめんなさい!」
"まだ食べる気で草"
"レイナちゃんは、ご不満のようです"
"フードロスにも配慮できて偉い!"
私は、そのまま最短ルートを駆け抜ける。
(深層、まだ知らないハーブがいっぱいあるな――)
(あ、あれなんか使えるかも!)
私は、爆裂ハーブと名付けた野草をいくつか摘んでおく。
誘爆しないように、柔らかなオーラを纏わせておく。
この野草、衝撃を与えるとたちまち大爆発を引き起こすのだ。
見慣れぬ弓使いゴブリンが、ぶんぶんと連射してきたときはさすがに恐怖しかなかった。
あの破壊力、うまく使えば調理にも役立つはず。
私は、いくつか材料を調達しつつ、順調に深層の攻略を進めていく。
"深層ソロ配信と聞いて飛んできました!"
"まさかそんなクレイジーなことする奴がいるはずが――本当じゃないですか!?"
"深層すらゴリ押しなのはさすがに草"
"むしろ下層のときよりペース上がってるんだが……(困惑)"
"同接20万人w"
"祭りになってる!"
"¥50000: レイナちゃん、無理はしないで本当に・・・"
「スーパーチャットありがとうございます! へ、20万!?」
見れば同接が、すごい勢いで増えていた。
どうやら食材さんたちが、つぶやいたーでいっぱい宣伝してくれたらしい。
つぶやいたーで、またトレンドにも載っているなんてことをコメントで教わり、
(こ、これはますます気合いを入れて配信しないと!)
私は、そう気合を入れ直す。
入れ直した矢先に……、
"$120: おぉ……これは、アニメの女の子?(英語)"
"$80: かわいい!(英語)"
"$370: 深層にソロで潜ってるだって!? なんってクレイジーなんだ!(英語)"
"動画なのかな?(英語)"
"違う、ライブ配信だよ(英語)"
"そんなバカな――(英語)"
(え、英語だ~~!?)
まさかの海外リスナーの登場にテンパる私。
えっと、えっと、来てくれた以上は楽しんで欲しいし……、
「ハロー? アイ、イート、デュラハン!」
"英語力、壊滅的すぎるww"
"こんにちは! 私、デュラハン、食べます!"
"最高に意味分からない挨拶で草"
「し、仕方ないじゃないですか!? みなさんも、学生のときは英語なんて何に使うんだって思ってましたよね?」
"一理ある"
"まあ、しゃあないw"
"お客さんの中に、英語に自信ニキはいらっしゃいますか?"
"ほな、英検1級取り立てほやほやのわいが適当に翻訳しとくで"
"とりあえずレイナちゃんは探索に集中して!?"
"ほんとに緊張感なさすぎのよw"
結局、英語力0点の私に代わり、英語に自信あるリスナーさんが良い感じに説明してくれることになった。
視聴者さん様様なのである。
その後も、私は順調に深層の攻略を進めていき、
「ついに、メインディッシュとご対面です!」
"言い方w"
"いや草"
"デュラハンくん逃げてw"
私は、ついにボス部屋の前に到着するのだった。
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