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9日目-5




「それでは、次に”日系人類銀河帝国”での現在の状況についてご説明します」


また3Dの映像が切り替わった。

今度は、どうやら”帝国”内の地図のようだ。




「こちらは”日系人類銀河帝国”内の情勢を表現した地図となります。

 ご覧の通り、”帝国”内は大きく4種類の孫氏族による孫政体に分かれています」

「おぉ、何だか4色地図のパズルみたいだな」


俺がそう言うと、またもミレピナがギロっと俺を睨んだ。

そんなしょっちゅう睨まなくても…っていうか、どんな単語がミレピナの逆鱗に触れるような失言なのか、俺にはさっぱり分からねぇんだが。


「先ほど、”帝国”は皇帝を頂点とする立憲君主制民主社会を構築していると申しましたが、実際にはこの4種類の孫政体が”帝国”を支えており、

 また各孫政体は独立性が強く、地方分権が進んでいます」

「そうなのか、今の日本みたいに一極集中という訳でもないんだな」




「ここが”帝国”の首府星があるアンクヴォール星系で、ここだけは”帝国”皇室の直轄領となっています。

 首府星はアンクヴォール星系第四惑星イザミアで、そこには私達”帝国”皇族が住まう皇宮が存在します。

 またイザミアの第一衛星イザギアには”帝国”の中央統政府が置かれています」


ファレアが指差した箇所だけが小さく区切られた島のようになっていた。

彼女がその箇所をちょんと突くと、そこから画像が新たにポップアップする。


「これがイザミアにある皇宮の様子です」

そこには、広大な敷地にある壮麗な宮殿のような建築物が映し出された。

建築物群の周囲には更に広大な森や草原、湖などが広がっていて、いかにも住み心地の良さそうな環境だ。


「皇宮って、つまり皇居とかバッキンガム宮殿みたいなものか」

「はい、そうです。

 今見えているのが中央本殿でして、それ以外にも多くの公共施設や国立公園がこの本殿を取り巻くようにして存在します。

 そしてあの空に浮かんで見えるのが第一衛星イザギアで、天体全面が改造された一つの都市となっており、”帝国”の中央統政府や主要官庁が置かれています」


確かに空をみると、ひときわ大きな月のような星が浮かんでいて、その表面は殆ど都市というか機械で埋め尽くされているように見える。




「って事は…その、ファレアも、ここに住んでるのか?」

「ええ、そうですね…

 実を言うと私は、現在はここに常住しているわけではなくて、別の場所で生活しているのですが」


「え?そうなの?」

「それについては、今から各孫政体の話を含めて説明します」




- - - - - - - - - -




映像が再び”帝国”内の地図に戻った。

その地図をよく見てみると、各孫政体の境界はくっきりしている所もあれば、妙にぼやけていたり重なり合っていたりする所もあるようだ。




「さて、まず一つ目の孫政体ですが、その名を”アラヤシマノクニ”と言います。

 といっても今の発音は、カツヤさんがお使いの21世紀地球日本語に変換した際の言葉でして、実際は各孫政体で呼称の発音や表現に差があります。

 ここでは暫定的にこの発音とさせて下さい」


ファレアが指差す色のエリアが”アラヤシマノクニ”のようだ。どうやら”帝国”内地図の中でも面積が一番大きいように思える。

「お気づきの通り、”アラヤシマノクニ”は保有する領地や全人口に占める割合が孫政体の中で最も大きいのですが、

 彼らは主に宇宙空間や人工次元世界などを居住地としているので、他の孫政体と重なり合う領地も多々存在しています」


確かに、他の領地と重なり合ったり境界がぼやけているのは”アラヤシマノクニ”が一番多いようだ。

「”アラヤシマノクニ”は、数千の共生組織体による連邦体制を敷く孫政体です。

 主に宇宙空間における星間人工生態系運用や天体改造、人工次元世界などの制御といった星間文明基盤管理を行っております。

 また所属する氏族は、このように特徴的で多様な肌色・髪色・瞳色を持ち、そして時空量子場と広域電磁波長を捉えて認識出来るようにする為の人体器官として、先鋭耳朶と感覚子をほぼ全員が備えています。それ故に、孫氏族の中で最も宇宙空間に適応していると言って良いと思います」


「おお、何だかファンタジー系のエルフとかドワーフみたいな姿をしてるんだな…って、あれ!?」

俺は今更ながら、ある事に気付いた。




「カツヤさん、お気づきになられましたか?」

「ああ、って事はファレアはその…”アラヤシマノクニ”の人達の血が入ってるって事なのかい?」


「その通りです、カツヤさん」とファレアがニッコリ笑った。


「えーと、つまり皇室?は、”アラヤシマノクニ”が中心になってるって事?」

「必ずしもそうではありません」


と、ファレアが映像の一部をポップアップさせた。

「こちらは私の母にして、現銀河皇帝:ラ・リァヴール=レルフェンストラス17世陛下のポートレートです」


そこには、豪奢な装束に身を包んだ妙齢の美女が映し出されていた。




「あれ…ファレアと違って、耳が尖ってたりしてないよね」

『…っ貴様!無礼であろう!!』


俺がそう呟くと、ミレピナがまたも俺の事を強く睨んで腰を浮かしかけた。

さすがにファレアが片手を挙げてミレピナの動きを制止させたので、俺に襲い掛かろうとする衝動はグッと抑えたようだが、

それでも俺を睨み続けながらチッと舌打ちした。

行儀悪いのはそっちじゃねーのか…


「コホン…確かにカツヤさんのご指摘の通り、現陛下は”アラヤシマノクニ”の血は強くありません。

 つまり私達皇室は他の孫氏族を含めた全”帝国”人の”血”…遺伝子が入り混じっておりますし、そもそも私達はあまり”血”そのものに重きを置いていないのです。

 重要なのは、如何に知識伝達子…すなわち”叡智”が受け継がれているかという事であり、”血”が繋がっていても叡智が伴わなければ皇室から追放されます」


「なるほど、そういう事なのか」

確かに、歴史上において数多く生まれた帝国や王国も、叡智が継続されていなければその寿命は短いものだったようだ。

まぁその点で言えば民主国家であろうと同じなんだろうけど。




しかし…と俺はその現皇帝のポートレートを見ながら、内心で訝しく思った。

初めて見るはずなんだが、この人の姿を以前にもどこかで見た事があるような…




- - - - - - - - - -




「さて、それでは次ですが…」

とファレアが映像を更新しつつ、再び語り始めた。




それからは、他の孫氏族についての説明となった。


”トヨアシハラクニ”は、君主制の概念を行政や社会組織の中に再導入していて、貴族・衛士・職工といった専門階位が数多く存在しているそうだ。といっても固定的ではなく階位の移動は自由に認められており、どちらかというと職能の専門家集団といった意味合いが強いように思える。

そこに所属する氏族は更に細かく数十の分氏族に分けられ、それぞれがやはりファンタジー小説に出てくる半人半獣の亜人デミヒューマンのような姿(例えば狐や兎や熊や、鳥や魚といった現実の動物、さらに鬼や天狗や龍のような姿の分氏族もいる)をしていて、各分氏族の家系毎に独自の氏族紋章を示す動植鉱物等の意匠を自らの身体に付加しているらしい。

彼らは主に実体宇宙の天体上で暮らし、仕事も天体管理関連が多い。また領地や人口も”アラヤシマノクニ”にほぼ近い規模と言って良いという。


”ミズホクニ”は、星間通商や各種産業振興などの経済活動に携わる氏族の集まりである孫政体で、金融や通貨の概念を再導入して企業体に近い組織を結成しながら活動を行なっている、いわば商人とかの集まりみたいな存在だ。

そこに所属する氏族は、家系より個性を重視していて、先天的な身体・精神特徴附加に加えて後天的にも様々な形態や機能を追加させた姿をしているという。その為、非有機系統ヒューマノイドほどでは無いにしても多種多様な姿であり一生の間に何回も変容エンハンスする事も多いらしい。

保有する領地や人口自体は少なく、上二つの孫政体より1/10ほどしかいない。彼らはその多くが星間交通の要衝に置かれた球殻星系(いわゆるダイソン球)などの超巨大人工天体上で生活しているとの事で、ちょうど地球での都市国家みたいなものらしい。


”ヤマトクニ”は、社会全体が単一の軍事組織体系を構築している孫政体であり、主に”帝国”を守護する任務を担っていて”文明体”全体に関わる防衛も一部担当しているそうだ。またその”ヤマトクニ”軍は、大きくは宙域軍・天体軍・後方軍・直衛軍の四軍に分かれていて、それぞれ実体宇宙世界と人工次元世界を網羅する規模と戦力を備えているとの事だ。

って、”人工次元世界”って何だ?いやまぁこれは後で詳しく聞こう。

そこに所属する氏族は、”帝国”や”文明体”全氏族の中でも最も先祖(地球日本人)の姿に近く、一見して日本社会の中に居てもそれとは分からないほどだが、実は意識を集中させたりすると、瞳の色や髪の色が瞬時に変化(各個人でそれぞれ異なる色合い)する。これは軍事教練において必要な要素として附加されている。経験を積んだり年齢を重ねたりすると、特に意識させなくとも色が身体に定着するようになるとの事らしい。

 保有する領地や人口は、”ミズホクニ”ほどでは無いが少なく、上二つの孫政体に対して1/4程度であるそうだ。また居住地も様々であり、その多くが他の孫政体の領地に付随する軍事基地(ただし星系まるごとの場合が殆ど)のような形で存在するという。




「で、こちらのミレピナはその”ヤマトクニ”出身で、時空探査局に出向する前までは宙域軍に所属していたのです」


ファレアがそう紹介すると、ミレピナがことさらに背中をピンと伸ばして胸を張るようにして言った。

『宙域軍では銀河外縁宇宙艦隊第539任務部隊にて戦艦カイカガルクの航法科分隊長、第372任務部隊にて航宙母艦ニュヒオーフの艦長副官を務めていたのだ!』


「そ、そうなのか…凄いな」

俺はその宙域軍とやらの組織がよく分からないのだが、とりあえず彼女の機嫌をとるべく適当に頷いておく。


しかし、ファレアの話を思い起こしながら改めてミレピナの姿を見ると、確かに”ヤマトクニ”人の特徴をよく表しているように思える。

そう言えば、ファレアも髪の毛の色が一部メッシュみたいになってたけど、彼女も”ヤマトクニ”の遺伝子を一部受け継いでいると言う事だろうか?

だが、俺がその質問をしようかと一瞬悩んでいると、ファレアの話はもう次の内容に移っていた。




「そして、私が時空探査局に勤務する事になった際に、彼女が私を輔弼ほひつする為に、わざわざ時空探査局にまで出向して頂いたのです」

『はい!!ファレア殿下の為なら、たとえ火の中水の中、絶対零度の真空中やプラズマ環境下やメタン生態系の中を掻い潜ってでもお供し仕ります!!』


彼女が一層胸をぐんと張って威張るように叫ぶ。

何なんだよそのメタン生態系ってのは。




- - - - - - - - - -




「さて、今ここで話に出てきた時空探査局について説明します」


ファレアは、今度は組織図のようなものを表示させた。

「時空探査局とは、具体的にはいわゆる異次元空間、つまり天然のn次余剰次元空間のみならず、並行世界パラレルワールドの探査を主に行なっている組織です。

 主に未知の異次元空間について調査分析し、異次元世界の全体像を把握していく組織という事になります。

 組織上は、”ヤマトクニ”直衛軍特殊検索師団から分化した事になっていますが、現在は”帝国”統政府の直接的な隷下に置かれています。

 皇宮とも関係が深く、局内には私以外でも何人かの皇族が勤務しています」




映像がまた切り替わり、今度は木星か土星のようなガス状惑星?が目の前に現れた。その惑星は土星にあるような巨大なリングを持っていた。

そのリングをよく見てみると、表面が碁盤目のような軌条と機械のようなテクスチャーで完全に覆われていて、人工的に造られているようだ。

また、その形状も外縁部がギザギザになっていて、一部がかなり突出したアンテナのようになっている。

極側から見たら、その軌道上を完全に埋め尽くす人工的なリング…宇宙都市なのか?は、恐らく放射状に棘を広げたウニみたいに見えるだろう。

しかしもしその惑星が木星か土星のサイズと同等なら、そのリングはとんでもなく凄まじいサイズだという事になる。


「こちらは黎明京アマルテミシアと言って、”ヤマトクニ”の首府に当たります。

 実体オリジナル仮身体アバターや人工知性体を含めて約1兆人余りが居住しています。

 黎明京アマルテミシアはアッシャール星系第5惑星ホタス=ガンナの衛星軌道上を完全に取り巻いており、その最外縁までの直径は約150万kmに及びます」


「150万km!?…こ、これってスペースコロニーみたいな奴だよな、そんなのが建造出来るのかよ…」

「はい、しかしながら”帝国”内だけでも、先ほど申しました球殻星系のように星系そのものを人工物として再構築した天体などは無数にありますし、

 その中ではこの黎明京アマルテミシアはまだ小さな部類ですね」

「そ、そうなんだ…改めてスゲェな…」


映像はそのリングの外縁部へと寄り、あるポイントへとズームしていく。その外縁部には何やら大小無数の宇宙船らしき物体が離発着しているようだ。


黎明京アマルテミシアは”ヤマトクニ”四軍の本拠でもあり、軍務省や統帥戦略本部や四軍統合司令部の各関連施設群、およびに数千億の軍用艦艇を収容する宇宙軍港が、リング外縁部をぐるっと取り巻いています。

 そういう意味においては、黎明京アマルテミシアは超巨大な宇宙軍基地と言い換えても良いでしょう。

 そして、その軍関連区画の一部に時空探査局本部の施設群が座しています」


ファレアが指差す先には、その超巨大な宇宙都市の一画にある不思議な形の金色をした建物群が見えた。

複雑な有機的形状をしているが、強いて言うなら欧州とかにある前衛的な建築の美術館とかにもありそうな感じだ。

その建物群は、虚空を縦横無尽に張り巡らせたフレーム?に空中で固定されているようになっている。そのフレームは交通システム網を兼ねているようだ。

フレームに建物モジュールが接続されている様子は地球軌道上の国際宇宙ステーションに近いが、当然こちらの方が遥かにスケールが大きい。


「私達は普段、探査任務が無い時にはこちらに詰めて勤務しております。

 なので、私の普段の住居もこの近くにあるのです」

「ああ、なるほど。だから皇宮だっけ?には住んでないって事なんだね」

「そういう事です」と、ファレアはニッコリと笑った。




ここでファレアは一度言葉を切り、俺に目を合わせた。

「さて、先ほど私は”人工次元世界”という言葉を何度か使ったと思いますが、カツヤさんは覚えてらっしゃいますでしょうか?」


「ん?あ、あーそうだ、ちょうどその”人工次元世界”?について質問しようと思ってたんだ」

俺はファレアに応じてウンウンと頷いたが、ミレピナがすぐに疑わしげに睨み付けてきた。いや本当なんだって。


「まず、実体宇宙世界とは、文字通り通常の三次元空間上に存在する宇宙世界の事であり、普通に天体や星雲や銀河系等で構成されています。

 これに対し、人工次元世界とは多元宇宙論をベースにして人工的に生み出された異次元空間の事なのです」




「じ、人工的に生み出された異次元空間だって!?

 異次元空間って人工的に作れるのかよ…それってもしかして、宇宙を生み出すようなものじゃねーのか!?」

またしても俺は驚いた。もはや腰が抜けっぱなしで戻りゃしない。


「はい、そう考えてもらっても良いと思います。ただし、強いて言えばそれはミニ宇宙に近いのです。

 しかしスケール的には実体宇宙に対して非常に小さく、それらは”文明体”の時空設計者達によって自由自在にデザインされコントロール下に置かれています」




組織図を表示していた3D映像は、実体宇宙世界の隣にあるn次余剰次元空間を表現した模式図に切り替わった。

以前に俺が『ヴァラス=シャーマ』号の中でも見た事のある構図だが、異なるのがn次余剰次元空間の中で、まるでアリの巣のように複雑に入り組んでいる。


挿絵(By みてみん)


「うぉっ…すげぇ複雑に入り組んでるな…」


「こちらをご覧になると分かると思いますが、実体宇宙世界と天然のn次余剰次元空間の間に、こうして人工次元世界のネットワークを築き上げています。

 また、人工次元世界の中ではどのような環境にも作り変える事が可能であり、一般的には人工的に整えられた時空構造面…すなわち時空そのものを物質のように加工して壁や地面のように仕立てた材質に人工重力を発生させて、その表面上に例えばスペースコロニーのような形で都市や生態系を構築して、人間が生活出来るようにしています。

 またそれら人工次元世界を異なる実体宇宙や並行宇宙との間に繋ぎ、いわば時空の中継駅のような形にする事も可能です。

 これを実際に行なっているのが通商結節体ゲートワールドで、異次元空間に構築された時空構造面の上に星門ゲートを繋いで他の時空へと連絡させているのです」




今度は、映像が奇妙な洞窟のような空間に切り替わった。


「をおおおお…」

球状に広がる空間の壁には何か黄色や緑や青色のしみのようなものがへばりつき、その上に白いもやのようなものが掛かっている。

しかしよく見ると、その表面はまるで宇宙から見た地球の表面のように見えた。


挿絵(By みてみん)


「こっ、これが通商結節体ゲートワールドってやつか…!?」

「はい」とファレアが応えた。


「この通商結節体ゲートワールドは典型的な人工次元世界の一つです。

 この球体は既存の宇宙空間のどこにも存在しない、いわばここだけで宇宙が完結している世界なのです。

 その表面の向こう側には、文字通り何もありません。空間すら存在せず、まったくの無という事になります」


「つまり…単独で存在する宇宙なのか…」

「ここの球体の直径は1000kmほどあり、その内側の表面に人間が住める環境が整っています。丁度球体の中心から外側に向けて重力が掛かるようになっていて、この表面には湖や森や都市なども存在するのです。

 そして表面のあちこちに、別の宇宙や人工次元世界へと繋がる星門ゲートが備え付けられていて、ここに住む人間や知性体は他の宇宙や世界などから様々な物資や情報をやりとりする通商貿易を行っています」




俺は圧倒されるような映像に、目を瞬かせて溜息を吐きながら呟いた。

「異次元世界って…もう途方も無さすぎるなぁ」


異次元なんて聞くと俺なんかではとてもじゃないが想像もつかない。

幾つものSF映画などでは異次元の映像化を試みていたが、俺の目の前に広がっている本物の異次元というのはそんなチャチなもんじゃなかったわけだ。


「そして、上記のような利用法が普及した結果、実体宇宙世界の天体環境に対する人工次元世界環境の利用比率は大体1:1程度となっておりまして、

 私達が管理している通商結節体は、”日系人類銀河帝国”領内だけでもこれ以外にも少なくとも数十万基あります。

 形状や時空構成も、泡の塊みたいな構造からリング状やチューブ状など、様々な形態が存在するのです」




「さっきスペースコロニーみたいに内部を作り込めるって言ってたけど、そうなるともうそっちをメインにして暮らした方が便利かもね」

俺が半ば冗談めかして言うと、ファレアも同意するようにして頷いた。


「確かに、こうした人工次元世界の方が過ごしやすかったりもします。

 何しろ自由自在に環境を作り込む事が出来るのですから。

 ですが、私達としては自身の起源について敬意を払い、実体宇宙世界を主たる生存世界に据える事にしているのです」


「なるほど、リアルな宇宙があくまでも主体という訳か」




「このようにして、私達は実体宇宙空間を管理下に収めるのみならず、近隣の異次元世界にも進出して管理するようになりました。

 その異次元世界は天然のn次余剰次元空間もあれば人工次元世界もあります。また未知の宇宙文明、あるいは過去に滅んだ文明が作り上げた異次元世界も。

 しかし私達にとって未踏査の領域はまだまだ非常に多く存在していて、その中に他の並行世界も含まれています。

 そうした世界の調査のために、時空探査局があるのです」

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