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行け、悪役令嬢ちゃん! in Narrope  作者: 銀月


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48/50

結.おそらくはきっとこれが大団円

 決闘も何もかも終わって、ロズリーヌはなんだか呆けていた。


 あのヒロイン・ミシェルに勝った。

 ミシェルは何故だかジレットとの結婚が決まったし、王太子が男色に落ちることもなく……そう、これは大団円というものだ。


 それに、ロズリーヌの中にもやもやと渦巻いていた“乙女ゲーム”の記憶も以前ほどはっきりとしたものではなくなっていて――つまりゲームは終わりを迎え、ここから先はめでたしめでたしの後の話なのだ。


「ロズリーヌ」


 あの後、当然のようにロズリーヌは王太子の部屋へと連れて来られた。

 王太子の侍女たちの手により汗を流され疲れた身体をマッサージされ、ゆったりとしたドレスを着せられて、こうして王太子と並んでゆっくりとお茶をいただいて……そこに以前のような戸惑いはなく、素直にそれらを受け入れられる。


 だって、ゲームは終わったのだから。


「シルヴィ様」


 ロズリーヌに名を呼ばれて、王太子の目が喜びにゆるりと蕩ける。


「ようやく、落ち着いたようだな」

「その……シルヴィ様にはご心配をおかけしてしまって……」

「いや、いいんだ。もう、ロズリーヌは落ち着いたのだろう?」

「はい」


 王太子はロズリーヌの手にしたカップを取り上げて、ローテーブルに置いた。そのまま抱き寄せてキスをして、「ロズリーヌ」と呼ぶ。

 甘く甘く呼ばれて、ロズリーヌもついそれに応えてしまう。


「――シルヴィ様」


 熱のこもった吐息を小さく漏らして、王太子の唇が肌に寄せられる。


「シルヴィ様……ここは少し狭い、ですわ」


 こんな、扉を開けたらすぐに見られてしまう場所なんてと、ロズリーヌはほんのりと頬を染める。


「なら、奥へ行こうか」

「まだ、日が出ておりますのに」

「いいじゃないか」


 王太子は笑ってキスをすると、ロズリーヌを抱き上げた。

 ロズリーヌも、口先だけは嫌がってみせるけれど抵抗はしない。こうして王太子に求められることがうれしいのだ。


「ロズリーヌ。婚儀を早めよう」

「でも、シルヴィ様、学園が……」

「やっとお前と心が通じたのだから、もう我慢したくない」


 王太子のキスは深まっていく。

 そう。憂いも消えて、ふたりを阻むものは何もないのだから。


「婚儀を早めて子を成せば、私とロズリーヌも、国も、王家も安泰だ。そう思わないか、ロズリーヌ。

 それに、私はお前と子を成したい」

「シルヴィ様……そう言われて、わたくしが断れるとお思いなのですか?」


 ロズリーヌこそ、王太子と末永く幸せになることを望んでいるのに。

 真っ赤な顔でそう続けるロズリーヌに、王太子は心からの笑みを浮かべる。


「そうか。そうだな、ロズリーヌ……愛している」

「シルヴィ様――」


 抱き締められ、そしてしっかりと抱き締め返して、ロズリーヌも「愛しています」と返した。



 * * *



「そういうわけだから、ジレット。王宮にはお前も付いてきてくれるわね?」

「お嬢様……いえ、もちろんです、妃殿下」


 王太子の精力的な根回しその他により、ロズリーヌの今年いっぱいでの卒業が決まった。国王はともかくとして、ルーヴァン侯爵と次期ルーヴァン侯爵は「少し早すぎるのでは」と渋ったが、王太子の説得と、何よりロズリーヌ自身のお願いに折れた形だ。


 ジレットの婚約も整い、イエール辺境伯家とグレーズ子爵家の面々の顔合わせも済んでいる。

 こちらも、ミシェルの卒業を待って婚儀を執り行う……という方向で、話が進んでいるはずだ。


「いや、あの、モンティリエ嬢……ロズリーヌ王太子妃殿下、ジレットはクレスト家に嫁ぐので、ゆくゆくはイエール辺境伯領に――」

「あら、だってわたくしは、乳母を迎えるなら絶対にジレットがいいと、昔から決めていたのよ」


 ふふ、と笑うロズリーヌに、ジレットも笑顔で頷く。


「お嬢様と殿下のお子の乳母になんて、とても光栄です」

「待ってくれ、そもそも、乳母は同時期に子を産んだ既婚の女性が……」

「だからミシェル・クレスト。お前も早くジレットと結婚して子を作りなさいな。何としてもわたくしとシルヴィ様の子の出産に間に合わせるのよ」

「そんな、無茶な……」


 ミシェルは呆然とする。

 一難去ってまた一難とはこのことか。


「それに、俺は卒業したら領地に戻って、ゆくゆくは爵位を継ぐんですよ。ジレットが乳母にって、つまり王都に留まれということじゃないですか」

「まあ。ならお前が王都に来れば良いじゃないの」


 ほほほと笑うロズリーヌは、どうやら本気らしい。

 助けを求めるようにジレットに目をやれば、うれしそうにロズリーヌを見つめている。

 レイモンはやれやれと首を振るばかり。

 思いを受け取ってくれたはずなのに、ジレットはやはりロズリーヌが一番なのか。ミシェルはがっくりうなだれる。


「――十年です、妃殿下。あと十年はなんとしても父にがんばってもらって、俺は王都で地盤を固めることにします。その間だけはジレットをお貸ししましょう。でも、十年経ったら俺は絶対にジレットを連れて辺境伯領に戻りますからね!」

「ならばせいぜいジレットを説得することね」


 “乙女ゲーム”は終わりを迎え、悪役令嬢もヒロインも幸せを掴んだはず……なのに、ふたりの戦いはまだしばらく続くらしい。


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