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行け、悪役令嬢ちゃん! in Narrope  作者: 銀月


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19/50

5-3.誤解は転がり大きく育つ

「――殿下」


 肩を落としたまま、ミシェルがぽつりと呟くように王太子を呼んだ。

 どこか虚ろな目をした王太子が「なんだ?」と顔をあげる。


「もう、お前に訊くことなど何もないが」

「いえ……モンティリエ嬢の考えを正すにはどうすればよいと思いますか」

「わからん。ロズリーヌは昔から相当な頑固者ではあった」

「俺、モンティリエ嬢になんとか取り入って、ジレット嬢に交際を申し込みたいんですよ。どうにかならないでしょうか」


 ふたりはしばし顔を見合わせると、また揃って盛大に溜息を吐く。


「とにかく、根気よく正していくしかないな――ディオン」

「はい、殿下」

「ロズリーヌに何か妙な考えを吹き込んだ者がいるのか、調べてみてくれ」

「はい、わかりました」


 後ろに控えていたディオンが一歩前に出て、会釈をした。


「では、ミシェル・クレスト。私たちは手を結ぶとしよう」


 王太子は手を差し出した。

 ほっとしたように笑うと、ミシェルもその手を取ってしっかりと握る。


「どうなることかと思いました。父には、王都の者たちと顔つなぎをしてこいと出されたのに、まさか殿下とこんなことになってしまって」

「まあ、たしかにな」


 ぐっと握り返して、王太子も少し遠い目をする。


 学園で学ぶのは、何も勉学だけではない。

 将来同年代となるはずの貴族たち……上級貴族ばかりでなく、下級貴族までを把握し、付き合い方を知ることだって学びのひとつなのだ。

 ついでに言えば、婚約者であるロズリーヌとだって、今頃もっと距離を縮められているはずだった。


「――そこをおどきっ!」

「あっ、いけません、ロズリーヌ様!」


 扉のすぐ外で、声が上がる。

 まさか? と王太子もミシェルも顔を見合わせ、扉を振り向いた。

 同時に、ガチャリと派手な音を立てて扉が開く。


「殿下っ!」

「ろっ、ロズリーヌ、何故ここが!」


 バァンと扉を開け放ったロズリーヌは、室内の光景に大きく目を見開き、わなわなと震え出した。

 王太子の手とミシェルの手が、固くしっかりと結ばれていた。


「なっ、なっ……斯くなる上は、やはり……っ!」


 ひと足遅かったかと、ロズリーヌの顔に絶望が浮かぶ。

 そして己の拳を握り締め、低く身体を沈めると、ひと息に間を詰め、ミシェル目掛けて飛び掛かるようにして鋭く拳を繰り出した。


「もっ、モンティリ……ぐぅっ!?」

「お嬢様!」


 ようやく追いついたレイモンとジレットが、ぜいぜいと荒く息を吐きながら、真っ青になる。


「ほほほ。お前のことなど、この世界から消して差し上げますわ!」

「モンティリエ、嬢……待ってくれ……」


 鳩尾にきれいに拳が入り、ミシェルは堪らずに身体を折ってしまった。さすがに気絶することはなかったが、それでも回復まで少しかかるだろう。

 ロズリーヌの急所攻撃は、長兄オーギュストの直伝だ。


「ろっ、ロズリーヌ、落ち着け。落ち着くんだ」

「殿下も目をお醒ましになって! こんな、顔だけ美少女になど騙されないてくださいませ!」

「私は別に騙されてない!」


 修羅場は修羅場でも予想もしなかった状況に、王太子も混乱している。

 血の気をなくしたままのレイモンが部屋に飛び込み、王太子に手を出される前にと慌ててロズリーヌを後ろから羽交い締めにする。


「お嬢様、失礼します」

「お離し! 離すのよレイモン!」

「おっ、王太子殿下ならびにクレスト様。この申し開きにつきましては、後日改めて、改めて、その、失礼いたします!」

「お離し! わたくしはミシェル・クレストと刺し違えてでも殿下をお助けするのよ! お離し、レイモン!」


 ロズリーヌを担ぎ上げたレイモンとジレットは並んで一礼すると、たちまち走り去ってしまった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「私は別に騙されてない!」 この場面での、このセリフは ロズリーヌにはどう聞こえたことか? コメ不要です
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