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FREEDOM  作者: ホーリン・ホーク
first season
9/83

9.OK! リッチー! ※

 その次の日、十二月十四日。

 ジャックは漁船FREEDOM号の上に立っていた。

 リッチーはジャックを雇った。

 日給一万ニーゼという仕事は大人でも容易くありつけない。

 それは数日間の船内清掃。

 リッチーはこの町に滞在している間に、ジャックにできる限りのことをしたかった。

 それが〝仕事を与える〟ということだった。



 沖からの冷たい風が吹きつける。

 悶えるように船が揺れる。

 そんな中でもジャックは活き活きとモップをかける。

 椅子に座って新聞を読んでいるリッチーをちらりと見て、ジャックは(たず)ねた。


「……本当に掃除だけでいいんですか?」

 リッチーは小さく頷く。

「お前は几帳面な男だと見た。仕事ができると。掃除は頭を使う立派な仕事だ。全ての基本だな」

「……は、はい!」

「ジャック。このFREEDOM号は喜んでる。お前に磨かれて、とても嬉しそうだ」

「ありがとうございます!」

 実に爽やかなジャックの笑顔。

 リッチーはサムズアップで応えた。


「リッチーさん、あとひとつ、気になることが」

「ん?」

「今日は、ブリウスはどこにいるんですか?」

「ルカと一緒だからな。宿をとって泊まってる。……そうか、すっかり友達になったんだな」

「は、はは」とジャックは照れて笑った。

 リッチーは立ち上がりウンと背伸びをした。

「ブリウスはルカが連れ回してるせいでここ一年学校に通ってない。だから一人でいることが多い。ルカにはなんとかしろと言ってるんだ……あいつも少しは考えてると思うんだが」

 そう言ってリッチーは近づき、ジャックの肩に手を置いた。

「短い間だが、仲良くしてやってくれ。ブリウスと、俺とメンバーと」

「はい! も、もちろん喜んで」


 ジャックはまるで新兵のように直立不動に答える。

「ジャック、肩に力が入り過ぎてる。それじゃ長くもたんぞ。気を楽にもて」

「……わかりました、リッチーさん」

「んー。いや、『OK!』でいいんだ。それで俺のことは『リッチー』でいい。俺はお前をジャックと呼ぶ。対等だ。俺たちは友達だ。いいな?」

「は、はい! わか……じゃなくて」

 ジャックは少し強張った顔で緊張を隠せずにいたが、目はキラキラと輝いていた。

「OK! リッチー!」

「そう。それでいい」と、リッチーはにこりと笑った。そして、

「ジャック。俺もひとつ、気になることが」

「え? ええ……」

「たとえば……せめてクリスマスまでに、パパは戻らないのか?」



 昨夜、リッチーが肩を寄せてもジャックは多くを語らなかった。

 ちょっと長いお留守番ですと答えただけ。

 涙は見せても笑顔で振り払うジャックが健気だった。

 ――その間だけでもせめて俺たちが兄妹二人の寂しさを埋められたら。リッチーはそう思っていた。



挿絵(By みてみん)

◾️ジャックとクリシア

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― 新着の感想 ―
[良い点] 仕事が見つかって良かった! 自由っていいですね! [気になる点] お金ないのに妹のクリシアは学校に行けてるの? [一言] お互い頑張りましょう!
2021/05/09 18:35 退会済み
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