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FREEDOM  作者: ホーリン・ホーク
last season
69/83

69.キャプテン・キーティングの炎 ※

 一七五二年。

 海賊キャプテン・キーティングによって解放された爬虫人類(レプタイルズ)の中には、憎悪に満ちた者もいた。

 カイザはそこにつけ込んだ。


「俺の名はカイザ。俺はそもそも奴隷としてキャプテンに拾われた。奴は俺たちを欺き、また売り飛ばすつもりだ。この頬の痣を見ろ。奴に殴られた痕が一生消えない。奴の口車にのるな。騙されるなよ」

 キーティングに騙されていると嘘をつき、カイザは()()()()()()()()()に近づいた。

「さあお前の食いたい物を持ってこよう。俺には心を開いていい。俺とお前は同志だ。さあ何が要る?」

「……俺が食いたいのは……人間だ」

 デュークは脅し半分に答え、カイザはすくみながらも頷いた。



 〝クロコダイル〟の異名を持つ巨躯デュークはやがてカイザの野心に同調した。

 カイザの野心、計画は先ず、キャプテン・キーティングを消すことだった。



 月が怪しく煌めく夜、二人の計画は成功した。

 キーティングを騙し、好物のリンゴに毒を注入し、殺した。



 雷鳴が轟き、暗雲が立ちこめた。

 デッド・ポエッツ・ソサエティ号の甲板には大きな窯に燃え盛る炎。

 カイザはベルザを呼んだ。

「どうしたカイザ。今キャプテンを捜しているんだが何の用だ?……この窯は」

「ベルザよ。キャプテンは死んだ。これからは俺たちの時代だ」

「……な、何だと? ……何を言ってる、キャプテンが……し」

 カイザは窯を指す。

「もう溶けちまった! ハァーーハッハ!」


 狡猾な魔物の目。

 風が虚しく吹き荒ぶ。

 ベルザは怒りを露わに銃を抜いた。

「カ、カイザァアアアア!!」

 突如、放たれた鞭にベルザは銃を奪われる。

 それはデュークの伸びた腕だった。

「き、貴様……こ、これはどういうことだカイザ! お前は、昔キャプテンに拾われた恩を忘れたのか? 俺たち兄弟は!」


 カイザの合図でデュークはまた腕をしならせベルザの手首を掴んだ。

 ベルザはそのまま船首側の手摺りに縄でくくりつけらける。

 そこには既に捕まったヘイワースの姿も。

「ハッ、知らんな。ベルザよ、お前の答えはわかっていた。俺に従わずば死あるのみ! お前を慕う連中も半分は片付けた」

 カイザは手下に手をかざし、ヘイワースの妹トレイシーを眼前へ。

「兄さん!」

「トレイシー! ……カイザ、貴様!」

「ヘイワースよ。チェストの鍵をよこせ。さもないと……わかるな?」

 手下たちがヘイワースに群がる。

 ヘイワースはデュークを睨んだ。

「デューク、お前はカイザに何を吹き込まれた? お前には憎しみしかないのか?」

「黙れヘイワース。お前はただ堪えろと言った。自制と祈りしか教えなかった。俺は我慢できなかった。俺たち家族を愚弄し、虐殺した人間どもを殺しに行く!」

 カイザが手を叩き、デュークの肩をさすって言う。

「ヘイワースよ。今こそが真の解放の時だ。違うか?」

「ち、違う!」

 迫る手下に胸元の鍵を奪われるヘイワース。



 波が荒れ、雨が激しく降り始めた。

 窯の炎が消えかけても、カイザの目に宿る悪魔は未だ燃え盛っていた。

 ベルザが問う。

「わからない……何故だカイザ。何故お前はキャプテンを」

「恥をかかされた」

「恥……?」

「キーティングは俺を認めなかった。お前ばかり頼りにして。俺も従順に働いたつもりだ。武器も造り調達し作戦も練り日々寄り添っても、挙げ句の果ては平手打ち。ヘヴンズパールのことにしてもお前から聞かされる始末。そう、奴はいつもお前だけに話した。お前だけが認められた」

「そ、そんなことはない。キャプテンはお前を、軍師カイザを認めていた」

「ふっ、わからんよ。寵愛されたお前には。差があった。差を感じたんだよ。……一つ目的を果たしたキーティングはこの先さらに傲り高ぶっただろう。自らを神と称し、背く者は排除した」

「お前は何を見てきた。何を聞いていたんだ。キャプテンが望んでいたものは真の平和だ。エルドランドの安寧を願っていた」

「くくっ、海賊風情が平和だ安寧だと? いつからキーティングは変わった? もっと違ったはずだ。改心した俺に従え? 皆に食料を? ハッ、俺は力を誇示するあいつを信じていた。力で制圧してこその我々海賊であろう。俺はここで千の力を得た。この俺に共鳴した最強の戦闘種族レプタイルズのデューク、以下十数名」

 ベルザはカイザの背後に魔物のオーラを見た。

 並ぶデュークにも同じく蠢いている。

「ベルザ兄さんよ。話はもう済んだ。俺は忙しいんだ。やりたい事が山ほどあるんでな。あばよ」



 ベルザは撃たれた。胸を何発も。

 その時、風が悶えるように唸った。

 激しい雨が叩きつけた。

 波飛沫、船が大きく揺れる。

 突然、カイザたちに襲いかかる巨大な白い物体。それはあの鯨。

 キャプテン・キーティングが心を通わせたあの白鯨だった……。



挿絵(By みてみん)

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