65.ギングス・ファーム ※
そこは〝再興の町〟ブリンギングスの山間にある大農場ギングス・ファーム。
一見古びた農舎の中には最新の防音・防弾の壁で囲まれた五十平米の空間、極秘の会議室が設けてある。
その日の午後四時、エルドランドの三大マフィアのボスが集まり、顔を揃えた。
エスタド・ファミリーのドン・クワトロ、サディスのドン・ジャグア、そして最大勢力であるサンダースのドン・ストーン・サンダース。
優美な黒いスーツに胸の黄色い薔薇は互いの友好と畏敬を意味する。そしてそれぞれの顧問、側近、護衛が脇を固めている。
淡い照明が醸す静謐な空間。
満を持し、〝ボス達のボス〟と崇敬されるドン・サンダースの挨拶で会は執り行われた。
「十年。我々はこのコミッションで互いを尊重し、親交を高め合ってきた。平和的解決を目指し、愚かな殺戮と略奪を避けてきた。しかしここ数年、何やら我がファミリーが脅かされている。私は貴方達を疑わなかった。私は貴方達に恨みも無ければ貴方達も私を恨むはずは無いと。では、誰か。その者たちとどう向き合うべきか。〝友は近くに、敵はもっと近くに置け〟という教えがある。古いやり方には辟易しているが、身を護るためには武器も要る……」
サンダースの肩に顧問のビフ・キューズが寄り、耳元で囁いた。
「……予定通りリガル・ナピスが現れました。ウォルチタウアーを従えて。他には誰も……」
「何? 二人だけか?」
「ええ……」
サンダースの指示で、ビフ・キューズは二人のボディチェックを済ませ、農舎の中に招き入れた。
いよいよ三人のドンの前に姿を見せるリガル・ナピスとウォルチタウアー。
異様な威圧感を漂わせながら、白いスーツと胸に黄色い薔薇、細い縁のサングラスをかけたリガル・ナピスが席へと向かう。
老衰で弱っているという噂は全く覆された。すらりと伸びたリガル・ナピスの背筋に、三人のドンたちは固唾を飲む。
「ミスター、リガル・ナピス。はじめまして。私がストーン・サンダースです」
「光栄ですな。やっと御目にかかれた。この度は我々の商品を」
「まだ。こちらのドン・クワトロそしてドン・ジャグアと話がまとまりませんでな」
「……何ですと?」
リガル・ナピスは眉をひそめ、差し出した手を戻した。
サンダースは先ず二人のドンを紹介して、言った。
「商談の方は直接、貴方に会ってからと。その真意を確かめねば私も応じられない」
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リサイクルショップで長いアッシュブロンドのカツラと眼鏡を拝借したトミー・フェラーリは、どうにかこうにかギングス・ファームの近くにたどり着いた。
トミーにとって、最悪の場所に足を踏み入れることになる。
――サンダースの奴らに気づかれんためには変装しかない。エスタドとサディスの奴らも油断ならん――と、トミーはカツラを被った。
ジャックはまた煽り立てた。
先ほど車内で暴れた時、殴られた勢いでガムテープが剥がれかけていた。
「てめえはサンダース・ファミリーにブッ殺されりゃあいいんだ! 大声で叫んでやるからな」
「クッソ、ジャックてめえはまたいつの間に口を! もうキサマと喋ることはねえ、キツく縛りつけてやる!」
そしてギングス・ファーム。
高い鉄柵の門の前にはガタイのいい男たちが。
トミーは車を降り、男たちにペコリと挨拶した。
「誰だキサマ何の用だ?」との問いにトミーは
「俺はナピス・ファミリーのヴァル・ヴォーンだ。ナピス様とウォルチタウアーにお届け物だ」と凄んだ。




