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FREEDOM  作者: ホーリン・ホーク
fourth season
64/83

64.への字口

 ナピスの使いパシりトミー・フェラーリはセブンイレブンに車を駐め、小銭を手に電話をかけに行く。

 店の入口にある公衆電話から、頼りのアーロン・ウォルチタウアーに。

 呼ぶが刑務所長室にはいない……ならば自動車電話の方に。


「……アーロン、俺だ、トミーだ」

 ウォルチタウアーの声は裏返った。

《おいキサマ! 今どこにいるトミー!》

「ちょ、ちょっと待てよ何だよアーロン、どうしたんだ?」

《どうしたもこうしたもあるか! 俺の金を持ち逃げしやがって! 今どこで何してる!》

「えーー? 何だってんだぁ、俺ぁ」

《ここ、エリアNPCに来ただろうが! 俺の報酬の二億! ……スーツケースに詰め込まれた……このコソドロがあ!》

「ちょっ」と、そこで電話が切れた。


 もう小銭がない。急いで店内のレジへ行き、懐の札束から一万ニーゼを抜き取った。

「おい、両替だババア」

 婆さんの店員はその札をまじまじと見つめ、首を傾げた。


「兄さんこりゃあニセ札だべ。ほれ、お札のお顔をよく見ろやぁ、エルドランド啓蒙思想家ハーヴェスト・サンの口がへの字に歪んどるべ〜」

「はあ? 何を言うか!」

 見ると確かにへの字だ。あらためて札束を懐から出す。

 それはジャックが払ったヘロインの金。

 二枚目もへの字。三枚目もへの字。四枚目も……ぜーんぶへの字だ。


 婆さん店員が()()()()()()()をずり上げ、顔をいっそうしかめて呟く。

「あーんた。いかにも怪しいべ」

「クッソ!」

 トミーはたったと車に戻り、ジャックに札束を叩きつけた。

「こーのガキぁああ! ナメた真似しやがって、全部ニセ札じゃねえかあ!」

 そして殴る蹴る殴る蹴る踏み散らかす。

 それでもジャックは血反吐(ちへど)を垂らしながら薄ら笑いで返した。

「ヘッ! ()るなら殺れよ! 俺は覚悟ができてんだ。ああ怖かねえ。今舌噛んで死んでもいい。どうせブライアンも死んださ。ピンブルもミスして処刑されたかもな。そしてお前も結局ナピスに追われて消されんだ。ハッ!」

「おー、気でも()れたかジャック」

「俺にはソウルズがいる、ソサエティもいる、サンダース・ファミリーも知ってる、追い回すぞお前を! ざまぁーみろコノクソヤロー!」

 トミーは、こいつマジ何者だと顔をしかめながら、

「もう黙れジャック……っと、ちょっと待てよ……そ、そうか! 一つわかったぜ」

 そう顎をさすり急に得意げに笑うトミー。


「ソウルズかぁ……だよな、てめえは盗っ人だよな! さては金も盗んだな? アーロンの金だ、トランクのスーツケースだよ。てめえが盗んだのか!」

「知らねえよ(アッカンベー!)。あの人が言ってたろ? 『俺の』って」

「お前……まさかダグラスをそそのかしたのか」


 どうやらトミーはどこまでもダグラスを信用しているらしい。

 そこはダグラスの人の心を掴む卓越した話術、人柄によるものか。


 そこで遠くからパトカーのサイレンが聞こえてくる。

 トミーはセブンイレブンの店内に目を向けた。

「あっのババア、通報しやがったな! あいつも舌出しやがって、ポテチなんか食ってやがる!」

 トミーは運転席に乗り急発進。一先ずそこを退却した。



 ****



 やがて大型量販店の大駐車場に紛れ、エンジンかけっぱなしの緑の(ボルボアマゾン)を見つけたトミー。

 そしてガムテープで黙らせたジャックとスーツケースをその車に放った。


 ジャックは滲む血を噛みしめながら考えていた。

 ――どうせならリガル・ナピスに会って一矢報いる気概で行ってやる! そう、全部わかった。奴こそが邪悪の根源だ。ブライアンの向こうで操っていたのはリガル・ナピス! ブライアンを蘇らせた、奴なんだ!



 夜になり、トミーは車にあった小銭で公衆電話からウォルチタウアーを呼んだ。

 これまでの事情を説明し、とにかく金は手元にあると言って安心させた。

 知りたかったのはリガル・ナピスの居所だった。

 ウォルチタウアーは受話器を指し突きながらトミーに言った。


《明後日午後四時。ギングス・ファームで三大ファミリーの会合がある。リガル・ナピス様はそこに行く。俺も同行する。だからそこに金を持って来い!》

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