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FREEDOM  作者: ホーリン・ホーク
fourth season
61/83

61.父の敵 ※

 ダグラス・ステイヤーが運転するワゴン車にはジャックとトミー・フェラーリが乗っている。

 あれから三時間後、着いた場所は無法地帯ニューモニィのトミーの寝ぐら。

 睡眠薬で眠り続けるトミーを担いでダグラスは廃墟のような鉄筋のアパートに入ってゆく。


 トミーを椅子に下ろし、縄で胴と手首、両足首もくくりつけた。

 後に続くジャックはそれを見つめている。ダグラスが指差す。

「しかしよく寝るもんだ。生きてんのかこいつ」

 そう言ってダグラスは外へ向かった。

「どこへ?」とジャックが訊ねると、

「ベルザに電話してくる。しっかり監視しててくれ。そいつには後でたっぷり吐いてもらう」と手を振り、ダグラスは出て行った。



 部屋に残されたジャックとトミー・フェラーリ。

 ふと、殺すなら今だと頭をもたげたが、首謀者特定のためだ落ち着けとジャックは深く息を吐いた。


 汗でベタつく顔や首筋、シリコンマスクを外した後の下地クリームを洗い流したく、洗面台を探しに隣りの部屋に入ったその時、銃声が轟いた。

 玄関のドアが破壊され、突然男が一人侵入してきた。

 変局にジャックは動けず、ドアの隙間から恐る恐る覗いた。

 その黒いレザージャケットにアッシュブロンド髪の侵入者は、椅子からひっくり返されさすがに目覚め慌て()()()トミーの鼻っ面にショットガンの銃口をあてがった。

 裏返った声でトミーは叫んだ。

「な、なぁあにしやがんだああ……あ! ブライアン!……ん、ま、待て、ここは……あれ? 俺何してんだここで」

 見下ろす彼は言う。

「その名は捨てたと言ったはずだ。俺はヴァル・ヴォーン。ナピスの斥候。……おいトミー。エリアNPCに行っただろう? あのワゴン車がハイウェイの監視カメラに映っていた」


 その声! ――と、ジャックははっと口を押さえた。

 トミーに凄む話し方、口調はあのテープに録られていた声だと、ジャックは気づいた。

 しかもトミーは確かに奴を『ブライアン』と呼んだ――。


 トミーの頭の中はまだ真っ白だ。

「ちょ、ちょっと待てよ、俺は……」

「ジミー・リックスに逃げられた。ソウルズだ。奴らがエリアNPCを襲撃した。警備員も医師たちも眠らされ、室長も殺された。ウィップスたちも殺された。監視映像も全て消され爆破された」

「ソウルズ……」

「お前もウォルチタウアーから聞いただろう。おそらくソサエティも絡んでる」

「ああ、そう。ヴォーンよ、捜しているあの……」

 震えるトミーは鼻先に向けられた銃口に顔を背けながら訊いた。

「そのソウルズのジャック・パインドってよぉ、あれぁお前が殺したジョージって奴と関係があるのか?」

 ヴォーンはニヤリと答えた。

「そう。その通り。ジョージ・パインドの息子。養子らしいがそのガキはおそらくソサエティとも繋がっている」



 ジャックは確かに聞いた。

 ――奴だ! 間違いない、俺が追い続けた男がそこにいる! チェイン・ギャングスの写真にも映っていたあの男にもどこか似ている! 生きていたんだ――奥歯を噛みしめ、ジャックは銃把を握った。


「……それよりトミー。今はお前のことだ。ワゴン車を運転していたのはお前か? それとも」

「それはあのダグ……」と言いかけたその時、激しく洗面所のドアが開けられた。


 歯を食いしばり、震えながら立つジャック。

 ギロリと、ヴォーンが顔を向ける。トミーは首を傾げ目を丸くして言った。

「あ? ……れ? てめえは……あのジャック・パインドか? なんでそんなとこに!」

 ジャックはポケットに押し込んでいたマスクをトミーの足元に投げつけた。

〝シリコン製のジョン・キートン・マスク〟のふやけた顔が床で上を向く。


 ああ! っと大きく口を開けるトミー。

 拳銃を手に、ジャックは涙目で睨みつけている。

 ほう……と、ヴォーンは薄ら笑いで足を踏み出す。

 ジャックは銃口を向け、声を張り上げた。

「キサマァアアアア! ブライアン・ヒル! よくも、よくも俺のパパを!」

「フッ……ジャック・パインドか」

 その頬に浮かび上がった文様に目を凝らすヴォーン。

「むぅ? まるで爬虫人類(レプタイルズ)のようだな」

「黙れっ! キサマをブッ殺す!!」



挿絵(By みてみん)

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