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FREEDOM  作者: ホーリン・ホーク
third season
44/83

44.捕われるジミー

 イーストリートから離れたヴァル・ヴォーンは先ずナピス研究所へ帰還した。

 目の前を轟々と打ちつける記憶に抗いながら。

 封じたはずの愁える過去。いや、消されたはずの感情の欠片。

 チェンバースアパートの部屋から襲いかかる、暗闇からのしかかる叫喚。

 それは死霊かと、ヴォーンはうなされた。

 しかし魔物の血が再び全身を支配した時、彼はベッドから起き上がった――。



 ****



 十月五日。そこは〝礼拝の街〟スロトレンカムのボクシングジム。

 ジミー・リックスは若手レニーとのスパーリングに精を出していた。

 飛び散る汗。ジャブ、フック……レニーの猛攻、連打がジムに轟く。

 激しいフットワークでマットが軋む中、それは突然訪れた。

 扉を蹴り開け悠然と歩いてくる、現れたのはナピスの斥候。復活したその男。

 生成りのスーツ姿、アッシュブロンドのヴァル・ヴォーン。


 ジミーは静止し、レニーはあがる息を抑えながらその侵入者に目をやった。

 脇でシャドーをしていた新人の荒くれ二人がヴォーンに詰め寄った。

「おい? おっさん、なんだてめえは!」

 ヴォーンはニヤリと笑うと瞬く間に一人の口を手で塞ぎ、そのまま掴んで振り回し、その身ごともう一人に叩きつけた。

 二人は倒れ込み、気を失った。


 戦慄が走る。しかしひるまず飛びかかろうとするレニーをジミーは押さえつけた。

「行くなレニー、奴は怪物だ」

「ええ?!」

「逃げるんだ」


 不敵な笑みを浮かべるヴォーン。

 その跳躍は凄まじく、軽く宙返りをしてリングに降り立った。


「ジミー・リックス。お前を捕らえに来た」

 ジミーは睨みつける。

「とても警察には見えない。あんた、ナピスの人間か?」

「ほぉー。鋭いな。さすがは元世界チャンプ」

「情報は得てた。いつかここにも来ると」

「俺に見覚えはないか? 四年前のクリスマスにイーストリートの路上で」

 しばらく置き、ジミーは思い出した。

「……わかった。警官ウィップスと並んで歩いていた男。あの時の」

「おお! 思い出してくれたか、それは光栄だ。では情報は誰から? ヘイワースからか? それともベルザか」


 ヴォーンはスーツの袖口からジャラリと太い鎖を垂らす。

 犬のように鼻をヒクヒクさせ、テンションが異様に上がってゆく。

「おおう、ジミー。お前はリバ族の戦士。〝蜻蛉(セイレイ)〟の力を宿すと言われるその秘めた力を見てみたい」

 歩み寄るヴォーンに身構えるジミー。

 鎖を振り回しながらヴォーンは戯け混じりに言う。

「ジミー。お前は憧れの存在だ。ナピスはお前のような者の力を欲している」


 突如レニーがヴォーンに襲いかかったが、首を掴まれ壁の姿鏡に投げつけられた。

 レニーは床に崩れ落ち、割れた鏡の破片が体に突き刺さった。

 ヴォーンは人差し指を向け、告げた。

「連れていく!」

 次の瞬間ジミーは首に鎖を巻きつけられ、麻酔銃で肩を撃たれた。





 ジミーが連れ去られた後、瀕死のレニーは床を這い、ジミーの父親代わりであるホプキンス牧師に電話をした。

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