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FREEDOM  作者: ホーリン・ホーク
third season
36/83

36.ある朝の光 ※

 九月二十三日は相棒ブリウスの誕生日。

 紙袋いっぱいに詰め込んだリンゴを抱えたクリシアがアパートに帰ってきた。

 ジャックは窓辺でミルクティーをすすりながら外を眺めていた。


「お帰り」

「ただいまお兄ちゃん。見て! これ……何するかわかる?」

「アップルパイだろ? 明日ブリウスに」

「ピンポーン! 手伝って」



 スルスルとリンゴの皮を剥くジャック……のはずだったがいきなりナイフで指を切ってしまった。


「お兄ちゃん大丈夫?!」

 傷口をくわえるジャック。

「ああ。ちょっと手がしびれててな。……ぶっつけちまって」

「えー! いつぅ? ちゃんと手当てしたの?」

「ああ。なんてこたぁない。俺の回復力すごいから」

「切ったとこ見せて……あー、深いじゃない」と救急箱を取りに行くクリシア。

「いいよ、舐めればすぐ治るって」

「もーう……たしかにそうだけど。なんかこう、野生児ってゆうかさ、小さい頃から超治癒力よね」

 そう言って笑いながらクリシアがその指に絆創膏を貼ってあげる。

「そう。兄ちゃんは超人なのだ」

 二人は顔を見合わせ笑った。


「でもお兄ちゃん。この頃考え事してるね。やっぱり誕生日から……しょんぼりしてる。リッチーさんにキツく言われたの?」

「……いや。リッチーは何も言わなかった。何も……言ってくれなかった」

「明日来てくれるかな、みんな」

「ルカさんは確実だろうけど、どうかな。みんな忙しいから」

「みんなにも食べてほしいのにな」

「……てか、俺も……明日は朝から行かなきゃならないとこがあるんだ。どうしても」

「えー?! なによそれーー!」

「すまん。遠い所なんだ。人に会う。明日には発たないと約束の日の時間に着きそうにないんだ」





 そして次の日、太陽が輝いた。

 ジャックはブーツを履き、ドアを開けた。

 朝の光を纏い、車に乗り込んだ。



 しばらくの間クリシアのことはアパート管理人のマルコとその妻ジェーンに頼む。

「将来を考えるためにしばらく一人で旅をしてみたい」と言うジャックをマルコは見つめ、言った。


「わかってる。お前はずっとジョージのことを想い、部屋を移る気はないとも言った。働いて生計を立ててきた。でも、本当に困った時は遠慮なく俺を頼ってくれ」

 

 イタリアン・レストランPorcorossoのポールは優しく肩を叩き、

「店のことは気にすんな。とにかく無事に帰ってこい」とジャックを温かく見送った。


 ブリウスにはハッピーバースディと祝い、欲しがっていたジーンズをプレゼントして拳を突き合わせた。

「ありがとうジャック」

「ポールさんから聞いた。ルカさんとジミーさんが来てくれるんだってな。よかった」

「うん。……旅先から連絡ちょうだいね。寂しいから」

「ああ、少しの間だ。俺はお前をめっちゃ信頼してる。だから妹を頼むな」





 友人Xマンからの手紙を胸に。

 イーストリートから西へ八百キロ。

 目指すは〝転換の街〟アナザーサイド、カフェレストRamona(ラモーナ)



挿絵(By みてみん)

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