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FREEDOM  作者: ホーリン・ホーク
second season
26/83

26.私も行く!

 立ち並ぶ街灯がセピア色に舗道を照らしている。

 その中をクリシアは重い自転車を押して歩いていた。

 眉をひそめ口はへの字に不機嫌だ。

 ハンカチで額の汗を拭き黒髪をかき上げ、キャミソールの背中をパタつかせた。


 もう午後七時を過ぎてしまった。

 ポールの店まであと少し。

 交差点の歩行者信号の点滅に駆け出すクリシア。

 その時、対向から一台の車が速度を上げて走ってきた。

 信号が黄色から赤へ変わる寸前、車はクリシアの左側植樹の向こうをギュンッと通り過ぎた。


 ――あれ? あの車はとクリシアは振り返る。

 するとその車もブレーキをかけ、十メートルほど先で急停止した。



「ポールさんの車だ……え? どうしたんだろう」

 それは間違いなくポールの愛車、つるんとしたリアヴューの赤いフィアットだった。

 すると「クリシア!」と助手席の窓からジャックがにょきっと顔を出した。

「お兄ちゃん!」クリシアは目を丸くする。

「どうしたの、どこへ行くのよぉ!」

 ジャックは手招きして「お前こそこんな所でチンタラ……遅ぇんだよ! ……ちょっ、こっち来い、早く!」と怒鳴っては囁いて呼びつけた。


 クリシアが自転車を置いて駆け寄り、車内を覗くとそこには――

「ポールさん……あれ? 誰……ってブリウス! 何してんの?」

 運転席のブリウスはたじろぐ目で手を上げた。

「や、やあ、クリシア……遅いから心配してたよ」

「どーしてあなたが運転してるの? これはいったいどういうことよ!」

 ジャックは身をのり出しクリシアの手を掴んだ。

「バカ! デケぇ声だすんじゃねえ、静かにしろ!」

「二人ともどこ行くのよ、信じらんない! 私ケーキ作ってきたのにぃ!」

「みんなもう帰ったよ」

「えーーっ!」

「いいか、よく聞けよ。俺たちは今から仕事に行くんだ。とっても大事な仕事だ、だからお前はおとなしく帰れ。あ、ポールさんのとこでもいい、だが俺たちのことは内緒だぞ。会ったこと話すな、な? 必ず帰ってくるから、いいか? わかったな?」

 険しい表情でジャックが言う。

 クリシアは困惑した。

「自転車がパンクしちゃったの! だから私遅くなったの。もう歩けない、疲れちゃった」

 そう言ってクリシアは鼻をすすった。

「そんなこと言われたってよぉ……お前は帰るしかねえんだ」


 しばしの沈黙。やがて彼女は上目づかいで言った。

「……私も行く。連れてってよ」

「はあ?」

「ねえ! いいでしょ? 仕事だったら、私も手伝うから、ね?」

「バカ言うな!」クリシアは彼氏の方に目を。

「ブリウスいいよね? 私も」

「う、うーーん……」

「こら、冗談じゃねえ! 手伝いなんかいい」

「私だけ仲間はずれ? ずるいわよそんなのォ!」


 ジャックの隣りでブリウスが袖を引っ張った。

「……ねえ、ジャック。クリシアも一緒に。いいんじゃない?」

「ええっ?」

「一緒じゃなきゃ、やっぱ運転しないよ俺。帰る」

「ぎょええー! それマジ? ちょっ」

 ブリウスはドアを開け車を降りようとする。

 クリシアがにんまり兄貴にすり寄った。

「ほら。お兄ちゃん。どう?」

「……」

「じゃ、ブリウス帰ろ。お兄ちゃんおいて」

 ジャックは頭を掻きむしって喚いて降参した。

「だぁーーっ! しゃあないっ、わかった、じゃああ乗れっ!」

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