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FREEDOM  作者: ホーリン・ホーク
first season
18/83

18.連れていって

 リッチーの漁船FREEDOM号の上。

 雪降る中、盗賊ソウルズの四人が宝箱〝海賊キャプテン・キーティングの財宝〟を囲んでいる。


 冷えきった体をタオルで包み、ポットのコーヒーを啜るホウリン。

 彼は目を丸くして語った。

「いやしかし驚いたよ。本当にいたんだ鯨が。それも白鯨。ありゃあモビーディック。きっとあいつのことなんだ」

 リッチーが顔を拭きながら笑う。

「違う違う。エイハブ船長の足はなかったろう?」

「あ、ああ……あったら記念に持ち帰ってた」

「ハハッ。だが確かに、ただのマッコウクジラとは思えんな。あれは神の化身ではなかろうか」

 ルカは顎をさすりながら感心している。

「この箱だけでも大した金になりそうだ」


 ほぼ金属の塊ともいえる真四角の宝箱。

 それは白鯨体内の空間で傷むことなく美しく、厳威にあふれている。


 リッチーが言う。

「これは〝キーティング・チェスト〟とも呼ばれた」

 ルカが返す。

「きっとベルザは、チェストは君にしか開けられないと言ったんだろう? 超一流の鍵師リッチー・ヘイワースにしか」

「ああ。……だがルカ。お前のバカヂカラの方があてになるかもしれん。フフフ」



 これまで世界中ありとあらゆる金庫を破り、全ての錠を解いてきた鍵師リッチーはあらためてその腰ほどの高さのチェストの前に屈み、鍵穴を睨んだ。

 そして一同を見回し、言った。

「解けるかどうか。とにかく約束を果たさなければ。先ずはこれをベルザのもとに運ぶ。まだ気は抜けないぞ」





 FREEDOM号はゆっくりと港を目指す。

 立ち上がったホウリンが目を細めて言った。

「おい。俺たちの車のとこに誰かいるぞ」

「ええ?」とジミーも隣に立つ。

「ん? 子供だ……」舵を取るルカが目を凝らした。

「ブリウス……か?」

 リッチーは船首に寄り、その子の姿を確と認識した。

「……違う。あれは……ジャックだ」



 ハーバーライトに照らされて、船乗り場に立ち尽くしている少年。

 白いハーフコートを着たジャック。

 彼が遠くから四人の方を見ていた。

 眠ってしまったブリウスとクリシアを残し、何も言わずにアパートを飛び出してきたジャック。

 力のこもった白い息が降りしきる雪を解かすほどに。

 遠くからでもリッチーはジャックが泣いているのがわかった。

 ――どうしたっていうんだジャック……前のめりにリッチーは眉をひそめた。



 ジャックは拳を握りしめ、目を赤く腫らして叫んだ。

「行かないで!! 僕も連れてってーーっ!!」

 泣きじゃくりながらジャックは叫んだ。



 ****



 船から降りるリッチー。そしてジャックを抱きしめた。


「だめだ。連れてはいけない。クリシアもいるだろう? ……お前のパパも」

「だって、だって……帰ってこないもん!」

 ジャックの頬に浮かぶ燃えるような悲しみ。

 見つめるリッチーは煩悶し、その首すじをさすった。


「ああ、俺たちも捜す。見つけてみせる。だから泣くんじゃない。俺たちはまた来る。お前に会いに」

「僕も船乗りになる。リッチーさんと、みんなと、一緒にいたい!」

 リッチーは迷ったが、これ以上嘘はつけないと思った。


「ジャック。聞いてくれ。本当のことを言う。俺たちは闇に生きてる。金銭を盗む悪党だ。犯罪者なんだ。そんな危険な俺たちの世界に、お前を引き込むことはできない」

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