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FREEDOM  作者: ホーリン・ホーク
first season
16/83

16.クリスマス・パーティー

 十二月二十四日午後六時。

 ルカとブリウスがチェンバースアパートに着いた。

 少し遅れてリッチーとジミーも。

 階段を上がってゆくと、下からアパート管理人のマルコが呼び止めた。

「こんばんは。リッチーさん。少し話が……」

 リッチーは手を上げ、皆に先に行くよう促した。



 一階の片隅でマルコとリッチーは向き合う。

 子供たちのはしゃぎ声が上から漏れてくる。

 リッチーは微笑み、手にしている紙袋から二つ、取り出した。

「後で伺うつもりだった。メリークリスマス。子供たちに」と、彼はマルコにプレゼントを渡した。

 思いがけないことにマルコはたじろいだ。

「あ……そんな、すまない。ありがとう」

「……で、話とは?」

 マルコの顔が引き締まる。

「ベルザからの送金があった」

「何?」

「初めてのことじゃない。ジャックとクリシアのためにと、手紙も」

「……そうか」

「俺はまたジャックを学校に行かせようと思う。民生委員も黙っちゃいない。ジョージが帰ってくるまで、家で引き取る」

「赤ん坊もいるのに大変だとは思うが、そうしてくれ。頼む」

 深く、リッチーは頭を下げた。

 マルコはプレゼントを抱きしめながら申し訳なく言う。

「早くそうできなくて悪かったと思ってる。あいつが今にも帰ってくるんじゃないかと。そう。まだ諦めたわけじゃないんだ」

「うむ。明日、俺はベルザに会う。その後ジョージ君を捜しに行く」



 ****



 百センチメートルの鉢植えのモミの木が床に慎ましく置かれた。

 テーブルの上にはケーキ、ターキー、ジュースにシャンパン。

 グラスを用意しながらクリシアがきょろきょろと見回す。

「ホウリンさんは?」

 サンタの帽子を被ったリッチーが答える。

「あいつはひと仕事終えてから七時には来る。俺のケーキとっといてくれよなって」



 メンバーから子供たちにプレゼントが手渡された。

 手袋にセーター、マフラー、本にレコード、ミニカー、ぬいぐるみ……。

 そしてジャックがリッチーからもらったのは真鍮の懐中時計。

 裏には翼を広げた鷹と〝FREEDOM〟の文字が彫られている。

 それはヘイワース家に伝わる宝物の一つだと聞き、ジャックは涙目になった。

 リッチーはジャックを抱きしめ、背中を優しく叩いた。

「船の清掃、ありがとう。俺たちは気を許した仲間。親友だ。忘れないぞ」



 食べてひと息ついた頃、ウクレレを爪弾きながらホウリン・サンタがやって来た。

 ルカとジミーの滑稽なパントマイムにブリウスとクリシアは笑い転げた。

 リッチーのマジックは鮮やかで、誰もそのトリックを見破れなかった。



 別れはつらかったが仕方なかった。

 これが最後じゃないとリッチーはジャックに告げ、部屋を後にした。

 ライティングテーブルに飾ってあったジョージとクリスティーンの写真。

 何も言わない子供たちが、リッチーは余計に切なかった。

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