33 元社畜と少年-12
「……持て余しますよ、わたしには」
「店、開けばいいじゃないか」
「何をやれってんですか」
料理ができないわけではないけど、あくまで自分が食べるための料理。あるいは、知人や友人、身の回りの人にふるまう料理。
この国の料理がまずければそれでも良かったかもしれないが現実は真逆。安価で美味しい料理しか並ばないこの国で、わたしの料理にどんな価値があるというのか。
かといって、他にわたしにできそうなこともないし……。雑貨とかを作る能力もないし。
「お前にはあれがあるだろ、鑑定魔法」
鑑定魔法か。いや、まあ、確かにそうだけど……。最近は練度が上がったといえばいいのか、文字以外にも、産地と経過時間が分かるようになった。
産地は言わずもがな、どこから採取や製造がされたものか、というアレで、経過時間とは鑑定したものができてから何時間経ったか、というやつだ。例えば、採取した薬草の名前と、どこの土地に生えて、採られてからどのくらいの時間経っているのか、その三点が分かるようになった。
一番の目的である品質の鑑定ができるようになるのはまだまだ時間がかかりそうなのが悲しいところ。
「鑑定魔法ったって、名前と産地、経過時間しか分かりませんよ」
もっとステータスが見られれば話は別なのだろうけど。品質じゃなくたって、細かい情報とかさ。
そう思ったが、「そんなことはない」とギルド長に否定された。
「名前が分かれば、見た目がよく似た偽物をはじける。産地や経過時間が分かれば、あからさまにおかしな採集依頼品を通過させずに済む。盗品とか、別のところで買ったものとかな」
「あぁ……」
ちょっと納得した。よく似た偽物は論外にしても、採集依頼で発注された薬草や魔物の部位を、冒険者本人が採りに行くのは割とグレーなところ。依頼自体は達成されるし、報酬金も貰って問題ないけれど、ランク昇格のためのポイントにはならない。
わたし自身も、何回か、これ市場で買っちゃ駄目かな……、なんて誘惑に負けそうになったことがあるので、まあ、気持ちは分かる。やったことないけど。
「新人や職員じゃ見分けが難しい奴は後でまとめて鑑定所に申請出して鑑定してもらってんだ。その申請や処理にも時間がかかるし、仮で出した報酬金の扱いとか、万一偽物が納品されてたときの対処とか。かなり面倒くさい」
面倒くさい、というギルド長の言葉に力がこもっている。本当に面倒なのだろう。わたしだって、話を聞いた限りの仕事ではあるが、普通にやりたくない。
「――が、そこに一枚、鑑定書が付いているだけでその面倒な仕事がほとんど必要なくなるってわけだ」
にっこりとギルド長が笑う。
なるほど、つまりは、ギルド下請けの鑑定店を開けってことですかぁ……。




