28 元社畜と少年-7
昇格依頼に向かった少年を見送って数日。わたしは特にこれと言って問題なく過ごせていた。
店で酒が飲めなくなることでストレスになるかと思ったけれど、意外とそんなことはない。
宿の個室に冷蔵庫はないので、開封後も常温で保管できるお酒しか飲めなくなったにはなったが。個室に冷蔵庫があるタイプの宿は、お金がかかるからね。仕方ないね。
というわけで、今日も今日とてわたしは単発アルバイト、もとい、依頼をせっせとこなしている。
「これは廃棄でお願いねぇ」
「はぁい!」
せっせと荷物をまとめていると、声をかけられたので返事を返す。
今日の依頼は引っ越し作業の手伝いである。
討伐依頼や護衛依頼、採集依頼なんかはいかにもファンタジー世界の冒険者! という感じがあるものの、雑務依頼は、本当になんでも屋さん、といった感じの仕事となっている。掃除とか子守みたいな、家事代行みたいなものから、勉強を教えて欲しいとか、店を手伝ってほしいとか、そんなものまで。
いや、これ本当に単発アルバイトだな……。
まあ、こういう依頼の方が安全性が高いので、わたしは受けがちなんだけど。街の外に出て魔物を倒すよりも、街の中でせっせと雑務をこなした方が圧倒的に安全なのだ。
その分、相場の金額の報酬しかもらえないわけだけど。討伐依頼なんかは魔物の危険度や討伐難易度次第で、貰える報酬が青天井、と言っても過言ではないほど。過去には億単位の報酬が貰えた討伐依頼があるとかないとか……。流石にそのクラスのものが頻繁にあるわけではないけど。
「――ちょっと休憩にしましょう」
あらかた荷物のまとめが終わると、今日の雑務任務を依頼した、依頼主であるおばあさんが、まだ片付けていないテーブルの上に、器に入ったぜんざいを置く。
「貴女が頑張ってくれている間に、近くの通りにある屋台で買ってきたのよ。一緒に食べましょう」
「わ、ありがとうございます!」
わたしは言いながら、テーブルにつく。
こちらの世界にもぜんざいってあるんだ、と思いながらわたしはありがたくいただく。まあ、美食の国だもんな……似たような食事にたどり着くことはあるか。豆を甘く煮て、もちやだんごと一緒に食べるわけで、そこまで奇抜なレシピでもないし。
それでも、なんとなく久しぶりに感じる祖国の味に、ほっこりとする。ほんのりと優しい甘みが、空いた小腹に染み渡る……。
いやあ、今日の依頼は当たりだな。荷物の運搬は大変だけど、天気がいいからそこまで苦でもないし、依頼主のおばあさんは優しい。ついでにこんな差し入れまで貰っちゃって……。
ぜんざいを楽しみながらそんなことを考えると、向かいに座るおばあさんが、「――……やっぱり、さみしいわねえ」と暗い顔でため息をついた。




