27 元社畜と少年-6
お酒を……やめる……?
水より酒を飲んでいる、は流石に言い過ぎだけど、白米よりは酒を選んできた自信がある身としては、お酒をやめることはできない。健康診断の前の一週間くらいは我慢できたから、一週間くらいならやぶさかでもないけど……え、昇格依頼ってそんなすぐ終わるもん……? 普通の依頼でも、討伐対象や採集対象のいる生息地が遠かったり、護衛任務の護衛対象の旅程によっては一週間以上かかるのに……?
わたしが少年のお願いに対して、即答できないでいると、「ごめん、待って、やめてほしい、っていうのはちょっと違うかも」と少年が慌てたように言った。よっぽど酷い顔をしてしまっていたらしい。
「あの、お酒を飲むこと自体をやめてほしいんじゃなくて、人前で飲むのをやめてほしくて……。あの、ほら、おねーさん、よくギルド併設の食堂でお酒飲みながらご飯食べてるでしょ? そうじゃなくて、飲むなら人の目がないところで飲んでほしいって、それだけで……」
「……なんだ、びっくりした」
流石に禁酒はね。少年がいくら可愛くお願いしてきたところでね。ちょっと了承はできないかな。
「んー、まあ、完全に禁酒じゃないなら……。ちなみに、その依頼はどのくらいかかるの?」
「……早くて一か月、遅くても三か月はかからないと思う」
一か月……一か月か……。いや、少年の口ぶりからしたら、二か月くらいを見るのが妥当かな?
人前でお酒が飲めない、となるとなかなか面倒だけど、完全に禁止されないわけじゃないなら、まあ……うーん。
……ん? 二か月?
「少年の誕生日って、二か月後くらいじゃなかった?」
わたしがこの世界に迷い込んできて、そろそろ一年が経とうとしている。ということは、少年の誕生日もそのくらいではなかっただろうか。
こちらに来て翌日くらいには冒険者になって。その一か月強後くらいに少年に出会って……そのときに、年齢の話になって、三か月前に十五になった、みたいな会話をした気がする。
正確な日付は聞いてない気がするな、と思ったけれど、誕生日であったことは当たっていたらしく、「覚えててくれたの!?」と少年が目を輝かせていた。
「……しょうがない。この我がままを承諾することを誕生日プレゼントとします」
なんて、冗談半分に言ってみたのだが、思っていた以上に少年は喜んで、「ありがとう、嬉しい!」と満面の笑みを浮かべた。
……それにしても、お酒を控えて欲しいって……何か願掛けとかあるのかな? この国、お酒に弱いくせにお酒にまつわる文化が豊富だから、わたしの知らない何かがあるのかもしれない。
冗談半分、とはいえ、承諾したのは事実。
この日から、わたしの半禁酒生活が始まるのだった。




