25 元社畜と少年-4
「すぐそこなのに、少年の方が危なくない? またギルドに戻るんでしょう?」
多分、食べ足りないけどわたしがいるから一旦離脱するだけだもんね。
この時間に子供を外にうろつかせるのは大人としてちょっとためらいがある。
そう思って言ったのだが……。
「そ、そりゃ戻るけど……、でも、ほら! 僕強いから! 何人来ても大丈夫だし!」
それはそう。本当にそう。
純粋な戦闘力で言ったら少年に敵う人はこの街にいないだろう。人数が多ければ分からないけれど、人数が増えれば増えるほど気配も多くなる。何かに巻き込まれる前に、するっと逃げ出すことも、少年ならできるだろう。
……あんまりムキになって断るのもあれかなあ。
「……分かった。じゃあ、お願いしようかな」
わたしがそう言うと、少年はパッと顔を明るくさせた。
「うん、送ってく!」
「わたし、このお皿だけ片付けるから。そしたら帰ろう」
わたしは料理の皿を下げに来た食堂のウエイトレスさんに事情を話して、料理を返す。わたしの胸元を見れば、嘘でも何でもないことがすぐに分かったと思う。
タオルはいるか、というウエイトレスさんの提案を断って、わたしは少年の元へと戻る。
「はい、お待たせ」
「ううん、待ってない。全然」
……いや、まあ、確かに数分のことではあったけど。そんな力強く言うことか?
ギルドの外に出ると、すっかりと暗くなっていた。星空が綺麗である。
こういう日は、ぼんやりと星を眺めながら、アルコール度数低めなやつをちびちび飲みたくなる。度数高いと、いくらわたしでもすぐ酔っちゃうからね。
……部屋にお酒、残ってたかな……。
「――さん、おねーさんっ。聞いてる?」
「え? 何、ごめん、聞き逃した。もう一回言って」
考え事をしていたからか、少年が話しかけてくれていたことに気が付くのが遅れる。打ち上げパーティーがあったこともあって、ギルド前が賑やかなのも要因だろう。歩いていて、ギルドから離れつつあるとはいえ、普通の音量での会話は、ややしにくい。
「あの……、あのね」
さっきまで話をしていた様子だった少年だが、わたしが彼の顔を見て、続きを催促すると、途端に口ごもる。
それでも、少年は決意を固めたように、「僕、今度、特Aクラスのクラス昇格任務、受けられるようになったんだ」
「――、えっ、凄いじゃん! おめでとう!」
少年の言っていることを理解するのに時間がかかって、一瞬、言葉がでてこなかった。
特Aクラスと言えば、冒険者の最高クラス。その説明を受けたとき、Sじゃないんだ、とちょっと不思議に思ったから、よく覚えている。
特定の冒険者ギルドの専属ともなる特Aクラスは、高難易度の依頼をこなすだけではなく、王族や貴族の依頼も受注するようになり、大体の冒険者はその高みを目標に頑張るのだという。
十五歳でそこまでたどり着けるとは……。わたしは日々の宿と食事代がなんとかなればいいや、と惰性で冒険者を続けているのに。
アッ、ちょっとなんか情けなくなってきた。




