24 元社畜と少年-3
うーん、これはもうダメかもな……。軽く拭いたらどうにかなる、という範囲を超えている気がする。
今日はもう帰ろうかな。打ち上げの開始時間は決まっているけど、終わりの時間はあってないようなもの。ちらほらと帰り始めている人もいるくらいだし、わたしも帰って着替えるとしよう。
多分、最後まで残っていても、後片付けを手伝わされるだけだろうし。片付けを面倒だとは思わないけど、ここまで汚れた状態の服で、最後まで残って片付けまでやっていく、というのはそれはそれで嫌だし……。
「少年、ごめん、皿割れてなかったら貸してくれる?」
「え、あ、うん……」
わたしは少年から皿を受け取る。この肉をごみとして廃棄するとしても、その辺にぽいっと捨てるわけにもいかない。
わたしは胸元に引っ掛かった肉を手で取り、皿に置く。帰る前に、落としてしまったことを伝えて、皿ごと片付けてもらおう。
「あの、おねーさん、ごめん……。僕がちゃんとつかんでれば……」
わたしが淡々と肉を片付けていると、少年がしょんぼりとした表情で言った。
いや、飛んでくる皿をキャッチするだけで十分にすごいと思うんだけど……。
「ううん、すごく助かったよ? ぶつかったら怪我してたかもだし、地面に落ちたら今より掃除が大変だし。このくらいの被害で済んで御の字だよ。ありがとう」
むしろ、落ち込みながら謝罪するべきはこの皿を飛ばした人だと思うんだけど。
しかし、犯人は逃げたのか、それともなかったことにしようとしているのか、名乗り出て謝ろうとはしない。まあ、揉めても面倒なだけだから、この程度の被害なら、わざわざ突き止めて謝罪させるつもりもないんだけど。
「わたしはこれ片付けたら宿に戻るから、少年は普通にご飯食べてきたら?」
わたしがいなくなれば、少年は自由にご飯を食べられると思ったのだが――。
「だ、駄目だよ! 送ってく!」
「ええ? わたしが泊ってる宿、すぐそこだよ?」
わたしがとる宿は大体その街のギルドの近く。理由は簡単、ギルド併設の食堂で酒を飲むので、宿が遠いと部屋まで戻るのが面倒だからである。
だから、歩いて十分もしない、冒険者ギルドから一番近い宿を拠点にしている。
「でも、もう夜だし! 暗いし!」
……少年が心配してくれているところ悪いけど、このくらいの時間でも、全然一人歩きしてるんだよなぁ……。元の世界の間隔が抜けないまま、比較的治安のいい冒険者ギルド周辺で暮らしているので、夜でも普通に一人で出歩く。
冒険者は魔法職もあり、見た目に寄らず強い人がいるので、下手に絡まれるようなこともない。わたし自身は弱いのだが、か弱そうな見た目ながら、高火力の魔法をガンガンぶっ放せるような冒険者がゴロゴロいてくれるおかげで、わたしはその恩恵を受けて自由に一人歩きできるのだ。
あと、単純に冒険者ギルドが近いと、「助けてー!」って叫べば誰かしら冒険者が様子を見に来てくれる。それは正義感からだったり、報酬目当てだったり、まあ、動機は様々だが、結果的に助かることに変わりはない。
だから、少年が送ってくれなくてもいいんだけど……。




