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・・・あれ?・・・これ演技だよね?

今回は演技のお話になります

「そんじゃあ主役も決まったし今度は俺達がどっちをやるか決めるか」

好夜は明らかに怒っている会長の視線から逸れる為に

今度は悪役である自分達の役についての話を始めた

「それなら俺はこの二刀流使いってのをやってみたいぜ!」

すると慶太は台本に描かれている役名の二刀流使いの悪役に目を奪われたようだ

「・・・ちなみに聞くが・・・どうしてそっちにしたのか理由は?」

なんとなくわかってはいるが好夜はどうして二刀流使いがやりたいのか聞くと

「えっ?だってこっちの方がカッコ良さそうじゃん!」

案の上の理由を聞いて好夜はなんだか頭が痛くなってきていた

(・・・これ・・・絶対に後で文句を言うんだろうな・・・)

実際に台本を読み進めていくとどう考えても二刀流使いはチンピラみたいな役で

敵のボスはおろかそれなりに人気の出そうな役でもなく踏み台としてありそうな役だった

そしてこれに後で気づいた慶太が文句を言うのはこれからかなり後の話だった

「まぁいいか・・・って事は俺は残っているこの槍使いをやればいいってわけか・・・

 どっちにしてもアクションなんてやった事ないからうまく出来る自信はないな・・・」

好夜は自分の役を見てあまり扱った事のない長物を使ったアクションが出来る自信はなかった

「大丈夫だろ?これから練習すればお前は本番までにものにするはずだ・・・

 むしろ心配しなくてはいけないのはセリフの方じゃないのか?」

しかし会長からしてみれば運動の出来る好夜が心配するのは

アクションの方ではなく演技の方ではないのかと思っていたが

「それなら大丈夫です!よくデパートの屋上とかでやってるショーのバイトしてるんで!」

どうやら好夜はヒーローショーなどのバイトの経験から演技に関しては問題ないと話していた

「・・・何故それで俺に主役を譲るんだ・・・」

会長はそれを聞いてならばどうして完全に素人な自分に主役を任せるのだと思うのだった

「そんな事言ってないで三人とも早く準備しなさいよ!

 もうこれから練習始めないと本番までに間に合わないかもしれないのよ?」



「そうでしたね・・・まずは何から始めればいいですか?」

香野の言う通り素人がやるにはあまり時間は残されてはおらず

三人は急いで練習を始めようと足立に指示を仰ぐ

「そうですね・・・アクションに関しては他の運動部の方が来てからになるので

 まずは三人の演技の方から見ていきましょうか?」

そう言って足立は台本を捲っていきどのセリフからやろうかと考えていた

今回やる演劇は遙か東方の国より来た一人の男がとある貴族の少女を救うというお話だった

その少女は国王の許嫁として勝手に嫁に行かされようとしていたのだが

本人はこんな狭い国から抜け出してもっと大きな世界を見たいと思い

その夜にお城から抜け出したのだが追っ手に捕まってしまい

そこを主人公である会長が助け出すというものになっていた

そして最後はその王が雇った二人の傭兵である好夜と慶太を倒して

二人で船に乗り外の世界へと旅立っていくというものになっていた

「・・・なるほど・・・これはどちからかというと

 ヒロインの方がメインになってくるお話なんですね?」

好夜は台本を見ながら具体的な話の流れを聞いてこれはヒーロー側のお話ではなく

ヒロイン側をメインにして描かれているのだと思っていた

「そうですね・・・なので今回、演技を始めてやる三人にはかなり気が楽なのではないかと」

確かに足立の言う通りこれほどまでにヒロインが活躍する演劇ならば

始めて演技をやる三人はかなり安心して出来るのは間違いないだろう

「それじゃあまずは主人公がこの国に来てお姫様を助けるシーンからいきますね?」

どうやら最初にやるのは会長からで本人は台本を見てセリフを確認していた

「・・・女一人を追いかけるのに男がこれだけ寄ってたかってくるとは・・・

 どうやらこの国の男はかなり野蛮みたいだな・・・」

そう言いながら会長は立ち上がって掛け合いをする好夜の前に立つ

「おい!なんのつもりか知らねぇが・・・痛い目に遭いたくなかったらそこを退きな!」



「暴力で俺を倒すつもりなら・・・それ相応の覚悟を持ってくるがいい・・・!」

ここでこのワンシーンは終わりアクションシーンに移るというわけだ

「めちゃくちゃいいじゃないですか?!本当に素人ですか?!!」

そのワンシーンを見ていた慶太は会長に尊敬の視線を送っていた

「まぁ多少は壇上の上で演じなければならない事があるからな・・・

 しかし・・・如月の演技もすごいな・・・本当に悪役みたいだったぞ?」

しかし会長の方は掛け合いをするだけだった好夜の方がすごいと思っていた

たった1行のセリフでしかなかったが本当に悪役を目の前にしているような感覚だったそうだ

「だから演技に関しては別に心配してないって言ったじゃないですか・・・

 次は俺と慶太の本役の練習ですかね?掛け合いをお願いしていいですか?」

そう言って好夜は自分と慶太の相手として会長にやってほしいとお願いし自分達の練習に入った

「まずは俺か・・・お前ら・・・なんとしてもあの娘を連れてこい・・・!

 その為に高い金を払ってやっているのだからな・・・!!」

会長は悪役である王様のセリフを話すとその次にセリフを言うのは慶太だったがのだが

「わかっていますよ・・・そのお役目はこの僕「ストップ」に?」

慶太がセリフを言っている最中に好夜がなぜかそれを止めてしまった

しかしそれを聞いていた他の人達も好夜を責めるような事はなかった

「・・・慶太・・・お前・・・自分が悪役だって事、分かってる?」

何故ならば明らかに慶太の言い方には違和感があったからだ

今回の彼らは悪役なのでもっと怖い感じか悪い感じを出さなくてはいけないのだが

先ほどの慶太のセリフは完全にヒーローがやりそうな爽やかな感じだった

「しょうがねぇだろ!いきなり演じろって言われても悪役がどんな感じなのか分かんねぇんだよ!」

どうやら慶太は自分では悪役を演じているつもりだったようなのだが

どうしても緊張してしまい胡散臭い爽やかな感じになってしまったみたいだ

「・・・こりゃあ俺らよりも慶太の方が練習が必要なみたいですね・・・」

それを聞いて好夜は自分達よりも慶太の練習を重点的にした方がいいと思うのだった



「悪い!少し人を集めるのに時間掛かったって・・・どうしたんだ?」

しばらく練習をしているとエキストラの運動部を連れてきたサッカー部の部長がやってきたのだが

彼は何故か口から煙を吐いて真っ白に燃え尽きている慶太の姿に驚いていた

「さっきまで集中的に練習していたんで・・・

 それよりも本当に必要な人数を集めてきてくれたんですね!ありがとうございます!」

実は好夜は慶太をスカウトに行った時に部長にエキストラの参加についても頼んでいたのだ

そしてようやく必要な人数が揃ったのでここへ連れてきてくれたようだ

「みんなも学祭で目玉になっている演劇がなくなるのはさすがに寂しいって事でな

 協力できる事なら何でも協力してくれるって話だ」

どうやらエキストラに来てくれた運動部の人達も演劇が中止されてしまうのは心苦しかったようで

自分達が参加して続けられるのならば快く協力してくれるそうだ

「演劇部の足立です・・・本日はエキストラとして

 参加してくれて本当にありがとうございます・・・!

 早速ではありますがこれからアクションシーンの指導をしていきますので

 今日はよろしくお願いします!」

そこへ足立がやってきて早速、三人を含めたみんなにアクションの指導を始める

さすがは運動部というべきなのかみんなすぐに動きを覚えてそれぞれの練習を始めていた

特に凄かったのはやはり会長でまるで本当に敵が目の前にいるかのような殺陣を披露していた

((・・・俺達・・・本当に大丈夫だよな?))

そしてその凄まじいまでの殺陣を見てしまった

好夜と慶太は不安に思ってしまうのは無理もない事だろう

こうして時間は進んでいき最後は通しでアクションの確認をする事になった

「それじゃあよ〜い・・・アクション!」

足立の掛け声から始まったアクションシーンは最初に悪役が襲いかかる場所からだった

それを華麗に躱し会長は腰に下げている棒を抜いて悪役を切り捨てる

そこから次々に襲い掛かってくる敵を切り捨てていき最後の一人を切って棒を腰に戻す



「・・・なかなかやるみたいだな・・・この国でもそうはいない使い手だ・・・」

そこへ幹部である好夜と慶太が現れ会長と相対する

「へっ!だが所詮は異国の人間・・・この国じゃ俺に強い奴なんていねぇんだよ!!」

そう言って慶太は会長に切り掛かっていくと会長も見事にその一撃を受け止める

慶太は必死に二本の剣を振るって会長を攻撃するがそれは全て受け流されていた

(・・・てかあいつ・・・演技なのを忘れて本気でやってないか?)

もはや慶太は演技という事が完全に頭から抜け落ちてしまい会長に本気で攻撃を仕掛けていた

しかしそれでも楽々と攻撃を受け流しているのだからさすがは会長と言えるだろう

そして最後は攻撃してきた体の重心移動を利用してカウンターを当てて慶太を気絶させた

(・・・あれ完全にやられたフリじゃないと思うんだけど・・・それでも続けるの?)

好夜は一人本当に気絶してしまった以上、中止ではないのかと思って足立を見てみると

なにやら目を輝かせて続行せざるおえないような状況だった

(しょうがない・・・続けるか・・・)

好夜は仕方ないと思いながら持っている長い棒を構える

「お前に恨みはないが・・・俺達は傭兵なんでな・・・金の為に・・・死んでくれ・・・!」

そう言って好夜がするどい突きを放つと会長はそれを受け止めて槍を上に弾き

その隙に一気に懐に入ろうとしたが咄嗟に好夜が体を回転させて槍を振り回しそれを阻止した

その後も二人は一進一退の攻防を繰り広げていたのだがそれを見ていた人達が全員思っていた



((((・・・あれ・・・これ・・・本当に演技だよね?))))

完全にやりすぎてしまう二人なのだった

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