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意外と夢中になってしまう日曜大工

今日はあんまりヒロインとかは出てこない日常回です

それはとある日の事、生徒会にとある依頼がやってきていた

「・・・まさか学校に番犬がいるとは思ってなかった・・・」

その依頼を受けて好夜と会長が来ていたのはなんと犬小屋の前だった

実はこの学校には少し前に校長が拾ってきた捨て犬を番犬として飼っていたのだ

その犬はなかなかに賢く育てられておりまさに番犬にふさわしい働きをしていた

そんな犬に関して好夜はどんな依頼をしてきたのだと思っていると

「依頼の内容はこの古くて小さくなってしまった犬小屋の改築だ」

まさかの依頼内容に好夜はもはや頭が痛くなってしまった

「・・・普通こういうのってペットショップとかで買うのがいいんじゃないですか?」

確かに好夜の言う通り素人が作るよりもお店の正規品を買う方が安全性も確かだろう

しかしそれをできない原因がちゃんとあるからこそ作るという話になったのだ

「確かに好夜のいう通り小屋を新調しようと買う事になっていたのだが

 近くのペットショップにはそこまで大きな小屋がなくてな・・・

 それで仕方なく自分達で作る事になったという訳だ・・・」

どうやらペットショップには大型犬用の小屋は売っていないらしく

それを作ってくれるお店もないという事で結局、自分達で作る事になったらしい

「いや・・・それなら一緒に先生とかもやるのが基本でしょう・・・

 なんで俺達、生徒会の面子だけでやる事になってるんですか・・・」

しかし好夜はそれならばどうして先生達も手伝ってはくれないのだと苦言を言う

「その予定だったんだが・・・先ほど連絡が来てな・・・

 ギックリ腰になってしまい来れなくなったそうだ・・・」

どうやら本当は図工などを担当している先生が手伝ってくれるはずだったのだが

昨日の夜にギックリ腰になってしまい現在入院中との事

「さすがにそれでは申し訳ないからと代わりの人に連絡してくれたらしく

 もうそろそろ来てもおかしくはないんだが・・・」

会長が聞いた話ではどうやら代わりの人をすでに呼んでいたようでその人を待っていた



「すまない!待たせてしまったな!」

二人が待っているとそこへ姿を現したのは体育を担当している先生と晃平だった

「いや・・・先生が来るのはまぁ良いとして・・・なんで晃平も一緒にいるんだ?」

最初に聞いていたのは先生だけの話だったのでどうして晃平までも一緒にいるのだと思っていると

「どうしても何も・・・この人は野球部とサッカー部の顧問でもあるからな・・・

 それで手伝いとして俺も駆り出されたって訳だ・・・」

どうやら晃平も無理やり連れてこられたようで何をするのかまでは聞いていなかったようだ

なので好夜は犬小屋を改築するのだと説明してあげるのだった

「なるほどな・・・確かにその犬にはもうこの小屋では小さすぎるな・・・」

晃平も犬の大きさを見て犬小屋の改築には納得したような表情だった

「てか・・・何で一人だけなんですか?もっと連れてきてくださいよ・・・」

好夜は運動部の顧問をしているのならばもっと人手を連れてきてほしかったと告げる

「いやまぁ・・・晃平以外の部員はほとんどが補習を受けていてな・・・

 残念ながら連れてくる事が出来なかったんだ・・・」

まさかの理由に好夜はもう何を言えばいいのか分からなくなってしまう

「基本的に野球部とサッカー部は赤点ばかり取っている部員が多いからな・・・

 毎度の事ながら先生方には迷惑を掛けていると思っているよ・・・」

どうやら会長のいる頃からすでにその二つの部活は勉強面においてはいつも劣っていたらしく

その元凶であるのは間違いなくあの二人ではないのだろうかと思っていた

「・・・そういえば・・・先生は犬小屋とか作った事あるんですか?」

好夜は話を逸らそうと思い先生に小屋を作った事があるのかと尋ねる

「うちにもこれくらいの犬がいるからね・・・一応は作った事があるよ・・・失敗したけど・・・」

どうやら先生も同じように大型犬を飼っているらしくその小屋を失敗はしたが作った事があるらしい

(まぁ今回は晃平も一緒にいるし・・・大丈夫だよな?・・・多分・・・)

さすがの好夜もこういった日曜大工はした事がないのでちゃんとしたものを作れる自信はなかった

残された希望はこういった事を日夜見てきた晃平だけである



「とりあえず最初は設計図から考えるとするか・・・」

晃平はまず犬の大きさを考慮に入れて犬小屋の設計を始める

この出来次第でおそらくは犬小屋の強度が決まると言っていいだろう

だからこそ慎重に決めなくてはいけないのだが問題があった

「・・・先に聞くが・・・ここにある材料だけで作るのか?」

そう言って晃平が見ていたのは明らかに授業の残り物として置かれていた木材だった

正直、碌に使えるような素材は残っておらずまともな犬小屋が作れるのか不安だった

「まぁ・・・考えるだけ考えてみるか・・・」

晃平はあり合わせの素材を確認しそこからとりあえず作れる可能性のある設計図を書き上げていく

こうして出来上がった設計図を他の三人は確認するのだが

「・・・これ・・・本当に出来るの?」

その設計図を見てまず最初に好夜が感じたものがまさにそれだった

設計図に書かれていた犬小屋は正規品には劣るがかなり立派なもので

素人の自分達がとても作れるようなものとはとても思えなかった

「さすがにこれをちゃんと作れとは言わん・・・あくまで設計図だからな・・・」

晃平もさすがにこれだけのものを作れるとは思っておらずあくまで目安としてのものだと告げる

「それならいいんだけどさ・・・それで?まずは何から始めればいい?」

好夜はまず最初にするべき事について尋ねる

「まずは余っている木材をここに書かれている長さに切ってくれ

 それが終わったら分かりやすい場所に番号を書いていく」

そう言われて好夜と会長は長い板を切ってそれを晃平に渡していた

晃平と先生の方は切られた板の幅を合わせて切ったらその板に番号を振っていた

そして一通りの作業が終わりようやく組み立てへと入っていくのだが

「・・・まさか・・・これで組み立てろなんて言わないよな?」

そう言っている好夜の手に握られていたのはまさかのかなづちと釘

どうやらこの犬小屋は釘で作られる事になるようだ



「しょうがないだろ?まさかネジがないとは思わなかったんだからな・・・」

晃平もここはちゃんとネジを使うつもりだったようなのだが

最近の授業でネジを使い果たしてしまったようで残っていなかったのだ

それで仕方なく出してきたのがこの釘だったというわけだ

「正直これでうまくいく自信は俺にはないぞ・・・」

かなづちを使っての工作など好夜はこれまでほとんどして来なかった

それなのにこれで大事な犬小屋を作らなくてはいけないとは思っていなかった

「最初も言ったがあの設計図通りに作れとは言わん・・・出来るだけ似せるつもりで頑張れ」

そうは言われても好夜の頭の中にはもしも失敗してしまったらという考えが浮かんでしまう

それこそ晃平が言うような小さな失敗ならばまだいい方だろう

しかし取り返しもつかない失敗をしてしまったら先ほどまでの苦労が無駄になってしまう

それだけは絶対に避けなければいけないというプレッシャーが容赦なく好夜を襲っていた

とにかく失敗しないようにと頑張って釘を打っていた時だった

「痛ぁぁぁぁぁ!!」

かなづちを使うとあるあるの指を打ってしまった好夜

あまりの痛さに思わず声を出すのを忘れて転がり回る

「大丈夫か?とりあえず保健室に行って治療してもらってこい」

晃平の言う通り好夜は大人しく指を押さえて保健室へと向かった

「マジで痛ぇ・・・まぁ無駄にならなかっただけマシか・・・」

好夜は失敗はしたが材料を無駄にしなかっただけ良かったと思っていた

そして保健室に着くとそこには何故か命の姿があった

「こっ好夜くん?!どっどうしてここに・・・?」

命も急に現れた命の姿を見てとても驚いていた

「実はさっきまで犬小屋を作ってたんだけどかなづちで指打っちゃってさ・・・」

それを聞いて命は顔を青くして今まで持っていた包帯などを落としてしまう

「いっ急いで治療しないと!すっすぐにそこに座ってください・・・!」



「あの〜・・・命さん?さすがにこれはやり過ぎではないですかね?」

そう言って好夜が見せたのはグルグルに包帯が巻かれている指だった

「でっでも罅が入っている可能性がありますしぜっ絶対に安静にしないと・・・!」

確かに命の言っている事も正しいと言える

しかしそれはあくまで自分の指がまだ痛かったらだ

もはや痛みは引いてきたし腫れてもいなかった

それなのに罅が入っているなどありえないだろう

・・・なのだが・・・

(・・・さすがにこんな目をして言われたら断れないよな・・・)

命の純粋に心配している目を見てしまっては文句を言うわけにはいかなかった

仕方ないのでそのままその指のまま晃平の元へと帰っていくとそこに待っていたのは・・・

「・・・なんか・・・別のもんできてないか?」

なんと設計図以上に立派な犬小屋ができていた

「いや・・・材料が余っていたからな・・・もっと凝れるんじゃないかと思って

 色々と作っていたらいうの間にか・・・な・・・」

晃平はもはや好夜と目すら合わせようとしていなかった

他の二人も同じように自分のやってしまった事に目を逸らしていた

(・・・まぁ・・・できたから別にいいか・・・)

こうして・・・彼らの日曜大工は・・・幕を閉じたのだった・・・

日曜大工・・・こだわると意外と止まりませんよね?

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