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至らぬ戦い

今回は前半が慶太で後半に好夜のお話になります

決勝戦当日を迎えたサッカー部

やはりみんなそれぞれの思いがあるせいなのか緊張が肌で感じ取れた

しかしそれ以上にみんなの目には闘志が漲っていた

どうやらすでにみんなは覚悟を決めて今日を迎えたようだ

そして慶太もまた・・・決して揺れない覚悟を決めてこの場に来ていた

「選手の皆さん!入場してください!」

そこへ係りの人が来て選手のみんなはフィールドへと入場していく

対戦する相手は全国大会に出場しているほどの強者

おそらく今の時点では誰もが慶太達が負けると思っているだろう

だがそれは試合が始まってからでないと結果までは分からない

選手は挨拶を交わしてそのまま自身の持ち場へと向かう

そして中央にボールが置かれていよいよ試合開始のホイッスルが鳴った

最初は相手のボールであり早速、向こうの司令塔へとボールが渡された

相手の選手はボールも持って凄まじいスピードでフィールドを駆け上がっていく

「そんなに前に行かれちゃ困るんだよ!」

すると当初の予定通りに慶太がその選手のマークへと入る

「新人が相手か・・・些か面白くはないが・・・サッカーでは手を抜けないのでな!」

相手の選手は慶太の虚をついて一瞬だけマークを外しそのまま味方にパスを出す

パスをもらった選手はダイレクトでそのパスをシュートした

しかし安定していなかったのかボールはバーに弾かれて上に逸れてしまった

「さすがに入らなかったか・・・まぁ始まったばっかりだしゆっくり行こうか・・・」

シュートを外してしまったにも関わらず向こうは余裕たっぷりといった表情をしていた

逆にこちらはどうすれば相手を止められるのか先ほどのプレーを見て考えを巡らせていく

(やっぱりスピードについていけてもテクニックで負けちまう・・・!

 だったらせめて前に行かせないように邪魔だけでもしないと・・・!)

慶太は一対一の勝負で勝てないのならば足止めだけでもしようと考え次のプレーに移った



「・・・やはり慶太達の方が押されているな・・・」

それを観客席の方で見ていたのは晃平と明希音だった

晃平は前段階でも情報があったからか予想通りの展開だと思っていた

「そうですね・・・点こそ入ってはいませんが・・・素人でも分かるほど追い詰められています・・・」

サッカーをほぼほぼ知らない明希音ですら慶太達がどれだけ追い詰められているのか理解できた

ボールを持てたとしても必ずゴール手前で奪われては反撃を受け

それを必死で慶太が止めようとしているがやはり全国区の高校なだけあって

司令塔が抑えられたとしても十分に補えるプレーをしていた

「このまま点を取られないようにするのは出来ると思うが・・・

 それを続けてしまうとゴールキーパーとディフェンダーが先に倒れてしまうぞ・・・」

選手層の薄いサッカー部に今の二、三年生の代わりをできる選手はまだいない

つまりこのまま試合を続けていてもいずれは点を取られてしまうかもしれないのだ

「なら一点を取りに行かないといけないんですか?」

明希音はそれならば一点を取りにみんなで攻撃をすればいいのではないかと考えるが

「いや・・・今の守備ではもはや攻撃に回すだけの余力はない・・・

 やはり勝負の鍵になるのは慶太があの選手に勝てるかどうかだな・・・」

残念ながら攻撃に回せるだけの余力は今の彼らには存在せず

当初の予想どおり勝つ為の道は慶太が相手の司令塔を抑えられるかどうかに掛かっていた

(だが・・・慶太の体力も無尽蔵ではない・・・このまま勝負を続けていれば

 間違いなくあいつの方が先に体力が切れる・・・そうなったらこの試合は終わりだ・・・!)

晃平の考えでは最大の問題は慶太のスタミナにあった

今の彼は試合での緊張もさることながら慣れない事をして余計に疲れているはずだろう

しかし相手はいつもの試合とは対して変わらずリラックスした状態でプレーしている

おそらくはこの気持ちの差が体力の残りに影響しており慶太が先に倒れる可能性を危惧している

つまり慶太はその体力の限界が来る前にどうにかして相手を抑える方法を見つけなければならないのだ

(・・・ここが正念場だぞ・・・!慶太!!)



「ハァ・・・ハァ・・・!」

晃平の予想通りに慶太はかなり体力を消耗しており

まだ試合の半分しか経っていない中ですでに肩で息をしているほど疲労していた

「大丈夫かい?監督に変えてもらった方がいいんじゃないかな?」

それに対して相手の選手は全くと言っていいほど体力を消費しておらず

涼しい顔をしながら慶太に交代しないのかと確認してくる

今の慶太にとっては最大の挑発だと言えるだろうが疲れのせいで怒る気すら起きなかった

(確かにこいつの言う通り・・・もう俺は・・・交代した方がいいのかもな・・・

 試合も多分・・・負けに決まってるだろうしな・・・)

疲労の所為か慶太はだいぶ弱気になっており相手の言う通りに交代するべきかとおも考える

しかし昨日の出来事がまだ慶太を動かそうとしていた

「・・・そうだな・・・俺が負けたら・・・あいつに何言われるかわからないしな・・・!」

慶太は再びやる気を出して披露している体を気力で動かしていく

「その根性だけは大したものだよ・・・だけど・・・現実はそんなに甘くはない!」

相手は疲れている慶太を振り払うかのように全速力でフィールドを駆け上がっていく

もはやそのスピードは味方の選手ですらついていけないほどだった

「わかっただろ?これが現実っ!なんだと?!」

現実を突きつけれただろうと相手は後ろを確認してみると

なんとちゃんと自分の後ろをしっかりとついてくる慶太の姿があったのだ

(バカな!さっきまでこいつはガス欠間近だったはずだ!

 それなのにどうして俺の全速力についてこれるんだ?!)

相手は驚異的な慶太のスピードが理解出来ずにいるとその隙をついて慶太が前へと出た

それを見て相手はスピードを落とさなければならなかったがその為に急激にブレーキをかけてしまった

「しまっ?!」

慶太はそのブレーキをかけた瞬間を狙っていたようで相手からボールを奪い去った

そしてそのまま相手のゴールに向かって突っ走っていった






「「「「「ありがとうございました!」」」」」

試合が終わり両選手が挨拶を交わす

結果としては0対1で慶太達が負けてしまったのだ

あの後で慶太はボールを持って走ったまでは良かったのだが

やはり疲労の限界が来てしまいゴールの手前で倒れてしまったのだ

そのボールをなんとかして味方が拾ってシュートを放ったのだが

向こうのキーパーに止められてしまい慶太はその時点で交代させられてしまう

そして試合が再開してすぐに向こうの司令塔が上がって行き見事なゴールを決めた

結局は始まる前の予想通りの結末にはなってしまったが会場に来ていたほとんどの人は

先ほどまでの戦いを見て両校に賞賛の拍手を送ってくれた

その一方で慶太は一人だけベンチで悔しから涙を流していた






「・・・そうか・・・慶太は負けちゃったのか・・・」

自分の試合が始まる前に好夜は晃平から試合の結果を聞いていた

『ああ・・・俺達はこのままホテルに帰る・・・今はそっとしておいてほしいだろうしな・・・』

晃平は負けてしまった慶太の気持ちがわかるからこそ今は静かにしておこうと考えていた

「そうだな・・・後でみんなで慰めた方がいいだろうな・・・っとそろそろ俺も試合だから切るな?」

好夜はみんなで慰めに行こうと告げると担当の先生から試合が始まると言われる

『ああ・・・お前の方も頑張れよ?相手はかなり手強いみたいだがな?』

晃平からの応援を受け取りながら好夜は通話を切った

「いやまぁ・・・手強いっていうか・・・絶対に勝てる気のしない相手なんだけど・・・」



両校はお互いに戦うコートへと向かっていき準備運動を始める

最初はダブルスの人達からであり挨拶を交わしてからポジションにつき試合が開始される

一試合目はさすがに名門と呼ばれている高校なだけあって圧倒的な差をつけられて負けてしまった

しかし続くダブルスの二試合目はなんとか意地を出して勝利をつかみ取った

次はシングルスの試合へと入っていったのだがこちらの方が圧倒的な実力を持っていた

一試合目はもはや一点も取らせないとばかりに攻められてしまい負けてしまった

(・・・やっべ・・・これで俺の三試合目も視野に入ってきちゃったよ・・・)

二敗してしまいもはや後がなくなってしまったシングルスの二試合目

もちろんこちらは負ける訳にはいかないので否が応でも気合が入るというものだ

しかしそれだけで相手との実力が埋まる訳でもなくいい試合自体は出来たが負けてしまった

結果としては1対3で最後の試合を行わずに好夜達の一回戦敗退が決まった

「ごめん・・・俺が勝ってればお前に回せたのに・・・」

シングルスの二試合目で負けてしまった同級生が好夜に申し訳なかったと謝る

「いや・・・俺も正直三試合目であいつと試合したら勝てる自信なかったし・・・

 それにこれで相手とどれだけ差があるのかわかったんだし次は勝てるように努力すればいいだろ?」

好夜は試合をしたからこそ相手の実力が分かっただろうと負けてしまったみんなに告げ

次はその実力を超えられるように努力して勝てばいいのだと皆を励ましていた

そのままみんなは監督のもとへと向かい先ほどの試合での反省を聞いていた

「やぁ・・・さっきぶりだね?」

するとそこへ先ほどの対戦相手だった宮園が現れた

「ああ・・・・悪いな・・・試合できなくて・・・」

好夜は宮園に約束の試合が出来なくて申し訳なかったと謝る

「まぁ・・・団体戦じゃこんな事もあるよ・・・

 だから・・・君との対戦は来年にとっておく事にするよ」

宮園は好夜との対戦は来年の個人戦までとっておく事を宣言していた

「はは・・・できればその時は・・・手加減してください・・・」



(・・・ていうか・・・命にかっこいいところ見せられなかったな・・・)

好夜にとっては試合の勝敗よりも命に試合する姿を見て欲しかったという思いの方が強かったようだ

次回は打ち上げ回です!

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