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スパイクを止めろ!

今回はバレー部の試合回です

翌日になりいよいよバレー部の試合が始まろうとしていた

その試合には命達が撮影をしておりカメラ越しでも敬子の緊張が伝わってきた

(・・・大丈夫かな・・・敬子ちゃん・・・)

そんな敬子を心配しながら見ていると後ろから香野が近づいてきた

「大丈夫だよ!そこまで心配しなくてもちゃんと出来るって!」

心配する命に対して心配しなくても大丈夫だと励ます

しかし敬子にとってはこれが高校に入って初めての試合なので緊張しないわけなどないだろう

それこそ失敗なんてしてしまったらそれだけで三年生の夏を終わらせてしまう不安だってある

そんなプレッシャーを抱えて本当に試合など出来るのだろうか?

おそらくはまともなプレーなど出来ないだろう

「・・・頑張って・・・!」

命が祈る中いよいよバレー部の試合が始まろうとしていた

試合が始まるとやはり三年生や対戦相手の人は慣れてきているのは自然とプレイが出来ていた

だがやはり敬子はそのプレイについていけずかなり足を引っ張っているような印象があった

それでも何とか食らいつこうと思い相手のスパイクだけは必死でブロックしていた

しかし肝心の自分が打つスパイクが全くと言っていいほど決められなかった

そしてそのまま最初の1セットを取られてしまい敬子はかなり追い詰められた表情をしていた

先輩達が必死で慰めたりなどのフォローをしているがこれは自分で活躍しないと無理だろう

(敬子ちゃん・・・!)

命はどうにか声援だけでも送りたいが向こうの応援が強すぎて

自分の声ではどんなに頑張ってもかき消されてしまう

どうにかして声以外で声援を送れないかと思っていると彼女のケータイにメールが届いた

(誰だろう・・・?・・・慶太くんからだ・・・)

おそらくは彼の方も試合が始まったのか急いで送られてきたようで

メールの内容はとても簡潔で敬子に伝えて欲しい事があるとの事だった

(・・・わかったよ・・・ちゃんと伝えるね・・・!)



(・・・ダメだ・・・全然入るイメージが出来ない・・・)

一方で敬子は今の自分では全く相手には通用しないと思い込んでおりかなり追い込まれていた

今の彼女にはおそらく会場の声すら入ってきてはいないだろう

そんな絶望している彼女の肩を叩いて先輩が試合再開を告げる

それについて行くようにベンチを立って応援席を見てみると

「・・・あっ・・・」

そこには大きな看板を持った命が顔を真っ赤にしながら立っていた

そして持っていた看板には先ほどの慶太から届いたメールの内容が書かれていた

『俺にあんな事、言ったのに負けてるんじゃねぇぞ!』

それは激励とも思えない挑発めいた言葉だったが今の敬子には一番胸に響いた言葉だった

「全く・・・まだ試合中だし負けてないっての・・・!」

先ほどまでの不安に満ちた表情は消えており今の敬子はとてもいい表情をしていた

そのままの勢いで第二セットはスパイクをバシバシと決めて先ほどの失敗を取り返し

いよいよ最終セットを迎える事になった

だいぶ三年生の先輩達は体力の限界がきておりプレーが鈍り始めていた

しかしそれは向こうも同じでおそらく次のセットの鍵を握っているのは敬子だろう

最終セットが始まり敬子は動けない先輩の代わりに何度も飛んで得点を重ねていくが

やはり一人しか動けないのが災いして敬子は徹底的にマークされてしまう

そんな状況の中で点を取れるわけもなく引き剥がそうとしても食らい付かれてしまった

(・・・さすがに・・・もう・・・キツイ・・・!)

さすがの敬子も一人であんなに動き回っていては

疲労もハンパではなくもはや体力の限界を迎えようとしていた

「しまっ?!」

そんな中で相手のスパイクが飛んできたのを見逃してしまい

手を伸ばしても届かずもうダメだと思っていると

「諦めるな!」



「っ?!」

ベンチに座っている怪我をした先輩の声が聞こえてきて敬子はなんとか体に当てる

しかし返ったボールは最悪な事に相手のコートの方へと向かってしまい

すでに相手はスパイクで返そうとしていた

「後輩ばっかりにいい格好をさせるわけにはいかないのよ!!」

それを息を吹き返した先輩達がブロックして点を取り返した

「ごめんね・・・一人で任せちゃって・・・でもここからは休んでいいからね」

先輩達は無理をさせてしまったと敬子に休んでも大丈夫だと告げるが敬子は首を横に振る

「大丈夫です・・・このまま・・・やります・・・!」

せめて最後まで全力で戦おう・・・これは最初に試合に出る時に敬子が決めていた事だった

たとえ惨敗しようとも圧勝であろうともそして自分の体力が尽きようとも

それが自分を選んでくれた三年生達への恩返しになると思っていたのだ

「・・・わかったわ・・・でも無理はしないでね?」

そう言って先輩達はプレーへと戻って行き試合は再開された

もはや相手には体力に得点を取るだけの体力は残っておらず結果としてバレー部は勝利を収めた

「・・・よかったぁぁぁぁぁ・・・」

試合を終えた敬子は緊張が解けたのか腰が抜けたのかその場に座り込んでしまった

「お疲れ様・・・よく頑張ってくれたね・・・!」

そこへ怪我をした先輩が駆け寄ってくれて敬子に手を差し伸べる

敬子はその手をとって起き上がった

「ありがとうございます・・・すいません・・・最初に不甲斐ないプレーをしてしまって・・・」

最初のプレーに関して敬子は申し訳なかったと頭を下げる

すると怪我をした先輩は責めるどころか頭に手を置いてそのまま撫で始めた

「何言ってんのよ・・・あんたのおかげで今日の試合は勝てたのよ?

 それなのに謝ってるんじゃないわよ・・・むしろもっと胸を張りなさい!」

そう言って先輩は敬子の背中を叩いて皆が喜んでいる場所へと押し出す



「・・・おっ・・・!どうやら勝ったみたいだな・・・」

命からのメールを受け取った好夜は内容を見て敬子が勝った事を知る

「なんだ勝ったのか・・・それじゃあメール送る必要もなかったか・・・」

どうやら慶太の方も試合を終えていたようで今は好夜と一緒に野球の試合を見に来ていた

「いや・・・そこは素直に喜んでおけよ・・・てか随分と長引いてるな・・・」

好夜は素直に喜ぼうとしない慶太にツッコむと同時に試合を見つめる

残念ながらと言うべきなのかどちらも一点も取れないでいた

「肝心の一発が決められないからな・・・どうにかして決定打を決めたいけど・・・」

そう思っていると打席に晃平が立った

そしてその瞬間に捕手が立ち上がり敬遠の構えを取り始めた

「・・・やっぱりか・・・晃平かキャプテンに変わると絶対に敬遠されるな・・・」

問題となっているのは決定力のある晃平と部長である龍間に変わった瞬間に敬遠されてしまう事だった

これではいつものように一点を決めるのはかなり困難になってしまう

残された可能性としてあるのは他のみんなが頑張って

一点を取るか敬遠されないような状況を作るかだ

(だが・・・向こうの守備がうまい・・・絶対に塁には二人以上は上げないようにしている・・・

 あれじゃあどんなに頑張っても他のみんなで一点を決めるしかない・・・)

好夜は試合の流れを見て相手の守備がうまくて二人は敬遠されるしかなかった

残された可能性は他のメンバーで一点を取れるだけのヒッティングをするしかないのだが

その巨大なプレッシャーの所為なのかみんな今日はまともなプレーが出来ていなかった

「・・・もしかしたら・・・かなりピンチかもしれないな・・・」

まさかの苦戦を強いられる野球部に好夜はもしかしたら負けるかもしれないと思っていた

そしてそれはおそらく戦っている彼らも思っている事だろう

しかしそれでも諦めない男が一人だけいた・・・それが部長である龍間だった

「お前ら!何を下を向いている!上を向かなければボールに当てる事など出来んぞ!!」

龍間の言う通り下を向いているだけでは絶対に勝てたりなどしないだろう



「「「「・・・はい・・・!!」」」」

龍間の声を聞いてみんなは目に光を取り戻し

先ほどとは違ったやる気に満ち溢れるようにバットを振っていた

「「これは・・・当たりそうだな・・・」」

二人の予想どおりボールはバットに当たり

ようやく待望の三人目のランナーが出て晃平が打席に回ってきた

「これじゃあ敬遠はできないな・・・真っ向勝負しかないが・・・」

さすがにこんな状況では向こうの投手にも焦りがあったのか完全にすっぽ抜けた球を放ってしまい

それを見逃さなかった晃平にスタンドへと持って行かれてしまった

逆転で四点を決められてしまった相手にこの点差をひっくり返すだけの力はなく

そのまま完封され勝ったのは我らが野球部だった

「なんとか勝ったな・・・てかギリギリすぎるだろ・・・」

好夜はかなりハラハラしたと疲れたような表情を浮かべていた

「本当だぜ・・・これなら自分の試合に出てる方がマシかも・・・」

慶太もそれには同意しており思いっきり首を縦に振っていた

「それにしても・・・今回の試合はまずかったな・・・」

今回の試合を振り返って好夜は少しまずい事になったかもしれないと思っていた

「ん?どういう事だ?勝ったんだから別にいいだろ?」

何も理解していない慶太は何がダメだったのか尋ねる

「お前な・・・今回の試合でキャプテンと晃平だけを抑えればいいってみんな分かったんだぞ?」

それを聞いてようやく慶太も今回の試合でやってしまった事に気がついた

これからの対戦相手は今日のように龍間と晃平だけを抑えてしまえば

完全に勝ち目を潰す事が出来ると理解してしまったのだ

それは同時にこちらの唯一であろう必勝の策を封じられた事にもなる

「おまけにこれからの相手は今日みたいに他のメンバーが打てる保証もない・・・

 間違いなく・・・今まで以上に苦戦を強いられる事になるだろうな・・・」

次回の話は野球部になりそうかな?

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