勝負を前にして
今回は大会初日を迎えます
少し長い船旅を過ごすと昼ぐらいにようやく本州へとたどり着き
そこから電車に乗り夕方にくらいに大会の間に泊まるホテルに到着した
「これから荷物を置いて予約している店に向かうからな!
18時までにロビーに集合しておけよ?!」
担当の先生がみんなにそう告げるとすぐに部活ごとに部屋の鍵を渡されてゆく
四人一部屋でありもちろん好夜も同学年の三人と同じ部屋になると思っていたのだが
「・・・なんで俺だけこんな特殊な部屋なんですか・・・?」
何故か好夜は生徒会長と同じ二人部屋に詰め込まれていた
「俺達は生徒会としての準備もあるからな・・・必然的にこうなる」
しかしそれは単純に二人が生徒会の仕事も兼任しているからだった
他の人達は自分の部活に専念すればいいのだが生徒会は大会を記録しないといけないので
朝早くに起きて機材などのセッティングなどをしなくてはいけなく
同じ部屋の人間に迷惑をかけてしまう可能性があるのでこうなってしまったというわけだ
「・・・今思ったんでけど・・・来年もし男子が入ってこなかったら俺一人ですか?」
好夜はそれを聞いて来年に男子が生徒会に入ってこない場合は
自分一人だけでこう言った部屋に一人で止まらなければいけないのかと確認する
「当たり前だろ?もしくは男の先生達と一緒の部屋になるな」
それに対して生徒会長は当然一人か先生達と一緒になると告げると
好夜はそれを聞いてとても悲しそうな表情を浮かべていた
「そろそろ時間だな・・・早くロビーに向かうぞ?」
生徒会は生徒よりも早く向かい点呼を取らなくてはいけないので早めにロビーへと向かければならない
するとその道中で女性陣の方を現れてそのまま合流しロビーに着くと
すぐに先生から生徒のチェックリストをもらい次々に来る生徒の点呼を取っていた
「そろそろ時間だな・・・まだ来ていない生徒はいるか?」
そして予約の時間が迫っており先生が全員来ているかどうかを確認する
「えっと・・・一人まだ来てませんね・・・」
「何っ?!誰だそいつは?!!」
「・・・瑞樹 慶太です・・・同室の生徒によると船酔いでトイレから出てこられないそうです・・・」
まさかの人物が残ってしまっている事実に思わず好夜はため息を吐いてしまう
「・・・すいませんが残って様子を見てもらってもいいでしょうか?」
担当の先生は保健の先生に残って様子を見てらもうようにお願いすると
まさか大会の前日に自分の役目が来るとは思っていなかった保健の先生も思わず苦笑いしていた
こうして生徒一人と先生一人を残してみんなは貸切にしたバイキングへと向かった
もちろん男子高校生が多いのでバイキングともなればとてつもない勢いで食われて行っていた
「・・・なんか・・・これを見てると逆に食欲無くなっていくな・・・」
同じ男子高校生である好夜も同じくらいには食べられるのだがこれを見てると
光景が凄まじ過ぎてとても食べられるような雰囲気ではなかった
「まぁ・・・これに関してはいつも同じだからね〜・・・私達も最初は圧倒されたわ〜・・・」
これを2年も体験していた三年生からして見れば見慣れてしまっていた
「「まだまだまだまだぁぁぁぁぁ!!」」
むしろそんな三年生の野球部の部長とサッカー部の部長があれを先導していた
そしてどうしてだか野球部とサッカー部で大食い勝負すら行っていた
「・・・あの二人・・・明日から大会ってわかってるんですかね?」
あんなに食べてしまったら明日の大会に影響が出るのではないかと好夜は心配するが
当の本人達はそんな事は気にもとめずにめちゃくちゃ食べている
そして元々の対抗意識も高いのか他の部員も止めるのではなくむしろ応援していた
「・・・あれで負けたらシャレにならないですね・・・」
好夜はあれで一回戦負けをしたらだいぶ文句を言われる可能性があると思いながら
それぞれの晩御飯を楽しみそれが終わるとみんなでホテルへと帰って行った
「明日は俺らの出番はないから大会の撮影を行う・・・準備の方はどうだ?」
部屋に戻ると生徒会長は明日行われる大会の撮影準備はどうなっているのか確認する
「充電の方は大丈夫ですね・・・後は設置する場所じゃないですか?」
好夜は問題となるのはカメラの場所をどこにするかで変わると考えていた
「それに関しては明日次第と言ったところか・・・後は対戦相手にもよるな・・・」
生徒会長はセッティングに関しては明日にならないと分からないと言っていた
「対戦相手か・・・そういえば明日の相手ってどことやるんですか?」
まだ組み合わせ表を見ていなかった好夜は二つの部活がどことやるのかを気にしていた
「野球部に関してはどちらも一回戦で敗退する事の多い高校だから油断しなければ問題はないだろうな
問題はサッカー部の方だ・・・二回戦の対戦相手は去年の全国でベスト8になっている」
生徒会長の話では野球部は特に問題はないらしいのだが
サッカー部の方に関してはなんと全国のベスト8が相手らしくかなり厳しい対決になるそうだ
「・・・マジですか・・・ちなみにウチが勝てる可能性ってどれくらいですか?」
好夜は一応そのベスト8の相手の戦って勝てる確率はどれくらいなのか尋ねると
「そうだな・・・昔は五分五分だったが相手はスタメンがほとんど残っているのに対して
こっちは卒業してしまった人達がいるからな・・・新人次第と言ったところか・・・」
どうやら今回の大会はウチの新人次第がどれだけ戦えるかで確率はかなり変わるらしい
(新人次第か・・・それだと明日の慶太の体調次第では本当に変わるだろうな・・・)
それを聞いた好夜は明日の試合結果は慶太次第なのではないかと考えていた
確かに今年の新人で期待できるのは彼しかいないだろうが
それでも相手は全国に出ていてなおかつベスト8にまでなっている学校だ
とても気を抜けるような相手ではないだろう
「とにかく明日はサッカー部が一番の見せ場になるのは間違いないだろうな・・・」
生徒会長の言う通り明日はおそらくサッカー部が一番のメインとなるだろう
それこそ他の部員達が応援に来る事が予測されるほどに・・・
「・・・できる事なら勝って欲しいですね・・・」
好夜は明日を最後の試合にはして欲しくないと思いサッカー部が勝利する事を祈る
「ああ・・・あいつだって始まって早々に引退なんてしたくないだろうからな・・・
きっと・・・勝ってくれるはずだ・・・」
生徒会長もサッカー部が勝つ事を信じているようでとても力強い言葉を述べていた
そして翌日になり野球部とサッカー部はそれぞれ現地の会場へと向かう
もちろん生徒会である彼らもついて行き会場でカメラをセッティングする
「えっと・・・俺達はこっちのサッカー部で問題ないんですよね?」
好夜は自分達はサッカー部の見学だけで問題ないのか生徒会長に尋ねる
「野球部の方は香野と朝宮の二人が担当してくれているからな・・・
他にもボランティアの子が手伝ってくれているはずだから問題はないはずだ」
しかし向こうには生徒会の二人を含めボランティアも何人か参加しているので
そこまで心配をする必要はないだろうと話していた
そんな事を話しているとサッカー部の試合が始まろうとしていた
急いでカメラを回し始めるとサッカー部の面々が姿を現し始めた
どうやら部長以外の部員はやはり緊張しているようで動きがぎこちなかった
しかし好夜が一番気になったのはそのスタメンの中に慶太の姿がなかったのだ
どこのいるのだろうと探してみると彼がいたのはなんとベンチだった
(あいつ・・・なんであそこにいるんだ?)
好夜はどうしてスタメンで試合に参加していないのか疑問に思っていたのだが
ベンチにいる彼を見ると何やらまだ体調が悪そうだった
「あいつ・・・まだ船酔いから回復してなかったのかよ・・・」
その様子を見て好夜はどんだけ本番に弱いのだと思い呆れてしまう
「まぁ・・・初戦に関してはそこまで心配はしなくても大丈夫だろう・・・
問題は明日に控えている二回戦の相手だ・・・間違いなく彼らが上がってくるだろうからな」
そんな風に思っていると試合開始のホイッスルが鳴りいよいよ試合が始まった
序盤から攻めていくサッカー部の部長である真島を止められなくて
初戦は3対0と言うかなりの差で勝って見せた我らがサッカー部だったのだが
どうやら本人達はあまり納得のいった戦いができていなかったようだ
「おそらくは緊張でまともに動かない選手がいたんだろうな・・・無理もない・・・
大会においては初戦が一番緊張するはずだからな・・・」
しかしそんな彼らを追い込むかのようにもう一試合の結果が発表された
「・・・7対0・・・」
なんと向こうは7点を上げると言う快挙を成し遂げていた
確かに相手はそこまで注目をされている高校ではなかったがそれでも7点はかなりの実力を表している
それこそこちらが上げた点の倍以上を叩き出しているのだ
こんな結果を聞いて勝てる自信がある者はこの場にはいなかった
「何を俯いている?!相手は強豪だが決して勝てない相手ではないのだ!
俺達がやらなくてはいけないのは勝つ気持ちを忘れない事だ!
それを忘れない限り俺達は負けた事にはならない!!」
するとそんな部員に対して真島はまさに喝を入れる為に叫び出した
確かに勝てる可能性は低いがないわけではない
しかしその可能性をあきらめてしまえば勝利を引き当てる事など出来ない
それを知って尚且つ部員を信じているからこそ真島は叫んだのだ
そしてそれに応えない部員はこのサッカー部にはいなかった
俯いていたはずの彼らの目には燃える闘志が感じられた
「よし!それじゃあ二回戦は俺達らしい試合を行うぞ!いいな?!」
それを聞いてみんなが大きな声で返事を返す
「・・・頼むからお前も明日はちゃんと試合に出てくれよ?」
好夜は唯一、体調が悪くてそれに参加できていない慶太に明日を頑張るように告げる
「・・・おう・・・任せておけ・・・!」
慶太はカッコよく決めてはいたが顔面蒼白でとても期待できるような顔ではなかった
(・・・大丈夫かな・・・これ・・・)
次回は好夜達も大会に参加するよ!




