舞
今回はシリアスになるかな?
二人はお昼を食べ終わり夜の本番に向けて最後の練習をしていた
「いや〜本当に君が来てくれて助かったよ〜!これなら息子も喜びそうだ!」
好夜の動きを見て晴真は本番を任せても大丈夫だと断言した
「あの〜・・・できればプレシャーを掛けないでほしいんですけど・・・」
しかし失敗したくない好夜からしてみればその言葉はプレッシャーでしかなかった
そんな事を話しながら歩いていると何やら向こうの方が騒がしくなっていった
「どうかしたのか?」
晴真は何をそんなに騒いでいるのか聞く
「実はさっき命ちゃんが足を挫いちまったようでよ!
今、執事さんに見してるんだがもしかしたら舞ができないかもしれないんだよ!」
何とその人の話では命が足を挫いてしまいそれ次第によっては舞が中止になる可能性があった
「それ本当なのか?!」
それを聞いて真っ先に食いついたのは好夜だった
急いで命のいる部屋へと向かい容体を聞こうと思っていると
部屋の前ではすでに実善さんが治療を終えたようで医療器具を持って出てきた
「実善さん・・・命の具合は?」
好夜は命の具合について確認すると実善さんは好夜の肩に手を置いた
「安心してください・・・そこまで酷い怪我ではありません・・・
安静にしていれば明日には治っているはずですよ・・・」
どうやら心配するような怪我ではなかったようで安静にしていれば明日にも治ると言っていたが
実善さんの困ったような表情を見て好夜は悟った
「・・・その様子だと・・・今日の舞をやるつもりみたいですね・・・」
そう・・・命は怪我をしたにも関らず舞を続けるつもりなのだと
「私としてはやめてほしいのですがね・・・残念ながら止める事は出来ないでしょう・・・」
実善さんは絶対に自分では聞いてもらえないだろうと思い
こうして好夜に止めてもらえないかとお願いしていたのだ
「・・・入るぞ・・・」
実善さんの話を聞き好夜は部屋へと入っていった
「こっ好夜くん・・・」
好夜の姿を見た命は思わず縮こまってしまった
その理由は怒られると思ったからだ
無理をするなと言われて結局は怪我をしてしまいしかもそのまま舞を踊ろうとしているのだから
普通だったら怒られるのは当然の事だろう
しかしそれでも命は舞を諦めるつもりはなかった
それは神主のお孫さんが見にくるからだけではない
祭でそれを楽しみにしている人だっているのだ
そんなみんなに元気を届ける為の舞だからこそ中止にするわけにはいかない
そう思って命が好夜を説得しようと口を開いた時だった
「別にやるのは構わないが・・・俺が失敗しない可能性もないんだからな?」
その言葉を聞いて命は目を見開いて驚いていた
「・・・とっ止めないの?」
てっきり好夜は自分を止める為にここに来たと思っていたのに
彼の口から出たのは舞をやる事を前提とした言葉だった
それに対してどうして止めようとしないのか思わず聞いてしまった
「どうせ俺達が何を言ったって命はやめようとしないだろ?
だったらお前を支えるのが俺らがやらなくちゃいけない事ってだけだ・・・」
好夜は最初から命を止める気などなかったようだ
昔から誰かの為ならば無理をしてでも頑張ってしまうのが命なので
やる事としては彼女を支えるのが自分達がやらなくてはいけない事だった
「全く・・・後でちゃんと実善さんやみんなにお礼を言うんだぞ?」
それだけ言い残して好夜は部屋から出て行った
「・・・ありがとう・・・好夜くん・・・」
「そうか・・・続けてくれるのか・・・本当なら中止にさせたいんだが・・・」
好夜から命の容体を聞いた晴真は舞を中止にさせようかとも思ったが
「あいつが続ける事を望んでますからね・・・俺達がやる事は絶対に失敗させない事だけですよ」
本人の強い希望もあるので舞を中止にさせる事は出来ず
二人が出来る事は少しでも命の負担を減らす事だった
「そうだね・・・それに負担を減らすという意味では一つだけ良い策がある」
晴真の話では命の負担を減らしたいのなら一つだけ良い方法があるらしく
一度、広間から出て行って何処からか昔の書物を持ってきた
「実は祭で踊る舞には二種類パターンが存在するんだ
基本的に巫女が踊る舞は変わらないけど旗の振り方は少し特殊になる
でもこっちならば巫女が休憩できる時間もあるから命ちゃんの負担を減らせるはずだよ!」
確かに休憩を挟めるのならば足の負担はかなり減らせる事になるだろう
おまけに踊り方が変わらないのならば練習もしなくて済む
問題は振り方の変わる旗を持つ者・・・つまりは好夜がそれを覚えきれるかどうかだった
「一応、僕も神主の息子だからね・・・もう一つの舞は体で覚えているけど・・・
どうだい?残り少ない時間でこれを覚えきれそうかな?」
正直、残された時間はすでに二時間もない状況で急に振り方を変更するなど無謀に等しい
しかしそれでも命の負担を減らせるというのならば答えはすでに決まっていた
「やります・・・!早速、振り方を教えてください・・・!」
好夜は早速、旗を取り晴真にもう一つの振り方を教えてもらおうと懇願する
「わかった・・・時間もないからスパルタで行くよ!」
それから二人の文字通りの猛練習が始まった
残り少ない時間で本番を完璧にできるように振り方を徹底的に覚えこませる
二人の練習風景を見ていたみんなはまさに鬼気迫るものがあったと答えていた
「はぁ・・・はぁ・・・なんとか形になったね・・・」
それから本番開始まで後10分になった頃、ようやく振り方をマスターできたようだ
「はぁ・・・はぁ・・・はい・・・後は・・・本番です・・・!」
残るは本番で今と同じ感じに行くかどうかなのだが
残念ながらもう練習する時間は無くなってしまった
二人は練習を切り上げて本番を迎える為の準備へと入っていった
舞を踊る時には衣装を身に纏いその状態で旗を振り続けなければならない
「おぉ〜・・・めちゃくちゃかっこいいじゃないか!」
その衣装を身に纏った好夜は同じく衣装を着た晴真にとても褒められていた
「ありがとうございます・・・それとすいません・・・我儘を聞いてもらって・・・」
好夜はお礼と急遽、舞を変更してしまった事に対して謝罪をする
「おいおい・・・そんな事を言ったら無理に君を引き込んでいる時点で僕達の方がお詫びしないと
それに君のおかげで今年はいつもと違う舞が出来るんだよ?逆にお礼を言わないと!」
いつもならば神主と晴真の二人で旗を振り続けなければならないので
先ほどまで好夜が練習していた激しく旗を振るという事を出来ないのだ
しかし今年は神主が怪我というアクシデントのおかげでそれが出来る
それに対して感謝こそすれ怒りを向けるような理由など微塵も彼らにはなかった
「実際に親父に舞の変更を言った時には感激のあまりにギックリ腰を悪化させそうになったしね」
舞の変更を親であり舞の責任者である神主に報告したところ
本当に出来るのか最初は不安だったようだが好夜の練習している風景を見て
これならば今まで以上の舞を披露できるととても喜んでいたそうだ
「さすがに絶対安静にしていなくちゃいけないから見るのは出来なくてすごい悔しそうだったよ」
ついでな話をするのなら自分ですら過去に見た事はないので
とても見たそうにしていたらしいが絶対安静なので見に行けずとても悔しそうにしていたとの事
「ははは・・・そんなに期待されるとなんだか吐きそうになってきますね・・・」
あまりにプレッシャーに好夜は思わず胃を抑えて吐きそうなのを我慢していた
「まぁまぁ・・・今年は新しい試みだし失敗したとしても大丈夫だって!」
晴真はそんな好夜に別に失敗しても誰も文句は言わないだろうとフォローしてくれる
そしていよいよ本番が始まった
二人は巫女より先に壇上にへと上がり旗を構えて待つ
そこへ巫女の衣装を身に纏った命が上がってきた
(・・・やっぱり無理はしてるみたいだな・・・)
しかしその歩き方はやはりおかしく無理をしているのがすぐにわかった
それでも命はしっかりとした表情で歩いて行き舞の曲が始まる
それと同時に命が踊り始め好夜達は旗を振り始める
しばらく振り続けると命が奥へと下り好夜達が前に立って激しく旗を振っていく
それはさながら獅子舞の如く荒々しくまさに彼らにしかできないことだった
そして最後は再び命が華麗に舞って舞は終わりを迎えた
「はぁ〜・・・終わったぁぁぁぁぁ・・・」
緊張が解けた好夜は舞台裏に戻るとしゃがみこみながら息を吐いた
「おっお疲れ様・・・!」
そこへ足を引き摺りながら命が近づいてきた
「・・・はぁ・・・お前な〜・・・先に行く場所があるだろうが!」
そう言って好夜は命を抱き上げてそのまま凄まじい勢いで実善さんの元へと向かった
ちなみにその一部始終を見ていた他のみんなは羨ましいと思っていたそうだ
「・・・はい・・・多少の無理は覚悟の上でしたからね・・・
でも負担がそこまでなかったから明日一日、絶対安静にしておけば完治しそうです」
実善さんの判断だと無理が少なかったおかげなのか明日一日だけの絶対安静で大丈夫らしい
「よっよかったです・・・!」
命はそれくらいで済んでよかったと思っていたが
「いや・・・よくないでしょうが!あんたは少し休む事を覚えなさい!」
そう言って怒っていたのは敬子だった
実は登場の時から様子がおかしいと思っていたようで晃平達と一緒に来たのだ
「全くだぜ・・・何も知らなかったからすげぇ心配したんだぜ?」
「ごっごめんなさい・・・」
命はみんなに迷惑を掛けてしまい申し訳ないと頭を下げていた
その光景を見ていた好夜は他人のように見ていると
「あんたも同罪だからね!明日は命を負ぶって祭に参加するのよ!!」
まさかのとばっちりがきて好夜は思わず目を見開いてしまうが
「わかったよ・・・明日は責任を持って俺が命の面倒を見るよ」
実際に止めなかったのは自分なので何も文句はなくその罰を受け入れた
「ごっごめんね?まっ巻き込んじゃって・・・」
命は自分の所為で罰を与えてしまい申し訳ないと言うが
本人はそれほど気にしていなかった
・・・何故なら・・・
「明日はずっと命と一緒に居られるからな・・・ある意味、ご褒美だろ?」
「・・・キュ〜・・・」
「命?命ぉぉぉぉぉ?!!」
あまりの恥ずかしさと嬉しさに思わず気絶してしまった命であった
次回はみんなでお祭りを回るよ!




