真夏の兆し
未だに宿題が終わらない慶太くんのお話
夏休みが後半に差し掛かったのだがそれは同時に真夏が近いという事でもあった
「あっちぃぃぃぃぃ・・・」
今日の気温はすでに30度後半に差し掛かっておりまさに真夏の気温と言えるだろう
「暑くて何もやる気が起きねぇぇぇぇぇ・・・」
あまりの暑さに慶太はもう無理だとばかりに机に伏せていた
「そんな事言ってたらいつまでたっても宿題は終わらないぞ?」
しかし好夜の言う通り机に伏していても何も進まないので
ここは我慢してちゃんと宿題を終わらせる必要があった
「そうは言ってもよ〜・・・正直無理なもんは無理!」
だが慶太は意地でも譲らないとばかりに無理だと連呼し続ける
「そんな事言われてもな〜・・・さすがこの温度を下げるのは無理だ」
自分は神様でも何でもないので外の温度を下げるのは不可能だと好夜は告げる
「じゃあせめてエアコンくらい付けてくれよ〜・・・」
それが無理ならばエアコンを付けてくれないかと慶太は言うが
「お前な・・・ここは俺の家だぞ?・・・それにエアコンは修理中だ」
残念ながら好夜の家のエアコンは絶賛修理中で残念ながら今は使う事が出来ない
「チクショ〜・・・なら他の誰かの家に行こうぜ〜・・・」
ならばエアコンのある家に行けばいいと慶太は提案する
「残念ながら命は和菓子のお店、晃平と明希音は商店街の手伝いがあるから家にはいねぇよ・・・」
しかし残念ながら命と晃平そして明希音の三人は用事で家を空けている
「マジかよ・・・ってことは残ってるのって必然的に・・・」
慶太は残る人物はだれなのかと考えるが考えるまでのなく残されている人物は一人しかいない
「またこれで敬子の方に行ったら何言われるか分からねぇしな〜・・・」
すでに敬子には散々宿題を手伝ってもらっているのでこれ以上はさすがにまずいと
慶太は考えどこか別の涼しい場所はなかったかと考えていると
「・・・あっ・・・そういえばあるじゃん・・・!一つだけ!」
こうして慶太の思いつきでやってきたのは図書館だった
「ここなら静かに勉強もできるし涼めるしで一石二鳥だぜ!」
確かに晃平の言う通り勉強をする場所として図書館以上に最適な場所はないだろう
「しかし・・・お前の口から図書館って単語が出てくるのは意外だった」
すると好夜はあんなに勉強が嫌いな慶太の口から図書館の言葉が出てきた事を驚いていた
「いやぁ〜・・・確かに俺も一回ぐらいしか来た事なかったから正直忘れてた!」
どうやら慶太自身もそれに関しては自覚があったらしく
今日の来た以外で図書館に来たのは一回ぐらいしかなかった
ちなみにその一回とは中学生の頃の宿題にあった読書感想文だ
(まぁ・・・実際はそんなに読んでないけどな・・・)
しかし慶太はその宿題の為に借りた本を少ししか見ておらず
そんな中で書いた感想文なのでもちろん再提出を食らうのだった
「まぁなんでもいいか・・・とにかくとっとと宿題を終わらせるぞ
このままのペースだとお前だけ祭りに置いていかれるからな?」
そう・・・二人がこんなに早く宿題を終わらせようとしているのには理由があった
それは六人で行こうと言っていたお祭りが迫ってきていたのだ
好夜と晃平が帰ってきて初めてになる夏祭り
それに慶太だけが参加できないなんて事にはなって欲しくないので
そうなる前に何としても宿題を終わらせる必要があった
「わかってるって!この俺を信じろ!」
それに対して慶太は俺に任せろと言って胸を張りながら黙々と宿題に手をつけていくのだが
それから10分くらいがたった頃だった
「もう無理・・・分からん・・・!」
早くの手詰まってしまった慶太は頭を抱えて机にひれ伏す
「早かったな・・・てかお前・・・分からない場所多すぎだろ・・・」
好夜からしてみてもさすがに早すぎるギプアップで
逆にどれが分かるのだと不思議に思ってしまっていた
「だってよ〜・・・こんな漢字とか似たようなもんばっかあるとよ〜・・・
もう何が何だか分かんなくなってくるんだよ〜・・・」
確かに慶太の言う通り漢字には似た文章が多く存在し
それが原因でゲシュタルト崩壊を起こすなんてことは少なくはない
「ならここにある辞典とか借りてくればいいだろ?」
すると好夜はそんなに分からないのならここにある辞典を借りてくるように告げる
「ああ・・・そういえばあるんだった・・・」
どうやら慶太はここが図書館だと言う事を忘れていたようで
好夜の言葉を聞いてああと言うばかりに手を叩いていた
「それじゃあちょっと探しに行ってくるわ!」
そう言って慶太はここにあるはずの辞典を探しに向かった
「全く・・・本当に終わるのか・・・これ・・・」
好夜はそんな風に思いながら目の前にある大量に積まれた慶太の宿題を見ていた
「・・・いや・・・むしろ今日中に終わらせる気持ちでやらないと無理か・・・」
しかし好夜はそんな気持ちでは絶対に終わらないだろうと思い
今日中に絶対終わらせるくらいの気持ちでやろうと決意していた
「あれ?あんたが図書館にいるなんて珍しいわね?」
すると後ろの方から知っている声が聞こえてきて振り返ってみるとそこには敬子がいた
「そりゃあこっちのセリフじゃないか?お前って学校の図書室で済ませる派だろ?」
しかし好夜もそれは同じだと思っていた
何故ならば敬子は調べ物があっても図書館には来ずに学校で済ませる方だったからだ
だからこそここにはそんなに来ないだろうと思っていたのだが
「まぁね・・・でも今回は部活のボランティアで読み聞かせに来たのよ」
どうやら今回は図書館を利用しに来たのではなく
ボランティアの読み聞かせの為に来ていたようだ
「ああ・・・そういえばそんなのがあったな・・・」
好夜がそう言って思い出していたのは夏休みに入る前の部活動中の時だった
「そういえば忘れていたが・・・夏休み中は生徒会はないが部活はあるからな」
部長であり生徒会長でもある菓家が夏休みにも部活動はあると言っていたのだ
「それって大会とかそれに向けた練習とかですか?」
もちろん好夜はその活動とは練習か大会なのかと思っていたのだが
「いや・・・うちの学校は夏休み中に各部活が一つだけボランティアをする事になってるんだ」
どうやらそう言った感じではなく単純に学校行事としての部活動があるようだ
「ボランティアって具体的には何をするんですか?」
好夜はそのボランティアの内容を確認するのだが
「悪いがそれは俺も知らないんだ・・・さっきも言ったように各部活で受け持つからな
顧問の先生達がどのボランティアにするか選んで部長に知らせるようだ」
残念ながら菓家も内容を知らないらしく顧問の先生方が決めてからでないと
どこに何をしに行くのか全くと言っていいほどわからないようだ
「・・・意外とうちの学校ってアバウトですね・・・」
それを聞いた好夜はこの学校はどれだけアバウトな感じなのだと思っていた
「それに関してはしょうがないさ・・・とにかく今は連絡が来るまで待つしかない」
そう言われて好夜は部活動へと戻っていったのだった
そして夏休みに入りテニス部はすぐにそのボランティア活動をする事になった
好夜達が行ったボランティアは普通のゴミ拾い活動だった
どうやらテニス部は一番人数が多いからとの事でこれになったらしい
「まぁ・・・確かに男女合同なら人数は他より多いですよね・・・」
しかもそのボランティは男女合同のボランティアだったので
確かに他の部活動よりも圧倒的に人数は多かった
「・・・あと多分だけど・・・テニス部の人数が多いのって他にもあるよね・・・」
そう思いながら好夜は後ろにいるであろう菓家の方を見ると
そこでは女子テニス部の後輩達に囲まれている菓家の姿があった
そして現在、同じく部活動のボランティアとして
今度はバレー部の敬子達の番が来たと言うことだ
「それにしても読み聞かせか・・・なんでそれになったんだ?」
好夜はどうしてバレー部が子供達の読み聞かせになったのか疑問に思うと
「バレー部は女子の方が多いし声が大きいって理由でね」
それを聞いて好夜は確かに納得がいってしまった
確かに声を張り上げるスポーツは他にもあるがそのほとんどは男子が多めだ
しかしこの学校ではバレー部に関しては女子の方が多めなので
大きな声を出して読み聞かせをするにはもってこいなのだ
「まぁ頑張れよ・・・俺はやる事があるから見に行けないが・・・」
好夜は見に行けないがそれでも応援はしていると告げる
「やる事って・・・ああ・・・理解したわ・・・」
敬子は最初、そのやる事が何なのかと聞こうと思ったが
好夜の前に大量に積まれている宿題を見てそれが何なのかすぐに理解した
「全く・・・私達より宿題が多い癖に私達より遅いってダメじゃない?」
残っている宿題の数を見て敬子はどれだけ進んでいないのだとため息を吐いていた
敬子の言う通り慶太に出されている宿題は好夜達のものよりも圧倒的に多いので
今のままのペースでは最悪、終わらない可能性すら十分にありえた
「そんなわけで俺はこいつに手が離せないから頑張ってくれ」
自分の置かれた事情を説明した好夜は再度、敬子に頑張るようにエールを送る
「ありがとう!それじゃあまた後でね!」
そう言って敬子は手を振りながらその場を後にした
「・・・ん?また後でね?・・・ってことは終わったらこっちに来るのか・・・」
好夜は今の発言を聞いて読み聞かせが終わったら来るつもりなのだと悟った
「ようやく見つけた〜・・・やっぱり図書館は迷うな〜・・・ってどうした?」
そこへちょうどよく辞典を見つけた慶太が帰ってきて好夜に何かあったのかと尋ねる
「・・・お前・・・後で地獄が待ってるからな?」
「・・・えっ?何それスゲェ怖いんだけど・・・」
そして読み聞かせが終わった敬子が現れて
結果として慶太は二人の監視員の元、勉強に励むのだった
「マジで地獄じゃねぇぇぇぇぇかぁぁぁぁぁ?!!」
・・・図書館では静かにね・・・
果たして彼はお祭りに参加できるのだろうか?




