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夏の日はやっぱりそうめん

今回は晃平と明希音の話です

夏休みも後半に差し掛かった時、晃平はボランティアで流しそうめんを作る手伝いをしていた

「いやぁ〜!やっぱり若い男子は頼りになるね〜!

 この歳だともう重いもんを持つとギックリ腰になりそうだったからな」

晃平が手伝ってくれている姿を見て近所のおじさんが助かったと話していた

「そりゃあこんだけ大掛かりな物を作ろうとしていたら大変だと思いますよ」

何せこの流しそうめんは商店街を全て通れるように作ろうとなっており

そしてこの商店街は1キロ以上は距離があるのだった

そんな大掛かりな流しそうめんはそうそうあったものではないだろう

しかしこの商店街にとってはこれが自慢の一つでもあるので毎回やっているが

歳を追うごとに作るのが困難になっておりそれで今年は晃平が呼ばれたのだ

(まぁ・・・本当は好夜と慶太も誘ったんだが・・・断られてしまったからな・・・)

どうやらすでに二人も誘っていたらしいのだが好夜はバイト、慶太は宿題があるらしく

今日はさすがに無理だと言われて断られた後だった

しかし二人が来ないからと言って自分が行かないわけにもいかずこうして手伝っている

そしてもう一つ・・・晃平が手伝っている理由があった

「大丈夫ですか?ごめんなさいね?無理を言ってしまって」

そう言って晃平の後ろから話掛けてきたのは明希音の母親だった

実はこのイベントを考えたのは明希音の父親であり自分の父もそれを手伝っていたのだ

しかし父はこの島から出て行ってしまい

今はここいないのでその代わりを自分でしようと思ったのだ

「正直、晃平くんが来てくれて助かってはいるけど・・・そうまでして手伝わなくてもいいのよ?」

どうやら明希音の母は晃平が父親の代わりに来てくれているのだと理解しているらしく

そこまでして手伝ってくれなくてもいいと優しく言ってくれる

「いえ・・・別にそれだけで手伝っているわけじゃないですよ・・・

 俺の方でもちゃんとした理由がありますから・・・」

しかし晃平が手伝っているのには他にも自分なりの理由があったからのようだ



「でも問題はここからですね・・・

 今年は竹で仕掛けを作ってくれる職人さんが休みなんですよね?」

晃平の言う通り簡単な手伝いなら問題はなかったのだが今年はトラブルが発生してしまった

それはいつも楽しい仕掛けを作ってくれる職人が休んでしまったのだ

「そうなのよ・・・なんでも夏バテで入院してしまって一週間は安静にしてるようにって」

どうやらその職人は夏バテにやられて入院してしまったらしく

一週間は絶対安静と言われてしまった

「そうなると・・・俺達でどうにか今年の仕掛けを作っていくしかないですね・・・」

晃平は今回は自分達がその仕掛けを作る必要があると考えていたが

問題はどんな仕掛けを作るのかとどうやって作るかだった

「いつもは職人さんがここでみんなが持ってきた物を使って作ってくれているんだけど

 今回はみんなで作るんだし簡単なものにした方がいいかしら?」

いつもは職人が考えて仕掛けを作ってくれていたようで

今年はそんなに複雑なのは作れないだろうと諦めようと思っていたが

「いえ・・・今年もいつも通りの流しそうめんを作りましょう」

晃平はその派手な仕掛けこそがこの流しそうめんの売りなので

それをやめさせるわけにはいかないと今年もその仕掛けを作ろうと提案する

「でも今年は一から設計して作らないといけないのよ?

 私達、素人にそんな事ができるかしら?」

しかし明希音の母が言う通り素人に一から設計して仕掛けを作るのはかなり難しい

果たしてそんな事をできるのかどうかと不安に思っているようだが

晃平は無理だとは思っていないらしく商店街の人を集めて設計を始めた

「仕掛けな〜・・・去年は確か回る水車に上がるそうめんなんかあったな・・・」

どうやら去年は水車やエレベーターなどがあったらしく

晃平はそれを参考にしながら今年の作る仕掛けなどを考えていく

「・・・よし・・・決めた・・・!今年はこの仕掛けでいくぞ・・・!!」



早速、晃平は仕掛けを作る為に竹と工具を持ってきて作業を始める

「しかし・・・毎年この仕掛けを作っている職人はすごいな・・・」

自分で作って改めて感じた事なのだが毎年こんなのを作っている職人を尊敬し始める晃平

「ずいぶんと頑張ってますね?」

するとそこへ後ろから声を掛けてくる人がおり振り返ってみるとそこには明希音の姿があった

「どうした?そっちは今、料理の真っ最中だろ?」

どうやら明希音はおばさん達と一緒にみんなの料理を作ってくれていたらしく

そのはずなのにどうしてここにいるのか確認すると

「あちらの方はだいぶ終わってきたのでおばさま達に休憩をもらったんです」

明希音の話ではすでに下拵えは終わりあとは盛り付けるだけなので休憩をもらったらしい

「そうだったのか・・・てかそれなら俺よりも親父さんの方に行った方がいいんじゃないか?」

それを聞いた晃平は自分の方に来るより親父さんの方に行かないのか尋ねる

「・・・晃平くんって・・・たまにわざと聞いてませんか?」

明希音はその質問はわざとではないかと思っているが本人は至ってまともに聞いていた

(はぁ・・・晃平くんってたまに天然なんですよね・・・)

どうして明希音がこっちに来たのか・・・その理由は至って単純だ

頑張っている晃平の姿が見たかったからだ

それを見たいが為にこちらに来たというのに肝心の本人はそれに対してなんとも思っていなかった

明希音はそれを悔しいと思う反面、少しだけガッカリとしていた

「そういえば・・・お前はどんな仕掛けがあるといいと思う?」

すると晃平が明希音にもそうめんの仕掛けについて尋ねる

「う〜ん・・・やっぱり夏だし涼しい仕掛けを作って欲しいですね」

明希音は作るのなら夏にピッタリな涼しい仕掛けが欲しいと思っていた

「涼しい仕掛けか・・・ならやっぱり噴水とかか?」

それを聞いて晃平は作るのなら噴水とかなどがいいかと思っていた

「でもそんなの作れるんですか?さすがに晃平くん一人じゃ無理なんじゃ・・・」



「誰が一人だって?もちろん俺達だって手伝うに決まってるだろ!!」

そう言って二人の前には商店街のおじさん達が現れた

「・・・そりゃあ手伝ってくれるのはありがたいですけど・・・大丈夫なんですか?」

晃平は自分でやるのもかなり困難なのにさらに素人の彼らにできるか不安だった

「任せておけ!これでも長年この行事をやってきてるんだ!なんだってやってやる!!」

しかし彼らにも長年この行事に携わってきた意地があった

だからこそ今回たまたま来て手伝ってくれている晃平だけに任せるわけにはいかない

「・・・わかりました・・・それじゃあビシビシいくんでよろしくお願いします!」

それを聞いた晃平は大丈夫だと思い彼らをこき使う事を決めた

その後の作業は晃平の指揮の元、例年よりは遅いがそれでも確実に進んでいった

しかしやはり難関となる問題は存在してしまう

「・・・ここが最後の山場か・・・」

そう言って晃平が見ていたのは最大の目玉となるであろう回る噴水ゾーンだった

これは噴水を回転させて水を満たし中心の穴に流れ込むようにそうめんを流す仕組みなのだが

問題はその肝心の噴水だった

噴水はホースで繋いで水を出す仕掛けなのだが中の竹に関しては

どうやって回るようにすればいいのかと思っていた

水で満たすにしても最初は確かに回るようにはなるが噴水の水では足りなくて

いずれは中身がカラになってただ流れるだけになってしまう

それをどうにか出来ないかと試行錯誤するが中々にいいアイディアが浮かばなかった

「やっぱりホースを使って常に水を満杯にするしかないんじゃないか?」

おじさんの一人がホースで水を満杯にしようと提案するが

ホースはすでに噴水で使っているので残念ながら使えない

しかも他から回そうと思ってもその近くにある蛇口は一つしかないのだ

「それじゃあその仕掛けに入る前の水を増やすかい?」

するともう一人のおじさんが手前で水の量を増やす提案をするがそれではそうめんが崩れてしまう



「・・・やはり手詰まりかもしれないな・・・」

晃平はもうどうしようもないと思って諦めようとしていた時だった

「それならホースを複数の穴があるやつを使えばいいんじゃないですか?」

明希音が一本のホースでダメなら複数の穴があるホースを使えばいいと告げる

「いや・・・そんなもんないだろ・・・」

しかしそんな物がこの商店街にあるわけがないと晃平が思っていると

「儂のうちならそれあるぞ?」

一番お年寄りであるお爺さんが自分の家にならあると言っていた

「・・・本当ですか?」

まさかの急展開に思わず晃平は本当なのかと疑ってしまう

「儂の家は元々農家だったんじゃが跡継ぎがいなくて引退しての・・・

 その時に使っていたホースが残っておる・・・それを使えばええ・・・」

どうやらそのお爺さんは農家をやっていたらしくその時にホースを使えばいいと言っていた

それを聞いて晃平はようやく光明が見えてきたと思い喜んでいた

早速、晃平はお爺さんと一緒に家までホースを取りに向かった

「確かこの倉庫に置いたはずなんじゃが・・・一体どこにあるのかのう・・・」

二人は倉庫を漁って例のホースを探すのだが結構、薄暗くて見つからなかった

「あの〜・・・私もお手伝いしにきました」

そこへ明希音も現れて二人の手伝いをすると言って倉庫の中に入ってきた

「ああ・・・そこら辺は足元が危ないから気をつけておくれ」

するとお爺さんが足元に気をつけるように言うが

「キャァ?!」

どうやらすでに遅かったらしく明希音が足を取られて転ぼうとしていた

「・・・大丈夫か?」

間一髪そこに晃平が間に合い受け止める事が出来たのだが



「えっと・・・早く離してくれませんか?」

その体勢は俗に言うお姫様抱っこの状態になっていた

「・・・お前さんら・・・イチャつくのならここじゃない場所でやってくれんかのう?」

二人はそう言われて顔を真っ赤にしてしまう

その後、ようやくホースが見つかり流しそうめんは完成してイベントを始める事ができた

「・・・ずいぶんと楽しそうにやっているな・・・」

晃平は小さな子から大人まで楽しんでいる姿を見て大成功だと思っていた

「ありがとうございます・・・本当に手伝ってくれて・・・」

そんな晃平に明希音は改めてお礼を告げながら体を預ける

「・・・それが感謝している者に対する態度か?」

しかしそれはご褒美には程遠いと思い晃平は言うが

どうやら明希音は聞く気がないらしく仕方なく諦めて彼女が満足するまで付き合う事にした

夏の定番は流しそうめんかな?・・・見ないけど・・・

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