雨降る道で
今回は慶太と敬子のお話です
続く夏休みも特に何事もなくゆっくりと過ぎていきいよいよ後半となっていった
「・・・むしろ何もしてねぇ・・・!!」
しかしこの男・・・慶太にとっては絶賛大事件が起こっていた
その原因は至って単純・・・彼は宿題をこれまでやって来なかったのだ
「いっ一番最初にみんなに手伝ってもらってから全く進んでいないだと・・・?!
いや・・・!そんなはずはない!あれから少しは進んでいるはずだ!!」
どうやら慶太は現実を受け止める気がないらしく必死で目を逸らしていた
「どうでもいいから早くどこをやっていないのか開きなさいよ!」
すると慶太の後ろにいた敬子がとっとと宿題のプリントを見せるようにと蹴り飛ばす
「ウルセェ!結果が分かりきってるのに聞くんじゃねぇよ!!」
それに対して慶太は分かっているのに聞く必要はないと涙ながらに告げる
「あんたが宿題終わってないから手伝ってくれって言ったんじゃないの!!」
実は今回、夏休みが後半に差し掛かり自分の宿題を見て
このままでは不味いのではないかと感じた慶太が敬子に手伝いをお願いしたのだ
「全く・・・まさかあれから一ページも進んでないのはさすがに驚いたけど
あんたの事だからどうせ宿題絡みなのはすぐにわかったわよ」
どうやら敬子は連絡をもらった時におそらくは宿題の事なのだろうとすぐにわかったらしい
「なんか本当もう・・・面目ないです・・・」
これにはさすがの慶太も恥ずかしさと申し訳なさでいっぱいになったらしく
素直に謝って頭を下げる
「あんたがそこまでしおらしいとか相当ね・・・まぁいいわ・・・
私も今日は用事があるからそれまでには終わらせるわよ」
どうやら敬子はこの後に予定があるのにも関わらず来てくれたらしく
その用事の時間までにはそれなりに宿題を終わらせようと宣言する
「おう!俺だってたまには本気で出来るんだって証明してやるぜ!!」
「・・・んで?その本気がこれってわけ?」
実際に宿題を進めていくのは良かったのだが
あれから一時間とちょっとの時間が経ったが一枚も終わっていなかった
「しょうがねぇだろ?!もう何書いてるのか全然分からねぇんだよ!!」
どうやら慶太は問題文からすでに理解していないらしく
その後で解答を答えろと言われても何を書けばいいのか分らないのだ
「あんた・・・本当によく高校に受かったわね・・・」
それを聞いて敬子はどうしてこれが高校受験に成功したんだと不思議に思った
「まぁいいわ・・・とにかく私があんたの分かりやすいように問題文を書き換えてあげるから
あんたはそれを見てわかる問題からやっていきなさい」
しょうがないので敬子はこんなバカでもわかるように問題文を書き直し
それを見てわかる問題から先に片付ける作戦に出た
「おう!それなら俺でも余裕で解けそうだぜ!!」
そう言って修正された問題文を見てプリントの回答に向き直ったのだが
「・・・ダメだ・・・全然わからん・・・!!」
それからちゃんと正解を書けた問題は二桁にも満たない数だった
これにはさすがに敬子も呆れて何も言えなくなってしまう
「この前の晃平達との勉強で一体何をしていたのよ・・・」
確かに敬子の言う通りこれではまるでこの前の勉強会では
晃平達に勉強を教えてもらっていたのか答えを教えてもらっていたのかわかったものではない
「威張って言えた義理じゃないがほとんど答えを教えてもらった!!」
本当に威張れない事を彼は堂々と胸を張って宣言していた
「なんか私の方が頭が痛くなってきたわ・・・」
これにはさすがの敬子も頭が痛くなってきてしまう
「とにかくなんとかして宿題をできる方法を考えないとね・・・!」
そして敬子は何かを決心したのか目に炎を灯して燃えていた
(・・・なんだろう・・・ここから俺の地獄が始まりそう・・・)
それからさらに二時間が経ちちょうど夕日になってきた時だった
「・・・もう・・・無理・・・!」
そこには真っ白に燃え尽きた慶太の姿があった
「フゥ・・・これくらい終わればなんとか夏休み中には終わりそうね」
しかし敬子はそんなことを気にせず進捗状況を見て
これならば夏休み中に終わりそうだと思っていた
「・・・でもなんかこのセリフ前にも聞いた気がするわね・・・」
自分の言ったセリフに一抹の不安を抱えながらとりあえず気にする事をやめて帰る用意をする
「そういえばなんか用事があったんだっけか?悪かったな忙しい時に呼んで」
すると復活した慶太が珍しく敬子に忙しい時に来てくれてありがとうと言う
「別に用事って言っても新しく出来たレストランの招待券が今日までだったってだけよ
てかあんたが変な事言うと雨が降る・・・」
どうやら敬子の用事とはレストランの無料券を使う事だったらしく
その期限が今日までだったので行こうと思っていたようだ
そしてそのまま外に出ようと扉を開けると大雨が降っていた
「ほら見なさい!あんたが珍しい事言うからこんな事になっちゃったでしょうが!!」
それを見た敬子は珍しい事を言った慶太の所為だと怒り始める
「ちょっと待て!宿題を手伝った所為ならまだわかるが
なんで俺がお礼を言った所為で雨が降るんだよ?!」
これには慶太も理不尽だと抗議するが実際に降ってしまったので正直なんとも言えない
「はぁ〜・・・こんな事になるなって思ってなかったから傘なんて持ってきてないわよ・・・」
まさか雨が降るとは思っていなかったので傘なんて物を持ってきてなかった敬子は途方にくれる
「そんなもんうちのやつを勝手に持っていけよ?そこに俺のがあるだろ?」
すると慶太は自分家の傘を貸してやると言って自分の傘を差し出す
「それしかないわね・・・それじゃあ悪いけどあんたの借りるわよ」
そう言って敬子が借りた傘を開いた時だった
「・・・ねぇ?どこの世界に骨組みだけの傘があるの?」
まさかの布は破けており骨組みだけが展開されるというなんとも昔のギャグみたいになった
これにはさすがの敬子も呆れておりやった張本人を見てみると
全力で首ごと顔をそらして知らんぷりを決め込もうとしていた
「・・・で?どうしてくれんの?」
傘が壊れてしまっていた敬子はこの落とし前はどうするのだと確認する
「・・・はぁ・・・しょうがねぇな・・・お袋の傘でも使ってくれ」
すると慶太は母の傘を使うように言って傘を差し出す
「それじゃあ借りて行くわ・・・後でおば様にお礼を言っておいて」
敬子はその傘を受け取り慶太の母にお礼を言っておいてくれと告げ家を後にする
「あれ?敬子ちゃんもう帰ちゃったの?」
するとキッチンにいた慶太の母が現れて敬子が帰ったのかと確認してくる
「ああ・・・なんでもレストランの無料券を使ってくるんだってよ」
慶太は用事があったから帰ったのだと告げる
「あれ?ここにあった母さんの傘貸してあげたの?」
慶太の母は自分の傘がない事に気がついて貸したのかと確認する
「そうだけど・・・なんかあったのか?」
それを聞いて慶太は何か不味い事でもあったのかと確認すると
「実はあれ持ち手の部分が折れて今にも取れそうなのよね〜」
どうやらあの傘も壊れる寸前のものだったらしくそれを聞いた慶太はやはり親子かと思っていた
「はぁ〜・・・まさかこれも壊れるなんて・・・本当についてないわ・・・」
その頃、敬子は近くのお店の前で雨宿りをしていた
どうやら借りた傘の持ち手が完全に壊れて取れてしまったようだ
「てか後でおば様に謝らないとな〜・・・傘壊しちゃったし」
そう思いながらどこかに傘を変える場所はないかと探していた時だった
「よかった〜・・・近くにいてくれて助かったぜ」
「・・・慶太・・・」
そこいたのは傘を持っていた慶太の姿があったのだ
「悪いな・・・そっちの傘まで壊れててよ・・・最後の親父の傘やるからこれで許してくれ」
そう言って慶太は自分の持っていた傘を差し出そうとするが
「それが最後だって言うならあんたどうやって帰るのよ?濡れて風邪引くわよ?」
これを受け取ってしまったら慶太は確実に風邪を引くことになると思い
敬子は受け取らずに慶太に返そうとする
「そんな事言われたって俺は傘買うだけの金なんて持ってねぇぞ?」
しかし慶太は帰りに差す傘を買う為の財布を持ってきてはいなかった
「はぁ・・・しょうがないわね・・・だったら私の用事に付き合いなさい」
すると敬子は慶太の腕を掴んで一緒にレストランに行くように告げる
「おい?!俺の言ってた事聞いてたか?!俺は金持ってねぇんだぞ?!」
先ほど慶太は財布を持ってきておらず金はないのだと理解しているのか確認すると
「この無料券って2名様まで使えるのよ!本当なら家族て使いたかったけど
二人は旅行でいないから私だけでね・・・今回は特別にあんたを誘ってあげる」
どうやら無料券の店員は二人まで大丈夫らしく
家族の代わりに慶太を誘って行ってあげると敬子は言うが内心ではヒヤヒヤしていた
「本当か?!それって本当に無料なんだよな?!なんぼでも頼んでいいんだよな?!」
それを聞いた慶太はただでお腹いっぱいに食えると思い目をキラキラさせて喜ぶ
「あんた・・・本当に食い意地だけは張ってるわね・・・」
これには敬子の呆れた目で見てしまうのも仕方ないだろう
「当たり前だろ?!食べ盛りの男子を甘く見るなよ?!」
何を自慢しているのかわからないが慶太は食べ盛りの男子を舐めるなよと言う
「・・・お願いだから食べ過ぎないでよ?私は恥かきたくないんだから」
そう言っていた敬子の顔はとても嬉しそうに笑っていた
そしてそのまま二人は一緒にレストランに向かい一緒に晩御飯を食べるのだった
ちなみにそのレストランではあまりに慶太が食べ過ぎた所為で出禁になってしまい
敬子がそれに対して鉄拳制裁を加えたのはまた別の話である
雨の日・・・それは誰かと距離を縮めれる日かも?




