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唐突の終わり

この日が運命の一日となる

あれから月日は経ち季節は夏・・・

彼らの楽しみにしていた行事が目白押しになる季節が始まった



「おっしゃ!いよいよ始まったぜ!」

慶太はその夏の始まりを大いに喜んでいた

「・・・楽しそうだな」

しかし朝からのそのテンションには

さすがの好夜もついていけずげんなりとしていた

「当たり前だろ?!いよいよ夏が始まるんだぜ?!

 白い砂浜で出会う少女・・・その少女と結ばれ

 淡い夏のひと時を過ごす・・・

 これにテンションを上げずに

 何にテンションを上げればいいんだ?!!」

どうやら慶太には何やら熱い思いがあるらしいが

その熱意以外はあまり理解できなかった

「てかその前に対外試合があるのを忘れたのか?」

だが慶太の思いとは裏腹に今日の予定にあるのは

淡い恋の出会いではなく男同士の熱きぶつかり合いだった

「しまった・・・完全にそれを忘れてた・・・」

慶太は完全に計算違いだったと膝をついて落ち込んだ

「お〜いそんなところで落ち込んでたら

 通行人の邪魔になるぞ〜」

道路のど真ん中で落ち込んでいる慶太に対して

好夜は通行人の邪魔になると警告したのだが時すでに遅く



「ゴハァ?!」



「ああごめん気づかなかった」



「嘘こけぇい!

 道路のど真ん中にいて気づかないわけないだろうが!!」

慶太は踏んできた敬子の発言が嘘だと主張する

「わかってるならとっとと退きなさいよ」

しかし敬子は嘘だと暴露するどころか邪魔だとはっきり言った

「お〜ま〜え〜!それが踏んだ人間の言う台詞か?!

 せめてちゃんと謝らんかい!!」

慶太はまず踏んだことに対しての謝罪を求めると

「どうもすいませんでした〜」

全く気持ちの込もってない謝罪が返ってきた

「ムキ〜!!」

永遠に続きそうなこの喧嘩を好夜と晃平は無視して

学校へと向かっていくことにした



「全く・・・いつまであいつらはああしてるつもりなんだ?・・・」

好夜は後何年あのやり取りが続くのかと思って呆れていた

「お前もそう思わないか?」

と好夜は晃平に対して尋ねるが

「・・・・・」

肝心の晃平からの返事が返ってこなかった

「晃平?」

好夜が目の前に立ち再び晃平の名を呼ぶと

「ん?ああ何か言ったか?」

ようやく晃平も気づいたらしいが

先ほどの会話については何も聞いていなかったらしい

「どうしたんだ?今日のお前はらしくないぞ?」

好夜はどうにも様子がおかしいと思い大丈夫か心配する

「大丈夫だ・・・それよりも学校に急ぐぞ」

そう言って晃平は学校へと急いで向かう

「?」



そして放課後になりいよいよ三人は対外試合に望むことになった



「「「よろしくお願いします!!」」」

三人は挨拶を交わしいよいよ試合が始まったのだが

(まずいな・・・どうにも晃平の様子がおかしい)

今朝からの様子を引きずったまま晃平は試合に臨んでおり

所々でミスが見えていた

(仕方ねぇ!ここは俺がなんとかしてやる!)

好夜は自分一人でこの場を乗り切ろうと思い

単身で特攻を仕掛けるが

「なっ?!」

簡単にボールを奪われてしまい逆に得点されてしまった

その後も三人は目立った活躍はできず

この日は完全な敗北を味わうこととなった



「そっか〜・・・負けちゃったのか〜」

そしてみんなでの帰り道で好夜は今日の試合結果をみんなに話した

「まぁな〜・・・世界って広いんだって改めて思い知ったよ」

好夜は今日は悔しい思いもしたがいい経験だったと思っていた

「問題は・・・」

しかし好夜にはそれよりも気になっていることがあった

「本当にどうしたんだ?晃平」

それは今朝から様子のおかしい晃平だった

試合の最中もミスが目立っており

今も心ここにあらずという感じだった

「・・・みんな・・・聞いてくれ・・・」

そして晃平は何かを決心したらしくみんなを呼び止める






「俺・・・島を出て行くことになった」






「・・・マジ?・・・」

好夜は信じられないと言った顔をしていた

いや好夜だけではない今の話を聞いたみんなも同じ顔をしていた

「父さんの知り合いが都会の大学で研究をしているらしいんだが

 その研究に誘われたらしんだ・・・それで・・・」

どうやら晃平の父親が転勤になるらしく

それについていく形で島を出て行くことになったらしい

「そうだったのか・・・それでいつ出て行くんだ?」

好夜はその引越しがいつになるのか聞くと

「・・・来週だ・・・」



「来週って・・・それって神居祭も一緒に行けないってことかよ?!」

慶太はみんなで行く約束をしていた神居祭にも行けないのかと言っていた

「ああ・・・悪い・・・」

晃平はそれに対してただ謝るしかできなかった

しかしこれは晃平の所為ではない

ましてや父親の所為でもない

ただ運が悪かった・・・たったそれだけなのだ・・・

「そうか・・・なら今週中にでも送別会やらないとな!」

好夜はこの暗い雰囲気を変えるべく

晃平を送る送別会を今週中にやろうと宣言した

「・・・ありがとう・・・好夜・・・」






「・・・引越しか・・・寂しくなるな・・・」

帰り道で慶太は寂しくなると言いながら歩いていた

「・・・ねぇ・・・」

すると後ろから敬子が呼び止める

「あんたは出て行かないわよね?」

そして敬子からありえない事を質問された

「何言ってんだよ?そんなわけないだろ?」

慶太も何を言っているんだとまともに相手にはしていなかったが

「絶対よね?!本当に出て行かないのよね?!」

敬子の態度を見てその考えは変わった

「あんたまでいなくなったら・・・私・・・」

いつもあんなに強気な敬子のこんな姿を見てさすがの慶太も驚いていた

「・・・バァ〜カ!俺が島の外に出てやっていけるわけがねぇだろ?」

慶太は自分なりに安心させる言葉を探しやっと出てきたのがそれだった

さすがの慶太も失敗したかと思って不安になっていたが



「・・・ぷっ・・・あはははは!

 そうね!あんたが島の外に出て行けるわけなんてないか!」



「ちょっ?!お前!人がせっかく慰めようと思って言ったのに!」

慶太は必死でひねり出した言葉に対して笑われて怒るが

同時に敬子の不安が取り除けたことに対して安心していた

「ハァ〜・・・ありがとうね・・・」



「・・・おう・・・」






そして別の帰り道ではなぜか怒っている明希音と

その後ろを付いていく晃平の姿があった

「・・・いつまで怒ってるんだ?」

晃平はなんで怒っているのかわからずに尋ねると

「べっつに〜なんであんな大事な事を

 私には言ってくれなかったんだろうな〜とか思ってないよ〜」

どうやら明希音は今の今まで引越しの事を

黙っていた事に対して怒っていたようだ

「悪かったよ・・・急に決まった事だったから言う時間がなかったんだ」

引越しの話は晃平自身もつい最近聞いた事だったので

明希音にすら言っている暇はなかったと告げると

「・・・毎日メール・・・」



「何?」



「毎日メールしてくれるんだったら許してあげる」

明希音は毎日連絡してくれるのなら許してあげると言ってくれた

「もちろんするよ・・・毎日はできるかどうかわからんが・・・」

晃平は言われなくてもそれくらいはする宣言した

「うん!それじゃあ許す!」

そう言ってようやく明希音の機嫌は直り晃平は安心した






「島の外・・・か」

好夜は命と一緒に帰りながら何かを考えていた

「どうしたの?」

命もそれに気がついたらしくどうしたのか聞くと

「よし決めた!俺も島の外に出る!」






「えっ?」






「ずっと島の外には興味があったし良い機会かと思ってさ!

 晃平と一緒に世界を見てきてみたいんだ!」

好夜はこれをきっかけに世界を見に行こうと考えていたらしい

それに対して命の返事は・・・



「行ってらっしゃい」



笑顔で見送ることだった






いや・・・笑ってみせたのだ・・・



実際には命本人ですら笑えていたかどうかわかってはいなかった

それほどまでに命の心は困惑していたのだ

なぜなら本当は好夜に一緒にいて欲しいと思っているからだ

しかしもしそう言って好夜を引き止めてしまったらどうなるだろうか?

もしかしたら嫌われるのではないか?

そんな考えが命の頭をよぎった

好きな人に嫌われたくはない

そんなものは当たり前の考えだ

ではどうすればいいのか?

おそらくこの答えに正しい答えなどない

しかし結局はどちらかを答えなければならないのも事実だった

結果として命はただ笑顔で見送ることを決めた

自分に嘘をついて好きな人の意思を尊重したのだ



「おう!土産話楽しみにしてろよ!」



そして好夜のその笑顔と返事を聞いて命は安心した



(よかった・・・)








ちゃんと笑えていたんだ








そして時は過ぎて行きいよいよ二人の旅立ちの日となった



「まさかあんたまで出て行くとは思ってなかったわ」

敬子は見送られる方に

好夜がいるとは思ってなかったと呆れた表情で言った

「悪かったよ!思いついちゃったんだからしょうがないだろ?!」

好夜もさすがにこればっかりは

思いつきだからしょうがないと思っていたらしい

「一番驚いたのは俺なんだが?」

しかしこの中で一番驚いていたのは晃平だった

それもそうだろう

つい最近自身の送別会をしたのに

その中の一人ついてくると聞かされたら誰だって驚く

「それに関してはマジごめん」

さすがの好夜もそれは悪いと思っているらしく素直に謝った



「・・・それにしても・・・命遅いわね?」

みんなが見送りに来ている中で命だけがまだその場にはいなかった

「そうだな〜もうすぐ出航しちまうぞ?」

しかも出航の時刻が迫ってきていた

「みんな・・・!お待たせ・・・!」

するとギリギリでようやく命が到着した

「遅いわよ命!」

敬子は遅れたことに対して怒っていたが

命はそれを無視して一目散に好夜の方へと向かった

「好夜くん・・・これ・・・」

そして命は好夜にとミサンガをプレゼントしてくれた

どうやらこのプレゼントを用意していたから遅れたようだ

「おぉ〜!ありがとう!大事にするよ!」

好夜は大喜びして早速そのミサンガを腕につける

船の出航時間となったらしく船員さんが呼んでいた

「それじゃあ行ってくるよ!」

そしてそのまま二人は船へと乗り込んでいく

四人はそれを見送っていると

船がゆっくりと動き出し港から離れていく

「・・・・・!」



「命?!」



すると命が急に船を追いかけて走り始めた

とても追いつけるわけがなどなかったが

それでも・・・命には伝えたい言葉があった






「好夜くん!私待ってるから!いつまでも待ってるからぁぁぁ!!」






もちろんその言葉は遠く離れてしまった好夜に届くはずもなかった






・・・だが・・・






「必ず帰ってくるからなぁぁぁぁぁ!!」






・・・その言葉も命には届かない・・・






しかし・・・それでも・・・彼らは言いたかった・・・






言わずには・・・いられなかった・・・






「待ってるよ・・・ずっと・・・!」

再び戻ってくると言った好夜

ずっと待っていると言った命


二人の恋は果たしてどうなっていくのだろうか?

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