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力と技

今回で好夜の大会も最後です

その後もサーブを決めてどうにか同点に並んだ好夜ではあるがむしろ勝負はここからだと言っても良いだろう

宮園はどうにかして好夜の体力を奪っていき逆に好夜は自分の体力が尽きる前にブレイクを奪わなくてはいけない

ここからはまさに勝負を決めるための準備期間でありここの展開次第で勝負が決まると言っても過言ではない

最初に動きを見せたのは宮園であり先ほど考えていた通り、サーブをわざと取らせてラリーを行う事にした

好夜はもちろんこれがわざとだと言う事は分かっていたがそれでもラリー勝負に乗るしかなかった

何故ならばこれは自分にとって願ってもない状況であり何よりもブレイクを狙えるチャンスが跳ね上がる

問題はそれを確実に狙わなくてはいけないという事であり好夜はそのチャンスを見極める必要があった

(おそらくあの宮園の事だ・・・俺がジャックナイフでブレイクを狙っている事は分かっているはず・・・

 それでもラリー勝負を挑んで来るって事は間違いなく宮園にも何かしらの勝算があるって事だよな・・・

 それが何か分からない現状じゃいくら攻めたとしても点を取り返される可能性は十分にある・・・けど!)

向こうの狙いが分かった上で好夜は敢えてジャックナイフを打つと宮園は驚いている様子であり反応が少し遅れた

それにより万全な状態でジャックナイフを受け止める事が出来ずラケットを弾かれて点を決められてしまう

(・・・驚いたな・・・まさか僕が何かを隠している事が分かっている上でジャックナイフを打ってくるなんて・・・

 もしかして僕がそうやって迷っている時間が一番の狙いだって事が気づかれたのかな?本当に好夜君は凄いな)

実は宮園の狙いは好夜がジャックナイフを打つ事ではなくその手前段階で迷ってしまうであろう時間の方だった

迷う時間が長ければ長いほどラリーで体力は奪われていき後半の試合が有利になっていくと宮園は考えていたのだが

それを知ってか知らずか好夜は迷うであろう時間を数秒で終わらせてしまい宮園の狙いを完全に外してきた

本来ならば悔しがらなくてはいけない部分ではあろうがむしろ宮園は嬉しそうに笑みを浮かべながら好夜を見る

それほどまでに自分と対等に戦えるような選手はおらず改めて好夜には全力を出していいのだと理解する

それが分かったからこそ宮園は嬉しく思っておりおそらくは自身も初めてになる全力を出す事が出来ると考えていた

その笑顔を見て好夜はまだ勝負が決まったわけではない事を理解し改めて気合を入れ直してラケットを握る

再び宮園のサーブから始まりラリー戦になると今度は宮園から動き出したのだがその動きは明らかにこれまでと違った

これまでは左右にラケットを振る構えを取っていたのに今の宮園はまるでボールを打ち上げるような構えをしていた

(これまでの宮園の構え方とは明らかに違う!?まさか・・・例のアレを既に習得していたと言うのか!?)

それに一番最初に気がついたのは宮園と長年、勝負を繰り返してきた車でありそんな彼ですらも驚愕していた

そしてそれはすぐさま観客達全員へと変わる事になるのは不思議な構えから出る宮園の打球を見た後だった



「・・・バギーウィップ・・・!プロが使うような打法をここで使うのかよ・・・!勘弁してくれよな・・・!」



「これくらいはしないと君は勝てないと思ったからね・・・ここからが僕らに取って本当の勝負だ・・・!」



そこから二人の戦いは苛烈を極める事になるなんと試合で初めてのデュースにまでもつれ込む事になった

しかし追い込まれているのはどちらかと言うのならば好夜の方でありその理由は先ほどの宮園が使った打法だった

(バギーウィップは基本的に相手のタイミングを外して時間を作る為の打法・・・!そして何よりも俺の弱点・・・!

 ジャックナイフは力を込めなくちゃいけない分、タイミングが重要なのにあの打法でそれが外される・・・!)

ジャックナイフは高い打点の球に対してジャンプし力を込める事で初めて打てるショットでありタイミングが重要

それに対して宮園の使うバギーウィップは相手の頭上にボールを上げて急降下させるようなショットになるので

恐ろしいほどにタイミングを外される事になってしまいこれに合わせるのは流石の好夜でも不可能だった

つまり車の時のようなパワープレイが出来ず完全にゲームの主導権を宮園に握られてしまっていると言う事だ

(だけどバギーウィップには一つだけ弱点がある・・・それは分かっていれば取れるという事・・・!

 問題はそれだけじゃ結局は宮園の牙城を崩せないという事・・・俺の体力の方が奪われていくって事か・・・!)

そう・・・確かにバギーウィップは返せないほどの球ではないのだが問題はそれを素直に返してしまう事

それは同時に宮園の狙いである耐久勝負に持ち込んでしまうという事でもあり相手の思う壺というわけだ

しかしそれ以外に選択肢はなく後はそのラリーの中で宮園を打ち崩す為の策を思いつけるかどうかが勝負の鍵を握る

それは宮園にも言える事であり彼の場合は出来るだけ好夜にポイントを取られずゲームをキープしなくてはいけない

一見すればそれは簡単そうに見えるが実際はとても大変な事でありラリーを続ければそれだけミスも増える

そして対戦相手である好夜はそんなミスを見逃すような男ではなく一瞬の油断すらも命取りになってしまうのだ

(まぁだからこそ面白いって気持ちの方が強いんだけどね・・・!さぁ・・・好夜君・・・!どうやって攻略する?)

宮園はとても嬉しそうな顔をしながらこれから好夜がどんな風に自分の有利なゲームを打ち崩すのかワクワクしていた

そんな二人の様子が観客達にも伝わっているのか全員が息を呑んでおり全ての神経が試合に集中していた

その中でも特に試合を集中して見ていたのは命であり特に長い付き合いがあるからこそ好夜がピンチだと感じていた

だが試合に出ていない自分は何もしてあげる事は出来ないしそもそも何かしてあげられるほどテニスを知らない

今の命に出来るのはただただ好夜が勝つ事を祈るしかなく、それこそこれまで努力してきた好夜を信じるしかなかった

(・・・試合もいよいよ佳境だな・・・ここで好夜がブレイクを奪うかそれとも宮園がゲームを守り切るか・・・

 ここで勝負が決まると考えていいだろうな・・・これで取れるのはワンゲームだけだが・・・二人にとっては違う

 この勝負を決める鍵を握る事になるんだからな・・・だからこそ・・・ここからはどちらも必死になる・・・!)

車の言う通りここからは二人とも死に物狂いとなりまさしく過去に見ない長いワンゲームの取り合いが始まった



もうデュースになって既に三十分が経過しようとしており好夜もなかなかに打ち崩せずに焦りを見せていた

(不味いな・・・!全くと言っていいほど打ち崩す未来が見えない・・・!ミスってくれれば良いとも思ったが

 今の宮園は半端じゃない・・・!おそらくあの状態でミスするようなヘマはしない・・・やっぱり自分で・・・!)

好夜はどうにかして打ち崩そうと考えるがやはり宮園の方が上手くどこに返しても簡単に拾われてしまう

しかもその返ってくる打球は全てが際どいコースであり取れるかどうかもギリギリのコースに返ってくる

それ以外のコースに関しての基本的にはバギーウィップで返してきておりジャックナイフを使わせてもらえない

流石の好夜もこれまでかと諦めそうになっていたがそれでも何かしらの爪痕は残したいと考えながら勝負していた

その中でも先ほどから試している事はあるのだがやはり上手くはいかないようでポイントを死守するので精一杯だった

もう時間的にも厳しいと考えている中で好夜は再び命の方を見ると泣きそうな顔をしながらこちらを応援していた

好夜はその姿に少しだけ罪悪感を覚えながら勇気をもらいおそらくは最後になるであろう反撃をする事にした

これまでと同じようなラリー戦ではあったがここでなんと好夜が宮園すらも驚いてしまう行動に出たのだ

(なっ!?これは明らかに宮園のバギーウィップを狙ったコース!?まさか勝負を捨てたと言うのか!?好夜!!)

(・・・いや・・・彼の事だ・・・おそらくは何かしらの策があって狙っている・・・なら見せてもらうか!)

狙われていると分かっていながら宮園は敢えて好夜が狙っているバギーウィップを使って打ち返してみせた

すると好夜もこれが宮園からの挑戦状だと理解したようだがそれでも関係ないと言わんばかりにあの体勢を取る

「こいつが取れるもんなら・・・とってみやがれ!!」

なんと好夜は先ほどまでタイミングを合わせられなかったバギーウィップに対してジャックナイフを合わせてきた

これには宮園だけではなく観客達も驚いていたがすぐに冷静さを取り戻した宮園はジャックナイフを受け止める

しかしこれまで受け止めてきたどのショットよりも協力で受け止めたラケットは簡単に弾かれてしまう

これにより初めて好夜は宮園のサービスゲームでブレイクを奪い勝負は彼に傾いたかのように見えたが実際は違う

(・・・勝負あったな・・・おそらくはあれば好夜にとって全力で放てる最後のショット・・・体力の限界だ)

観戦していた車も分かってしまうほどに好夜の体力は消費されておりもはやこの勝負は完全に決まってしまった

当初の予定通り宮園が見事に好夜の体力を奪いきり続く好夜のサービスゲームで見事にブレイクを奪い返した

その後の試合展開も宮園の方が少しだけ上手の展開となりそのまま好夜はゲームを取れなくなり敗北してしまった

「やっぱりあの時に体力を奪われてたのはキツかったな・・・来年にまたリベンジさせてもらう・・・覚悟しろよ?」

「僕も次はもっと強くなっておかないといけないって確信したよ・・・また来年も勝負しよう・・・最後のね」



こうして好夜の大会は幕を閉じ結果として全国大会には行けなかったが同時にそれは新しい目標になった

そう・・・宮園を倒して全国大会に出るという来年もテニスを続ける目標へと・・・

次回でいよいよ大会編は終了です

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