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立ちはだかるは巨壁

サッカー部、最終決戦!

休憩が終わりそれぞれ後半戦の守備位置に着く慶太達は試合が始まった瞬間、謎のプレッシャーに襲われる事になった

その正体は他でもない後半から入った和苦無から発せられているものであり思わず慶太達は冷や汗をかいてしまう

(マジかよ・・・!これまで色んな相手と戦ってきたと思ったけどここまでのプレッシャーは初めてだ・・・!

 これが向こうの守護神・・・あんな奴からそんな簡単に点は取れねぇ・・・一点を守るしかないか・・・!?)

あまりのプレッシャーに珍しく慶太が弱気になっており攻撃を捨てて一点を守るしかないと考えてしまうほど

しかしその考えが逆に自分達のピンチを招く事になるとはこの時の慶太はまだ気づいてはいなかった

そのままホイッスルが鳴り響き後半戦が始まると同時にボールは相手のエースに任されると先ほどとは逆に

今度は相手のエースがパスワークを駆使しながら凄まじい勢いでピッチの中盤を制しそのままゴール前まで向かう

なんとかゴール手前で追いついた慶太はそのまま相手のエースからボールを奪おうとするがパスで躱されてしまう

やはりというべきなのか相手の選手は一人一人が強いのでどうしても全体的に攻められたら遅れをとってしまう

だからこそ慶太を前に出して中盤で戦えるようにしていたのだが今回は守りを優先した為にそれが出来なかった

そうこうしている内にもう既に向こうはゴール手前までやって来ており今まさにシュートを撃とうとしていた

もちろんそんな簡単に入れさせるわけにはいかないとシュートコースを防ぐがそれは相手のフェイントだった

ボールはゴールへは向かわず隣にいた選手へとパスされてしまいフェイントに釣られた彼らは追いつく事が出来ず

結果、あんなにも慶太が頑張って取った一点を簡単に返されてしまい同時に慶太達はようやく彼らの実力を理解した

(明らかに前半とは訳が違う・・・!これが全国クラスの実力ってわけかよ・・・!去年の決勝とは別格・・・

 いやそれだけじゃねぇ・・・!俺達は攻撃だけでやられたがまだ相手には守備の切り札が残されている・・・!)

そう・・・慶太達は攻撃で遅れを取ってしまう結果になってしまったがそれはまだほんの一部の力でしかない

何故ならばまだ彼らには最強の守護神である和苦無が控えており慶太はそんな彼とまだ対戦していなかったからだ

しかし先ほどの攻防で既に相手の実力は分かっていたからこそ和苦無がそんなに甘い相手ではない事も分かっていた

問題はそれがどれほどまでの相手なのかという事であり慶太は好夜以外で初めて勝てない相手が現れたと思っていた

だがまだ戦っていないのでそんな事はないはずだと自分の心に言い聞かせて再び気合を入れ直して集中する

(へぇ?あれだけの実力差を見せつけられてまだ心は折れてねぇのか・・・まぁそうじゃないと俺が楽しめないからな

 それじゃあ楽しませてもらうぜ?お前がどれほどの実力を持っているのか・・・熱くなれるかどうかをな・・・!)

慶太の気合を入れ直す姿を見て和苦無はどうやらまだ自分が楽しむ事が出来そうだと考えており笑みを浮かべる

まさに熾烈を極める戦いとなってきており会場も大盛り上がりの中、そんな会場に急いで向かう者が一人いた



「はぁ・・・まさかあんなに検診が長くなるとは思ってなかった・・・しょうがないと言えばしょうがないんだけど」

先ほどまで敬子は試合で負った怪我の具合を見てもらう為に病院に行っており会場に来るのが遅れてしまった

それと同時に会場に入るかどうか悩んでいる自分がおりその理由は他でもない慶太が嫌がるかもしれないと思ったから

彼の事だから自分が努力している姿など絶対、知り合いに見られたくないはずだと敬子は考えていたのだが

それほどやはり昨日の事を見ていたからこそ少しだけ不安に思っており気がつけばこうして会場に来ていた

会場の外でどうしようかと悩んでいると何やら中からとんでもない歓声が聞こえてきて敬子は意を決して中に入る

観客席までやってきた敬子は試合の様子がどうなっているのかを確認するとどうやら同点だという事が分かった

その得点ボードを見て少しだけ安心していたのだが実際に今の状況を見てその考えはすぐに変わる事となってしまった

そこには必死に攻めている慶太達の姿がありその度に分厚い守りに阻まれて中々、中盤を超える事が出来ず

それでもどうにか中盤を超えてゴール手前までやってくる慶太だったがそこで放った渾身のシュートを止められる

実はあの一点を取られて以降、こんな展開が続いており部長達がどうにか反撃を食い止めてはいるのだが

もはや破られるのは時間の問題でありその前に一点を取って欲しいのだが現状、今の慶太でそれは不可能だろう

それほどまでに慶太の動きやシュートコースは和苦無に見切られており観客を含めた全員がゴールを想像出来なかった

そしてそれを一番、感じているのはおそらくシュートを撃っている慶太本人でありその表情はとても厳しかった

長年、彼の事を見てきた敬子からしてみてもその表情があまり見た事がなく本当にピンチなのだと理解していた

(・・・アイツのあんな表情・・・久しぶりに見た・・・多分だけどあの表情は初めて好夜と勝負した時だけ・・・

 つまりあのゴールキーパーは慶太にとってそれだけの相手って事なんだ・・・でもだからって・・・)

苦しそうな顔をしている慶太の姿を見て敬子も思わず握っていた拳に力が入ってしまうほど感情が込み上げてきた

しかし試合に出ていない自分がそんな偉そうな事を言うわけにはいかないと今は大人しく試合を見る事を決めた

とりあえずは落ち着ける場所を探そうと考えていると生徒会の仕事で来ていた千鶴の姿を見つけて彼女の元に向かう

敬子の姿を見つけた千鶴は驚いている様子だったが歓声が聞こえてきてすぐにピッチの方へと視線を切り替える

「あ〜・・・また止められちゃった・・・これで五回目・・・やっぱり瑞樹先輩の動きが見切られてる・・・」

「五回・・・アイツそんなに止められてるんだ・・・でもきっとこれくらいで終わるようなアイツじゃないわよ・・・

 だってアイツが好夜に勝負を挑んでその度に思い知らされて・・・その度に諦めず立ち上がってきた・・・!

 それに比べたら五回シュートを止められたのなんて苦でもないわよ・・・だから・・・だから・・・!」

大人しく見ていようと先ほどまで決めていたはずなのに敬子はもう我慢が出来ずそのまま慶太に向かって叫んだ



「そんなに下向いてるんじゃないわよ!!アンタなんていつもみたいに馬鹿みたいにはしゃいでればいいのよ!!」



「!?アイツなんで・・・別に下なんて向いてねぇ!いいからお前は黙って俺の華麗なプレーをそこで見てろ!!」

慶太はどうして敬子がいるのだと一瞬だけ驚いた様子だったがどうしてか彼女の姿を見た瞬間、笑みが浮かんだ

そしていつものように喧嘩腰で彼女の言葉に対して返し見ていろと言わんばかりにその目には闘志が戻っていた

「・・・はっ!女にケツを叩かれて目でも覚めたってのか?だがそれくらいじゃ俺は抜けねぇぜ?どうすんだよ?」

「・・・安心しろよ。確かにお前は強いし時間もそこまで残ってねぇ・・・でもアイツに大口叩いちまったからな

 ここで退いたらまた口うるさく言われるに決まってる・・・だからお前からゴールを奪ってやるよ・・・!」

完全に息を吹き返した慶太はいつもの調子を取り戻し尚且つ、先ほどまで勝てないと思っていた和苦無に怯えていない

その目を見て先ほどまで少しがっかりしていた和苦無だったがどうやらまだ楽しみは残っているようだと思っていた

しかしだからこそ慶太の持っている致命的とも言える弱点を残念に思っており慶太の実力に見切りをつけていた

そんな彼らを中心に試合はいよいよ終盤へと差し掛かったのだがそこからの慶太はまさに圧巻の一言だった

先ほどまでの彼が嘘のように中盤であろうともボールを奪われずどんなにキツイマークでも戦っていた

これには向こうのエースも驚きを隠せない様子で本当に先ほどまで自分達が対峙していた男と同じなのかと思っていた

だがそれでもやはり慶太だけであの中盤の守備を超えるのは難しく時間だけが刻一刻と進んでいき

いよいよロスタイムへと突入しようとしていたがその瞬間、部長達も覚悟を決めて最後の攻撃に参加する

手数が増えた事により流石に向こうも守備が崩れ始めてきており慶太はその隙をぬって中盤を乗り越える

そしてゴール前まで走っていくが問題はそこからであり最後には最強の守護神である和苦無が控えていた

しかも彼には慶太の弱点がバレており絶対にゴールを決めさせないという自信があったからこそ落ち着いていた

(アイツは基本的に同じ方向からしか攻めてこないからな・・・来る方向さえ分かっていれば問題はない・・・

 そのはずなのになんだかこの違和感は・・・?さっきまでと攻撃のリズムが明らかに違う・・・まさか!?)

和苦無は慶太の違和感に気がついたのだが既に遅く彼はゴール前まで来ておりディフェンダーがコースを塞ぐ

すると慶太はまるで振り切るかのように先ほどとは違うコースから攻めていき和苦無の読みを完全に外してきた

どうにか反射神経で反応する和苦無であったが何度も慶太のシュートを止めてきた彼は既に理解していた

(・・・流石にこのタイミングじゃアイツのシュートを止められないか・・・最後の最後でしてやられたな・・・)

こうして慶太から放たれた渾身のシュートは完璧なまでのコースで見事にゴールの端を捉えネットに突き刺さった

それと同時に審判のホイッスルが鳴り響き試合は終了、誰しもが状況を飲み込めずゴールを決めた慶太も立ち止まる

しかしそのすぐ後で得点ボードを確認しそこには自分の決めた一点が入っていて自分達が勝った事を証明していた



「・・・勝った・・・?っウオッシャァァァアア!!」



ようやく勝利を理解した慶太達はピッチの上で涙を流しながら大喜びするのだった

サッカー部、悲願の全国出場!

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