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高みへの挑戦

年越しまで色々とやる事が出来てしまったので

今年の投稿はこれで最後になります

今日は野球部の準決勝が行われる事になっており既にウォームアップの時から気合いの入った様子の晃平達

そんな中で最も気合が入っているのはこの準決勝から先発へと戻った伊勢谷でありここからは彼の挑戦でもある

(決勝戦・・・おそらくそれまでには肩を仕上げておきたいんだろうな・・・そうでなければ・・・)

村上が率いているチームに勝つ事は出来ない・・・それを伊勢谷は本能的に理解しているのだろう

それは晃平も同じでありだからこそ色々なシミュレーションしているのだがそれでも不安は残っている

何故ならば村上の生きた球を受けるのは一年振りであり更に言うのならばその一年で球速もキレも上がっているはず

それを考えればおそらく晃平の頭の中で予測しているような球なんて軽く超えてくるであろう事は分かりきっていた

それでもするのとしていないのとでは大きく結果は異なってくるはずであり晃平は自分の努力を信じていた

(・・・とにかく今はこの準決勝を勝たないとな・・・伊勢谷の調子的に問題はないだろうが・・・

 それでも何が起こるか・・・それが分からないのが試合だ・・・気を抜く訳にはいかない・・・!)

晃平はこれから来るであろう決勝戦よりも今は目の前の相手に集中しなければならないと考え気持ちを切り替える

選手達もそれは同じであり試合が始まる頃には気持ちが切り替わっており試合が始まる前とは目の色が違っていた

そして試合が始まるとこれまでの試合が嘘だったかのようなプレーをしており相手は驚きを隠せなかった

(バカな・・・!てっきりエースが不調になったから交代していたのだと思っていたのに・・・!

 明らかに大会が始まった時よりも球速もキレも上がっている・・・!村上以外にもこんな怪物が居たのか・・・!)

「・・・向こうの監督はこっちの変わりように驚いてるみたいだな・・・まぁそれは俺も同じだけどな・・・

 まさか肩を作る為のトレーニングでここまでの結果を出すとは・・・これなら本当に勝負になるかもな・・・」

伊勢谷の成長振りを見て監督はこれまでの練習は決して無駄ではなかったと喜んでおり決勝戦も戦えると判断していた

それでもちゃんと勝てるかどうかに関しては結局のところ、やってみなければ分からず最善を尽くすしか選択肢はない

だが監督は今の彼らならば勝敗は関係なく良い試合をしてくれるはずだと考えており喜んでもいた

それは自分が引退してしまった三年生の・・・いや・・・これまでの野球部の夢を叶えられるかもしれないから

(・・・優勝か・・・俺らが野球部に所属していた時には絶対に手が届かない夢だと思っていた事もあったな・・・

 実力がないって諦めて・・・でも野球は嫌いになれなくてこうしてズルズルと続けてきてしまったが・・・

 もしかしたら俺が野球をずっと続けていた理由はこの為にあったのかもしれないな・・・そうだろ?みんな・・・)

自分達がかつて夢にすらみなかった現実・・・それを晃平達は叶えられる場所へときており自分もそれに関わっている

かつて野球部に関わってきた者としてはこれほどまでに嬉しい事はなく思わず涙が出そうになるが必死に堪える



(こんなところで泣く訳にはいかない・・・泣くとしたら・・・その夢が現実になった時だ・・・!)



こうして無事に準決勝は大差をつけて終わりを迎えた晃平達だったがむしろここからが本番であり気持ちを引き締める

決勝戦はこんな簡単に勝てるような相手ではなくこれまで以上の苦難が降りかかって来る事は誰しもが理解していた

そしてその事を一番に理解しているのはエースである伊勢谷でありこの準決勝を無得点で抑えた彼だったが

それでもまだ足りないと感じているようでそれが何なのかを決勝戦までに知らなくてはいけないと考えていた

そんな中、部長である晃平はこのモチベーションのまま本当に決勝戦に望んてしまってよいのだろうかと心配していた

(何だか全員が決勝戦に対して不安を残しているって感じだな・・・これは流石に問題ではあるか・・・)

緊張感を持つ事は大切ではあるが彼らの場合はそれが度を越しておりもはや不安というレベルになっている

このままでは決勝戦が始まったとしても間違いなく精神的にはかなり不安定な状況になりミスが増えてしまう

だからこそ晃平はどうにかして落ち着かせなくてはいけないと考えるのだが問題はその方法であり

現状では何も思いつく事がなくどうすればいいのだろうと考えながら会場を後にしホテルまで帰ってきていた

するとそこには既に待ち構えていたかのように明希音達、ボランティアの姿がありしかも何かを持っていた

「お疲れ様!今日は決勝戦まで残った晃平君達に渡したいものがあって・・・はいこれ!必勝祈願!」

何と明希音達が持っていたのは必勝祈願のお守りでありしかも更に晃平達が驚いたのは全て手作りだった事だ

手芸部である明希音ならばそこまで驚く事ではないのだがボランティアのメンバーは手芸部だけではない

そんな彼らまでこんな手作りのお守りを作ってくれるとは思っておらず晃平は一体、どうしたのかと思っていると

明希音が晃平に渡すついでに近づいてきてどうしてこんなお守りを作る事になったのかを説明してくれた

「みんなもまさかここまで残る部活があるなんて思ってなかったみたいで・・・特に野球部は人も少なかったし

 監督とかもいなくて決勝戦に残るのは奇跡みたいだって・・・でもやっぱりみんな奇跡で終わらせたくないんです!

 だからこのお守りはみんなからの想いであると同時に夢を見せてくれている野球部への感謝の気持ちなんです」

どうやらボランティアの彼らにとっては今回の野球部の決勝進出はまさに奇跡とも言える偉業なのだが

同時にそれだけで終わってほしくないという思いも強くだからこそお守りという形で祈るを送る事にしたらしい

それを聞いて確かに晃平は負けないように努力をしてきたがここまで来れるとは思っておらず気持ちは一緒だった

そしてだからこそ彼らの期待に応えなくてはいけないと考えているようで彼らの想いを無駄にしたくはなかった

「・・・こりゃあ・・・俺達が不安になっているわけにはいかないよな・・・ありがとう、明希音」

「うん・・・私はこんな事しか出来ないけど・・・それでも晃平君達の力になれるのなら嬉しいよ」

野球部の全員はそのお守りを受け取ると何やら気持ちが引き締まった気持ちになり不安な心はなくなっていた



その夜、ミーティングを終えてそれなりの作戦を考えた野球部はそれぞれ決勝戦に向けた最後の夜を過ごしていく

そんな中で誰よりも平常心でいなくてはいけない晃平は気持ちを落ち着けようとグラウンドで素振りをしていた

するとそこへ好夜が姿を現し必死にバットを振っている晃平の姿を静かに見守っており逆に晃平から提案してきた

「・・・なぁ・・・悪いんだがそこで見ているくらいならボールを投げてくれないか?素振りだとやはりな・・・」

「そりゃあ別にいいけどよ・・・初心者の俺が投げた球なんて打ってたらそれこそ本番に響くんじゃないか?」

好夜としては特に断る理由などはなかった気になったのは自分が投げて晃平が調子を崩さないかだった

あくまでも好夜は初心者なのでおそらく投げる球は早かったとしてもおそらく威力やキレに関しては普通

もしかしたらそれこそ投手ではない選手達よりも悪いと言っても過言ではないかもしれない

それ故に本当に自分なんかを相手にしていいのかと晃平に告げるが彼は首を振ってそれを否定し好夜に告げる

「別に本格的な練習をしたいわけじゃないんだ・・・ただ・・・少しボールを見つめて気持ちを落ち着けたい・・・

 だからこそ投げる相手を必要としているだけだ・・・素人の好夜にそこまでの期待は最初からしていないし・・・

 むしろ俺のわがままに付き合ってもらおうとしているんだ・・・こっちとしては感謝したいくらいだ・・・」

その言葉を聞いて好夜は尚更、やらないわけにはいかないと思い晃平からグラブを借りて投げる構えを取る

最初は好夜がどれほどの球を投げるかを見る為に振らないでいようと思った晃平だったがそれは正解だった

素人ではあるがやはり好夜は運動神経が良いのでおそらくは並の選手達よりも早い球を投げてきた

しかし彼の事を長年知っている晃平からしてみればこれくらいはやってくれるだろうと最初から思っており

むしろ自分の想定していた通りの球を投げてくれた事に感謝しながら今度は打つ為に握る手に力を込める

その瞬間を見て好夜は完璧に打つつもりだと理解したようでそれでも加減はしないと全力でボールを投げる

すると晃平はまるで待っていましたと言わんばかりのフルスイングでそのボールを叩き上げてみせた

二人はそのボールを見上げながら何やらこれまでの事を思い出しているようで少しだけ懐かしい気持ちになった

「・・・そういえば俺達にとってはあの交流試合が最後になったんだったな・・・中学生の部活は・・・」

「・・・ああ・・・その後、俺とお前は島の外に出て行って・・・それぞれ色んな景色を見てきた・・・

 でも今は・・・こうして戻ってきてみんなと一緒に日々を過ごしてる・・・そして今は新しい仲間を得て・・・

 ライバル達と切磋琢磨し・・・激しい激闘を経て・・・優勝を目指そうとしてる・・・不思議なもんだよな?」

そう・・・思えばこの二人は六人の幼馴染の中で島を出てしまい中学の大会には出場していなかった

だからこそ部活の大会は去年が初めてでありそして・・・今年は新しい仲間を得てここまでやってきた



「・・・正直・・・後悔した事はないか?あの三年間・・・もしかしたらもっと別の事に使えたんじゃないかって」



「・・・後悔がないって言えば嘘になるだろうな・・・俺だって命やお前らと一緒に日々を過ごしたかったし・・・

 でも・・・だからと言ってあの三年間を無駄だとも思えねぇよ・・・だって・・・それがあるからこそ

 俺達はこうして新しい仲間にライバル・・・色んな出会いを得る事が出来たんだろ?無駄なんて・・・言えねぇよ」

次回はいよいよ野球部、決勝戦!

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