それぞれの挑戦
今回は終盤に向けたみんなの意気込みを書いています
いよいよ大会も残りの試合が少なくなって来ておりほとんどのところは準々決勝を迎えていた
これに勝利すればベスト4は確定であり全国への道も見えてくるのだがここが一番、苦戦を強いられる
実際に好夜達の学校もこの準々決勝で負けてしまった部活はほとんどであり残っているのは四つだけ
その四つとは他でもない好夜のテニス部、晃平の野球部、慶太のサッカー部、敬子のバレー部だった
しかしこの四つの部活でも過去に準決勝、そして決勝を超えて全国に行けたのは前生徒会長と前バレー部の二つだけ
まさにここからは学校の歴史を覆す為の勝負になると言っても過言ではないと言う訳だった
「・・・正直、ここまで順調だったから優勝も夢じゃないかと思ったんですけど・・・そこは甘くないんですね」
「そりゃあ大会だしね・・・ここからは全国の切符が見えて来たのもあってみんなの気合いが変わってくるもの
それはもちろん相手も同じだし・・・もしかしたら練習以上の力を出してる可能性もあるかもしれないね」
初めて生徒会の一員として部活の手伝いをしていた真司からしてみれば少し複雑な気持ちがあった
ここまで色々な部活が勝ち上がってきて本当に全国へ行けるのではないかと期待していたからこそ
ほとんどの部活が負けてしまいそれに対して悔しがり涙を流す部員達の姿を見て真司も悲しい気持ちになっていた
それに対して明希音は相手もそれだけ全国へ本気になっているという事であり気合の現れだと告げる
後はその気合いでどれだけの力を出せるかの勝負であり負けてしまった部員達は残念ながら届く事はなかった
勝負の世界では必ず勝者と敗者が存在すると言う絶対のルールは変える事は出来ずそれを無くす事は出来ない
それこそ悔いが残る事もあるだろうがそれでもここまでの道のりが全て無駄だったという人は誰一人としていないはず
「・・・全国へ挑戦出来る可能性があるのは残り四つ・・・しかも全部が強敵を相手にする事になるんですね・・・」
「ええ・・・そして私達、生徒会にボランティアで集まってくれた生徒達もここかがら正念場です・・・!
試合で何もしてあげられない分・・・それ以外で少しでも大会に集中してもらえるよう支えてあげましょう!」
足立の言う通りここからはまさしく生徒会とボランティアも正念場でありこれまで以上に活躍しなくてはいけない
それが選手達がどれだけ試合に対し集中出来るかどうかを決める事になり勝利の鍵を握るかもしれないのだ
真司達は自分達がどれだけ大変な役目を担ってるのかを理解したようで緊張した面持ちの中、大きな返事を返す
それを聞いて足立は今年の役員達もとても真面目で部員達に寄り添える優しさもある事に安心していた
何故ならば今年の大会は各部活の三年生と同様に足立にとっても最後の生徒会としての手伝いとなるからだ
だからこそ自分が居なくなった後の事を心配する事もあったのだが彼らの表情を見てそれはなくなった
きっとこれからは彼らが命や剣也を支えて生徒会を回してくれるのだと考えながら足立は作業へと戻っていく
一方その頃、残っている四つの部活では次の準決勝に向けて念入りに作戦会議をしており
特に野球部はこれまで万全な状態で決勝戦を迎える為に伊勢谷を温存していたがもうその必要はないと話していた
「前の試合ではかなり点を取られたからな・・・点の取り合いで勝てたのはみんなのバッティング力は向上してるから
だが・・・正直、あの村上から点が取れるかって言われたら・・・厳しいと言う他ないだろうな・・・」
監督からしてみてもチームのバッティング力はかなり向上しており並の高校との打ち合いなら負けないと思っているが
準決勝からはここまでの試合を勝ち上がってきた強敵であり決勝では甲子園に出場した事のある村上達が出てくる
そんな状況下でチームのエースである伊勢谷を温存しておく理由などなく次からは先発で使う事を宣言する
問題は今の彼が果たしてどれ程までに肩を作れているかでありそれ次第で決勝戦も内容も変わってくる
そしてその本人もそれを自覚しているからなのかミーティングには参加しておらずグラウンドで投球練習をしていた
(・・・でもまぁ・・・これに関してはアイツ自身が本番までになんとかしてくれるだろ・・・後は作戦か・・・)
監督は勝つ為に必要な残りのものは作戦でありそれだけは他でもない自分がやらなくてはいけない事だと考える
もちろんここに来るまで残っている高校全ての資料や映像を見せてもらい色々な対策を考えてはきたが
それでも確実に勝利出来るという保証はどこにもなく更に言うのならば絶対にうまくいく保証もなかった
(何せ向こうも作戦を考えてこちらの対策をしてくる訳だからな・・・まずは監督の頭脳戦か・・・)
そう・・・試合は既に始まっておりこの準備段階で戦っているのは他でもない選手を導く監督達だった
この勝敗によって試合が有利になるかどうかが決まりそれこそ勝敗に大きく影響するのは間違いない
それ故に監督は本当に自分に務まるだろうかと不安に思ってしまう事もあったが選手達の様子を見て覚悟を決める
(俺だけがこんな弱気になっているわけにはいかない・・・!何の為に俺がここに呼ばれたと思ってるんだ・・・!
こいつらを勝たせる為・・・そして一度でもいい・・・野球部を甲子園に連れていくんだ・・・!)
覚悟を決めた監督はミーティングを切り上げて早速、残る準決勝と決勝戦の為の対策を考える為に部屋へと戻った
残された選手達も自分達に出来る事をやろうと部屋には戻らず各々で自主練をしようとグラウンドに向かう
そんな中で唯一、グラウンドには向かわずとある場所へと向かっていたのは部長である晃平だった
彼が向かっていたのは監督の部屋でもましてや自室でもなく生徒会が借りている部屋でノックし中へと入っていく
中にはちょうど作業をしていた浩介の姿があり生徒会でない晃平がここに来た理由を尋ねる
「見せてほしい資料があってな・・・村上が投げている姿を録画したものなんだが・・・ここに置いてあるか?」
「・・・実はそう言われる事があるんじゃないかと思って自分が監督に渡したのとは別に録画したものがありますよ」
「・・・すまないな・・・恩に着る・・・!」
そしてサッカー部でも同じようにミーティングが行われていたのだが何故か慶太は参加しておらず
自室に篭ってこれまで自分がプレーしていた映像を生徒会から借りて朝からずっとそれを見続けていた
と言うのも実は準々決勝での試合で慶太は今のプレースタイルでは何か限界があるかもしれない事を感じ
そこから色々と考えては見たのだがやはり体感では何がダメなのか具体的には分からない事もあり
前に真司に見せてもらった自分がプレーしている映像を思い出しそれならば何かヒントが掴めるかもしれない
そう思いこうして再び真司にお願いし大会中の試合映像を貸してもらって確認をしていたのだ
(・・・やっぱり何か違和感って言うか・・・なんかおかしいのは分かるんだが・・・何がダメなのか・・・
なんかこう・・・決定的な何かが見えてこないんだよな〜・・・どうしたもんか・・・)
やはり自分だけでは何も掴む事は出来ないと感じた慶太はどうすればいいののだろうと休憩がてら部屋から出る
そして外の新鮮な空気を吸おうと考えながら歩いていると音が聞こえてきてその方向に向かうと
そこには必死に壁打ちをしている好夜の姿があり慶太はもしかしたらと思ったのか話しかけにいった
「なるほどな〜・・・確かにそう言ったのって自分だとよく分からなかったりするもんな〜・・・
でも俺は別にサッカーとか詳しくないからアドバイスとか出来たとしても素人の意見になるかもしれないぞ?」
「それでも俺としては何か発見出来ればそれだけで十分なんだよ・・・頼む!俺に協力してくれ!」
ここまでお願いされて断れるような好夜ではなく何よりもここまで真剣な慶太は珍しかったので協力する事にした
二人は急いで部屋に戻りこれまでの試合映像を見たのだがその中で好夜は一つだけ気になっていた事があった
「・・・なぁ・・・なんで慶太って右から攻めていくんだ?別にどっちから攻めても変わらないんじゃないのか?」
「言われてみれば・・・なんか知らないけど右から攻めるのが楽だからそっちを優先してたな〜・・・」
好夜に指摘されて初めて慶太は自分でも右から積極的に攻めていた事に気づきその理由を考えてみる事にした
そうして気づいたのは自分の利き足が右でありだからこそ右から攻めていくのがやり易いのだと気づいた
これは本当に自分だけでは気づかなかった事であり好夜に感謝しなければならない事だった
何故ならばこれに好夜が気づいたと言う事は他の高校も気づいているという事であり
次の試合からは右攻めを徹底的に守られる可能性が高く慶太はその対策を考えなくてはならないからだ
(あっぶね〜・・・これに気づけなかったら普通に試合でテンパってた可能性があったわ〜・・・
問題は右攻め以外でどうやって攻めるかだよな〜・・・これに関しては部長とかとも話した方がいいか?)
「とにかく!問題点に気づく事は出来た!後は決勝まで自分の欠点を克服するだけ!おっし!気合いが入るぜ!」
こうしてそれぞれが大会終盤である準決勝、決勝の為の準備を進めていき万全な状態で望もうと努力していく
それでも負けてしまう可能性もゼロではなくどうなるかは試合が終わってみるまで分からないだろう
だが何もしなかったらそれこそ負ける可能性を増やしてしまうようなものでありそれだけは絶対にしてはいけない
何よりもここまでこれたのは自分達だけの力だけではなく支え、応援してくれたみんなのおかげでもある
そんな彼らの期待を裏切るなど絶対にしてはいけない事でありだからこそ自分達の精一杯を見せようと
選手達は文字通り、最後に向けて己の出来る限りの事をやり本番を迎えるのだった
大会最後!まずは敬子の所属するバレー部から!
 




