祝勝会
今回は好夜の祝勝会!
「それじゃあ!好夜と〜俺達サッカー部の準決勝での勝利を祝って〜・・・かんぱ〜い!!」
「・・・いやその前になんでお前がここにいるんだよ・・・部活の祝勝会に参加してるんじゃないのか?」
祝勝会として生徒会に呼ばれた好夜だったが何故かその場には呼ばれていないはずの慶太の姿まであり
どうしてここにいるのだと問い詰められると彼は先ほどまでの楽しげな顔が嘘かのように暗い雰囲気を醸し出す
「そんなもんは決まってるだろ!向こうの方は男だらけでとても暑苦しいからじゃい!あんなの祝勝会じゃねぇよ!
それこそ拷問とかそう言ったのと変わらねぇんだよ!!折角の祝勝会なのにやってられるか!!」
「そりゃあお前のサッカー部は男子しかいないんだからそうなるだろうよ・・・てか今更かよ・・・」
確かに好夜の言う通りそんな事は最初から分かっている事であり今更、言われても困ると言うものだ
しかし慶太の勝利したのに男だけ祝うのは嫌だと言うのも理解は出来たので渋々ながらも受け入れる事にした
するとそんな風に生徒会の祝勝会に参加するのは慶太だけだと思っていたのだがそのすぐ後で晃平と敬子も姿を現した
「・・・こんなに集まるんだったらもう学校全体で盛り上がった方が良かったんじゃないのかって思うわ・・・」
「流石にそれは場所を取るからな・・・こうやって各々で祝った方が良いと考えて俺はここに来たんだが・・・」
敬子も同じくと言った表情で手を上げながらもらった飲み物を飲んでおりもはや好夜はため息を吐くしかなかった
だが彼らも自分と同じく大きな峠を越えた事には変わりなく一緒に喜ぶには申し分のない存在だと言えるだろう
こうして波乱はあったもののなんとか始まった祝勝会は盛り上がっており作られた料理もとても豪華だった
「やっぱり命の料理は美味しいな!今日の試合もなんだかこの料理の為に頑張って思えてくるぜ!」
「そっそんな事ないよ・・・!好夜君はりっ料理なんてなくてもがっ頑張ってたもん・・・!
ずっずっと見てたけどほっ本当に凄かった・・・!わっ私・・・かっ感動しちゃったもん・・・」
並べられた命の料理を絶賛していると本人は自分の料理よりも好夜の試合の方がとても感動したと告げる
それを聞いて嬉しくないはずもなく好夜はなんだか嬉しそうな顔をしているとそれならばと真司が何かを取り出す
「実はこれから確認作業とかもしようと思っていたところなんで今からみんなで先輩の試合を見てみませんか!?」
「いいね!好夜がどんな試合をしてたのかずっと気になってたし見せてもらおうじゃないの!!」
真司の取り出したビデオにすぐさま反応したのは慶太であり他の部活の試合を見る機会は滅多にないので
どんな風に好夜が勝利したのかを気になっていたようで早く見せてほしいと真司を急かしていた
そんな慶太を受け流しながら真司はビデオを部屋に置かれていたモニターに繋げて映像を映し出す
(・・・なんか改めて見られるのかと思うと恥ずかしいな・・・でも・・・少しだけ俺も見てみたかったんだよな)
「・・・なんと言うか・・・どんなバケモンと試合を繰り広げてきたんだよってツッコミたくなるな・・・」
「全くね・・・おかげで好夜も規格外なはずなのにこれが普通なんだって思わされそうよ・・・常識が崩れるわ」
好夜の試合を見て真っ先に感想を出したのは慶太と敬子の二人だったのだがその内容はあまりにも酷かった
試合の内容に対して褒めるでも問題点を言うでもなく単純に好夜が規格外だと認識しただけだったからだ
しかし好夜もこの試合を見て自分がどんな相手と戦って勝利したのかを理解しているからなのか特に何も言えなかった
「まぁ二人が言わんとする事も分からなくはないがな・・・対戦相手の選手はプロでも目指しているのか?」
「本人が言うには強い相手と戦いたいから大会に参加してるって話だったしプロも視野には入れてるんじゃないか?」
晃平の問いに対して好夜はざっくりとした答えしか出せなかったのはそこまで車と話したわけではないからだった
思えば彼らとは基本的に試合の話や実際に試合をしたりなどコートの中でしか接した事はなく
車だけではなく宮園の身の上話を聞くなど正直、考えた事すらなかったと好夜は今更のように思っていた
(でも確かにそれを考えたら二人はプロを目指していてもおかしくはないんだよな・・・俺は違うけど・・・)
「にしても・・・好夜もよくこんな球を返そうなんて考えるよな?俺なら絶対に逃げる自信がある!」
どんな自信だよと慶太の言葉に対して思わずツッコミたくなった好夜だったが自分もそんな風に思ってもいた
ラリーの時もあまりの強さに思わず体が引いてしまいそうになるのをなんとか堪えて球を打ち返してはいたが
実際に試合が控えておらず車と戦う事を知っていなければそんな事はしなかっただろうと思っていた事もあった
まさにテニスという共通のものがあったからこその出会いだとも言えるが好夜はその不思議な繋がりに感謝もしていた
何故ならばそのおかげで自分はテニスを通じ人として更に成長出来たのではないかと思えたからだ
(そう言った意味じゃ本当に車や宮園との出会いにも感謝しなくちゃいけないよな・・・つか・・・)
「・・・思ったんだが・・・そもそもお前らだって人の事をそんな風に言えないだろうが!自分の試合を見返せ!」
ここまで散々な言われようをしていた好夜だったがよくよく思い返してみれば規格外は別に自分だけではなかった
晃平も初めて出た野球の試合でその年の甲子園に出場し先発で投げて準優勝した投手からホームランを打っており
慶太に関しても二人よりかは目立ってはいないがそれでも強豪校との試合でワントップとして起用され点も取っている
確かにこれだけの事実を加味するのならば二人に関しても明らかに普通とは違うと言っても過言ではないだろう
しかし本人達にはその自覚はなく好夜はつい先ほどまで自分のこうだったのかと少しだけ認識を改めていた
「・・・まぁ、好夜の言いたい事も分からなくはないけど・・・正直、それ以上はいくら考えても無駄よ?」
「確かに・・・慶太君は自覚させない方が良いかもしれませんが晃平君は自覚したとしても変わりませんから」
「・・・そうだな・・・なんだか自分だけおかしいんじゃないかって思えてくるもんな・・・」
こうして好夜達が祝勝会を行なっている頃、別のホテルでは野外にあるコートで宮園と車がテニスをしていた
「急に電話がきて何事かと思って来てみればまさかこんな夜にテニスに付き合えと言われるとはな!」
「むしろ俺からの電話でそれ以外の話があると思っているのかい?・・・それよりもどうだった?感想は」
二人はラリーを繰り返しながらも話す余裕があり宮園は今日の試合についてを尋ねると車は嬉しそうに答える
「お前の想像している以上だ!アイツは俺達に臆するどころか真正面から向き合いそして強さを手に入れた!
しかもそれだけじゃない・・・!その強さに甘んずる事なく試合の中で更なる成長を遂げて俺を越えていった!
まさに俺達が待ち望んでいた・・・いいや・・・それすらも超える最強の好敵手だ!お前も嬉しかろう!?」
「・・・確かに・・・久しぶりに心が躍るような試合を見させてもらったよ・・・早く試合をしたい・・・
そんな風に思った事すらも数年ぶりだったよ・・・本当に彼は面白い・・・今から楽しみでしょうがないよ」
今回の試合で好夜は二人が望んでいた以上の結果を出しまさかの車を負かして大会を勝ち進んだ男
それだけで彼らの興奮は冷ましきれないほどに高まってしまっており宮園は夜にも関わらずテニスの誘いをしたのだ
初めて自分達に敗北という二文字を教えてくれたのはこれまで出会った事もない無名の選手
それこそ彼らにとってはまさしく自分達の寂しく孤独だったテニス人生において運命の出会いだった
そしてそれは同時に彼らが久しぶりにテニスに対して本気で勝ちたいと思う事にも繋がっており
何年ぶりかも分からない全力を出す事になってそれでも負ける事になったと車は告げる
「・・・いや・・・もしかしたら俺はあの時・・・自分の全力を越えていたのかもしれないな・・・
あの試合で俺は初めて成長というものを実感出来たような気がする・・・小さい頃はこうだったのにな・・・」
「そうだな・・・あの頃は何をするにも楽しくて強くなっていく自分を嬉しく思っていたよ・・・
その後で来る孤独を知らなければね・・・でも・・・今はあの頃も自分も悪くなかったって思えるよ・・・」
確かに強くなりすぎてしまった彼らにとって好夜と出会うまでの日々は本当に地獄のような孤独感があったが
逆を言えばその時であろうともテニスを辞めずにいたからこそこうして好夜と出会う事が出来たとも言える
それを考えればあの頃も決して無駄ではなかったのだと今更になって思えるようになった事を告げる宮園
それは車も同じように思っておりこんな日々がまだまだ続いていけば良いのにと思ってもいるようだが
「・・・この大会が終われば好夜は島に帰るんだったな・・・アイツがプロになれば面白くなるんだが・・・」
「それはないだろうね・・・だって彼にはテニス以上に大切に思っているものがあるみたいだから・・・」
宮園が思い出していたのはあの試合の中で明らかに好夜の動きが変わった瞬間、彼の視線に映っていた一人の少女
(想いが力に変わるか・・・なんだか御伽噺のような感じだけど・・・彼にとっては本当の事だったみたいだね)
いよいよ大会編も佳境です!




