支えてくれる人達
今回は前半は真司がメインで
後半は野球部の事を書いています
時刻は朝に遡り今日は好夜達が試合をするという事もあって生徒会としては大忙しだった
しかしそれでも初日に比べたら仕事の量は少しだけ減ってもいた
その理由は他でもない・・・序盤で負けてしまい大会を終えてしまった選手達がいるからだった
生徒会としてはこれはとても喜ばしい事ではなくむしろ悲しいとすら思っていた
仕事が減る量によってどれだけの人数が試合で負けてしまい帰る事になるのか分かってしまうからだ
幸いな事に今年は負ける人数も少なく例年に比べて忙しいままではあるがそれでも負けてしまった人はいる
そんな彼らは悔しい思いをなんとか押し殺して勝ち残っている人達の応援や手伝いなどをしてくれている
本当は今すぐにでも悔し涙を浮かべたいし勝ち残っている人達に対して何も思う事がないわけではない
それでも彼らはそれを答えて真剣に仕事をしてくれており生徒会としても感謝しても仕切れない気持ちだった
「・・・でも厳しいですよね・・・まだこれでも地区大会でこの先に県大会と全国もあるなんて・・・」
「ええ・・・全国大会ともなればウチの高校でも参加する事が出来たのは二桁もいかないくらい・・・
ましてやそこで優勝した人なんて私の知っている限りじゃ前生徒会長だけね・・・」
生徒会長である足立が神居高等学校が設立されてからの資料を見た限りでは全国で優勝した人は誰も居らず
前年度の菓家が最初の人物であり学校としては大いに盛り上がっており島の英雄として讃えられていた
それほどまでに全国で優勝するという事は難しい事であり今年もそれは難しいとみんなは考えていた
「もしも全国に行ける可能性があるとすればそれは野球部、サッカー部、テニス部、バレー部の四つでしょう
・・・ですが悲しい事にその四つの部活ですら確実は言えない理由がある・・・それが何か分かりますか?」
「・・・この地区にはすでに全国でも優勝候補って言われるような学校があるから・・・ですよね?」
そう・・・最悪な事にこの地区には既に全国でも優勝候補と呼ばれるような高校が参加しているのだ
去年はその高校に野球部とサッカー部は負けてしまい全国への切符を逃してしまっていた
しかしもちろん望むがないわけでもなく去年は全国まで行けていたバレー部は勿論のこと
サッカー部は去年の大会で奇しくも負けてしまった高校は三年生の引退で弱体化
つまり全国クラスの高校はもう居らずこのまま行けば本当に全国も夢ではないかもしれないのだ
「・・・って事は残る問題は野球部とテニス部の二つって事ですか?・・・因みに可能性は・・・」
「・・・野球部に関しては団体的な種目になるので選手のみんな次第としか言いようがありませんが・・・
テニス部・・・如月君に関しては難しいでしょうね・・・何せ相手は全国レベルの二人なんですから・・・」
そして真司は肝心のテニス大会の方へと向かい好夜が試合をしている姿を撮っていたのだが結果はストレート勝ち
足立の言う通り本当に可能性は十分に残されていると感じる中で圧巻だったのは例の全国レベルの二人だった
(うわぁ・・・好夜先輩も凄かったけど・・・この二人も凄い・・・!他とは確実に次元が違う・・・!)
既に好夜の試合を撮り終えていた真司は東と宮園試合を見に向かったのだがもはや圧巻の一言だった
宮園は冷静沈着、華麗な技やコントロールで相手を翻弄しまるで自分の思い通りに試合を進めており
一方の東は力強い打球で力の差を思い知らせるかのようなテニスとしていたがどちらも言えた事はたった一つ
それは明らかに二人だけこんな地区大会に出るような選手ではないという事だった
しかしそれは仕方のない事であり今回、彼らは個人戦への出場に関しては初でありシード権を持っていないのだ
素人である真司からしてみればまるで詐欺のような話ではあるが紛れもないルールでありこれは仕方のない事
むしろ今考えなくてはいけないのはそんな全国レベルの相手にどうやって好夜が勝つのかという事だった
(しかもあの東って人とは次の試合次第で・・・いや・・・次の試合が終わったら確実に戦う事になる・・・!)
ちゃんとトーナメント表を覚えていた真司は次の試合が終わればその相手が東になるという事も分かっていた
好夜が負けるとは思えないし今の実力を見て東が試合を落とすような選手には見えなかったからこそ
必ず実現する組み合わせだと確信しており真司はどうにか好夜の役に立てないかと必死に考える
そんな中で思いついたのはまだ使っていない充電の残っているビデオカメラでありこれで東を撮ろうと考えた
(確か偵察とかに来ている人はよくこうやってビデオに撮って相手の事を観察するって言ってた・・・!
本当は試合とかをする前にやって長時間掛けて相手の事を調べ尽くしていくんだって言ったけど
好夜先輩ならきっとこの少ない期間でも弱点なんかを見つけてくれるはず・・・!俺はそれを信じて撮る!)
まだ出会って一年も経っていないが真司はどれだけ好夜が凄い人間なのかという事を理解していた
しかもそれは才能とかそう言った話ではなく努力で色んな事をしてきた人だと言う事を・・・
だからこそ自分が撮った素人のビデオだったとしても必ず役に立つはずだと信じる事ができ
なんの迷いもなくすぐにビデオを回す事が出来たのだと思う。そしてそれは結果として好夜を助ける事になった
東の試合が終わり反対側に好夜の姿が見えた真司は急いで近づいていき自分がビデオを回した事を伝えた
すると好夜はそれだけで大喜びしており早速、ホテルに戻ってそのビデオを貸して欲しいと告げる
(やった!初めて自分から好夜先輩の役に立つ事が出来た・・・!)
それだけで真司は役に立てたのだと大いに喜んでおり好夜の後を急いで追いかけていくのだった
また別の場所では命と明希音の二人が野球部の試合を撮影していたのだが少しだけ不安な顔をしていた
「・・・何というか・・・あの一年生の投手君・・・鬼気迫る感じで投げてるよね・・・」
「うっうん・・・まっまるで何かあっ焦ってるみたいな感じ・・・だっ大丈夫なのかな・・・?」
二人が不安に思っていた理由は投手である伊勢谷であり彼の様子がこの前から明らかにおかしくなっていたのだ
と言っても別にプレーが悪くなっているというよりもむしろ前に比べて球速もコントロールも上がっていた
しかし本人はまだ足りないと言わんばかりの顔をしておりまさしく鬼の形相でこの試合を投げ切った
どうして彼がそんな顔をして球を投げていたのか二人には理解出来なかったが晃平だけは理解していた
伊勢谷がここまで鬼気迫る表情で投げている理由は他でもない彼が見に行かせた試合の所為だと・・・
(村上の事を意識させるつもりで行かせたんだが・・・ここまで意識を変えるとは思ってなかったな・・・
球速もコントロールも上がっているから良い傾向ではあるんだが・・・
このままでは本人との試合を前に潰れてしまうかもしれないし・・・次の試合は変えた方がいいか?)
今のまま投げるのは危険だと判断した晃平は伊勢谷の事を休ませた方がいいのではないかと思っていると
どうやら監督も同じ事を考えていたようで伊勢谷に近づくと明日の試合は外野に回す事を告げた
最初は伊勢谷も文句を言おうとしていたが今日の試合を見てダメだと判断された事を自分で理解していた
しかし監督は落ち込んでいる伊勢谷に対してどうしてベンチではなく外野に回すのかを教える
「何か勘違いしているみたいだから教えてやるが・・・別に外野に回すのはお前が独断専行したからじゃないぞ?
むしろ村上の事を意識して球速やコントロールが上がっているのは良い事だ・・・だから練習をさせてやる」
そう言って監督はノートを使って図を描き外野に行った場合のメリットなどを教えてくれた
「いいか?外野に向かえばまず何をするか・・・それは球がとんできた時に遠投をしなくちゃいけないって事だ
実はこれはピッチャー同じくらいの肩とコントロールが必要だったりするんだけど・・・
逆を言えばこの二つが完璧に出来るようになれば・・・今のお前は劇的に球速が上がる・・・!」
監督の話では伊勢谷に必要なのは速球を投げる為の肩でありそれを外野で鍛えようという事だった
確かにそれならば投手の時とは違いそこまで肩を酷使せずに全力で投げれるので鍛えるにはもってこいだった
幸いな事に決勝まではそこまで強い高校と当たる事はないのでそれまでに伊勢谷が地肩を作れれば
もしかしたら村上の負けない速球を身につける事が出来るかもしれないと監督は告げる
「どうする?本当にそこまでの速球を身につけられるかは正直、お前にかかってる・・・!」
「・・・やります・・・!俺は監督と・・・ここまで一緒にやってきた先輩達を信じます・・・!」
一行はそのままホテルに帰ってきて先ほどの伊勢谷の様子を心配した明希音が尋ねてきて事情を聞くと安心していた
「そっか・・・晃平君としてはどうなのかな?本当に伊勢谷君ならあの村上さんに勝てると思う?」
「・・・正直なんとも言えないな・・・伊勢谷の事を信じてないわけじゃないが・・・相手はあの村上さんだ・・・
あの人は今の自分に満足するような人じゃない・・・常に上を目指して成長を続けていく人だ・・・
だから伊勢谷がどれだけ成長出来るか・・・そして・・・俺がその村上さんから点を取れるか・・・だな・・・」
そう・・・伊勢谷は村上を意識して鬼気迫る表情を見せていたが実際に対決するのは彼ではなく晃平だった
彼は去年の大会でたった一人、村上からホームランを打っており本人もそれを覚えているはず
つまり村上は間違いなく晃平の事を意識しており今年こそは抑えてやるという気持ちでいると言う事だった
「・・・あの時は無我夢中でバットを振ったから何も覚えてないんだ・・・どんな球を打ったのか・・・
どんな風に構えてどんな風にバットに当てたのか・・・本当に何も・・・だが・・・」
「後輩の為にも俺は打つ・・・!それがキャプテンを任された・・・俺の役目だ・・・!」
次回は野球部の様子を書いていきます
 




