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激しい戦いを終えて

前半は敬子と慶太の二人のお話で

後半、少しだけ好夜と晃平の二人が出てきます

激闘を終えた慶太達はホテルに戻る前からすでに疲れた様子を浮かべており慶太に関しては既に眠っていた

あれだけの激戦を繰り広げれば当然だろうと思いながら監督はバスが来るまで選手達を休ませる事にした

それからすぐにバスがやってきて選手達を起こして乗せるとそのまま寄り道せずにホテルへと向かう

本来ならばホテルに帰ってきてすぐに反省会をしようかと思ったのだがこの状況ではやっても仕方ないと思い

今日は特別に反省会をやめて思う存分、休ませようと全員を部屋に戻らせるのだった

(それにしても・・・思った以上に強かったな・・・

 守備の硬いチームに関しては新しい攻め方を考えた方がいいかもしれないな・・・)

今日の試合を踏まえて監督はもしかしたら新しい戦法が必要になるかもしれないと考えていた

それほどまでに今回の試合の成果は大きくとても喜ばしい事ではあるのだが

逆を言えばそれだけ全国大会までの道のりは険しいという事の証明でもあった

「なんにしてもこの試合を勝つ事が出来たのは大きい・・・!これを糧にアイツらは成長する!

 もしかしたら本当に全国大会で優勝するのも夢じゃないのかもしれないな・・・」

今回の目標としては前回、先輩達が果たせなかった夢である全国大会への出場

それだけを目標に頑張ってきたのだが監督はそれだけでは終わらないかもしれないと考えていた

それほどまでに彼らの成長は目覚ましくチームの実力は去年よりも上だと彼は判断していたのだ

もちろん去年のサッカー部が弱かったわけではないが彼らの悔しさが後輩達を強くしてくれた

そして今日の名もなき強敵の手によって彼らは試合の中で成長するという経験をする事が出来た

これだけ環境に恵まれた事はなかったのではないかと言うほどに監督は考えているからこそ

全国大会に出場する事だけではなくそこで優勝する事も出来るのではないかと夢見ていたのだ

(・・・いや・・・今はそんな夢ばかり見てる場合じゃねぇよな・・・俺の仕事はアイツらを勝たせる事

 その為には俺に出来る最大限の事をしてやらないとな・・・全国優勝を夢見るのはその後だ)

しかし監督はすぐにそんな夢を見ている場合ではないと正気に戻り次の試合の確認をする

それが今の自分がやるべき事であり彼らを勝たせる為にやらなくてはいけない事だと分かっていたから

「それにしてもアイツら・・・随分と嬉しそうな顔で寝てやがったな・・・よほど嬉しかったのか・・・

 まぁあれだけの戦いをするだけの相手に勝利すれば分からなくはないけどな・・・」

監督は自分以上に嬉しそうな顔をしていた選手達を思い出して笑みを浮かべながら部屋へと戻っていった



それから少しして敬子達、バレー部もホテルに戻ってきてそれぞれの部屋へと戻ろうとしていた時だった

「・・・ん?あれって・・・あの馬鹿・・・部屋に戻らないてあんなところで寝てるし・・・」

敬子は部屋に戻る途中で談話室のソファで寝てしまっている慶太を発見した

この階は貸切状態だとはいえ他の生徒にも迷惑になるので敬子は部屋に帰らせなくてはいけないと考える

「ほら!試合で疲れたからってこんなところで寝てたら体壊すし迷惑になるでしょ!?ちゃんと部屋に戻りなさい!」

「ん・・・んん?敬子か・・・起き上がりたいのは山々なんだけど・・・体に力が・・・」

どうやら慶太は既に限界を超えているようで眠らないようにしても体がうまく動かせなくなっているらしい

だから自分の部屋に戻る事が出来ずこの談話室で力尽きていたのだが敬子としてはこのままにするわけにはいかず

彼に手を貸して部屋まで連れて行こうと肩を貸すのだが彼女が考えている以上に慶太は重かった

(重っ!?これってそれだけコイツの体が成長したって事よね?・・・随分と逞しくなったじゃない)

これまでの慶太を見てきた彼女だからこそどれだけ成長したのかを実感する事が出来た

そして同時にまるで独り立ちをしようとしている息子を見守る母のような寂しさを感じてもおり

少しだけ悲しそうな表情を浮かべながらどうやって運ぼうか考えているとそこへ真司達がやってきた

「皆川先輩に瑞樹先輩!?こんなところでどうしたんですか?もしかして怪我でもしたんですか!?」

「いや怪我したわけじゃないんだけどコイツがもう体力の限界で動けないらしくて・・・

 悪いんだけど部屋まで連れて行くのを手伝ってもらってもいいかな?」

敬子から事情を聞いた真司はもちろん手伝いを了承し一緒に慶太に肩を貸して彼を部屋まで連れていった

荷物から勝手に鍵を借りて部屋の中に入ると既に同じくルームメイトの人は着替えもせずにベッドで眠っており

大きな音を立てて起こすわけにはいかないと二人は静かに慶太をベッドに寝かせて部屋を出た

「・・・それにしてもアイツがあんなに疲れるなんて・・・よっぽど苦戦したみたいね・・・」

「はい・・・前半は本当にシュートを入れるどころかボールにすら触らせてもらえなくて・・・

 だから相手を翻弄しようと瑞樹先輩は誰よりも走り回っていましたから・・・」

あの時のメールで見た以上の試合を経験したのだと敬子は理解しあれだけ疲れていた理由に納得する

それでも彼らが勝った事実に変わりはなく夢野全国大会出場に一歩近づいたのは間違いなかった

(・・・本当に見違えるほど逞しくなったわ・・・私も負けてられない・・・!)

「さぁ!私も部屋に戻ったら今回の試合を振り返らないと!体は休めても頭は休まない!」



一方その頃、同じく試合から帰ってきた好夜と晃平の二人はサッカー部の試合を記録した映像を見ていた

「なるほどな・・・確かに想像していたよりも相手チームの選手の守りが堅いな・・・

 これを慶太一人で突破するのはだいぶ難しいか・・・後半でフォーメーションを変えたのは正解だな」

「ああ・・・だが結局は賭けだった事に変わりない・・・実際にシュート自体は防がれてしまっている

 それでも勝てたのは・・・一重に慶太のゴールに対する執念と言わざる得ないな・・・」

試合の内容を見ただけで二人はどれだけ苦戦を強いられたのか分かったのか、よく勝ったと評価していた

同時に慶太が今回の大会に対してどんな気持ちで挑んでいるのか、その覚悟の程も見る事が出来た

「これなら本当にサッカー部は全国大会に行けるかもしれないな・・・リベンジが出来ればだけど・・・」

「・・・それは俺にも言える事だな・・・間違いなく甲子園の前に立ち塞がるのはあの高校だ

 そしてその試合に勝つ為には・・・うちのエースである伊勢谷の力が必要不可欠だ」

慶太だけではなく晃平もこの大会に並々ならぬ思いを募らせておりリベンジという意味でもそこは一緒だった

そしてそのリベンジを果たす事が出来るかは野球部のエースである伊勢谷の手に掛かっていた

いくら晃平がホームランを打ったとしてもそれは所詮、野球では一点でしかない

その一点を貴重な一点とするかそれとも価値のない物にするかは相手の点数次第

つまりは伊勢谷がどれだけ相手の打者を抑えられるかに掛かっていると言うわけだ

「・・・正直な話・・・晃平としては例の高校を相手にしてアイツがどれだけの点数で抑えてくれると思ってる?」

「これから伊勢谷の成長次第で内容は変わってくるだろうが・・・厳しいのは後半だろうな・・・

 そこで大量に点が取られてもおかしくはないと普通は考えるだろうな・・・

 だが・・・俺は伊勢谷を信じている・・・!アイツなら必ず抑えてくれるはずだとな・・・!」

自分のエースはそれだけの信頼に足る人物だと晃平は考えており

だからこそ最大限のサポートをしなければならないと思っていた

野球はエースが抑えるだけではなく守備もそうだし何よりも点を取らなくては話にならない

その為にはキャプテンである自分が率先して彼らを率いなくてはいけないと晃平は気持ちを引き締めていた

その様子を見て好夜は晃平も同じく甲子園に行けるかもしれないと考えながら再び試合の映像に目をむける

そこにはまさに試合を決める一点を入れた慶太の様子が映っており彼は最後に笑っていた

(・・・スゲェな・・・なんか普段の慶太からは想像も出来ない・・・別人を見ているような気分だ・・・)



(・・・でも・・・それだけ慶太も本気って事なんだもんな・・・俺も覚悟を決めないと・・・!)



「・・・んあ?あれ?ここ・・・部屋だよな?確か辿り付かなかったと思うんだが・・・」

目を覚ました慶太はどうやら敬子達が部屋に運んでくれた時の記憶がないようで

自分がどうして辿り着けなかった部屋のベッドで寝ているのか不思議に思っていた

しかしベッドの周辺を見るとテーブルの上に手紙と飲み物が置かれておりそこで誰かが運んでくれたのだと悟る

慶太は起き上がってそのテーブルの上に置かれていた手紙を確認するとそれは敬子からの物だった

内容としてはここまで運んでくれた経緯について書かれており飲み物はついでだと書かれていた

そんな中で彼が最も驚いていたのは最後の文章でありそこには労いと試合に勝利した事を祝福した言葉が書かれていた

「・・・アイツがこんな事書くなんて・・・もしかして明日は雨でも降るのか・・・!?」

何やら彼は素直にその厚意を受け取れてはいなかったようだがそれでも嬉しかった事に変わりはなく

先ほどまでの疲れがまるで嘘かのように無くなっており逆にお腹を空かせていたのか大きな音がお腹から鳴った

「そういえばもうそろそろ夕飯じゃねぇか!?どんだけ寝てたんだよ俺は!?ってコイツも起こさないと!!」

慶太は急いで着替えると同時にルームメイトも起こしてお腹の飢えを満たしに食堂へと向かうのだった






因みにこれは余談であるがこの日の食堂は大忙しでたった一日で三日分の食材を消費したらしい

次回はいよいよ好夜の回!

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