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大会への想い

大会前日の彼らの様子はどうか?

夕方頃になり本州へとようやく辿り着いた好夜達は早速、ホテルへと向かっていた

そしてホテルに着くと夕食まではしばらくの間、自由時間を取る事になった

そんな中で好夜は明日は一体、誰との試合をする事になるのか不安になっていた

というのも今回は新人戦とは違いシード枠が存在するのだが前回、個人戦に出ていなかった好夜はもちろんノーシード

そして・・・肝心の宮園や車も当然ならばノーシードとなっており当たる可能性は十分にあるのだ

それがあるからこそ不安になっておりその所為で落ち着けなくなっていた時だった

「随分と不安そうな顔をしているみたいだが・・・何かあったのか?」

「晃平か・・・いやまぁ・・・なんというか・・・明日の組み合わせが気になり過ぎてな・・・

 そういえばそっちはシードじゃないのか?前の大会ではベスト4だろ?」

確かに野球部はこの前の大会で準決勝にまでは進んだのでシードになっていてもおかしくはない

しかし実際はノーシードとして配置されておりどうしてなのだろうと思っていると

「・・・去年のベスト4に関しては部長達の活躍があったからな・・・今回はそれが半減している

 そう言った意味では・・・俺はシードじゃなかった事に対してよかっと思っている」

「晃平がそう思っているのならいいんじゃないか?てかそんな風に前向きに考えられるのは凄いな・・・

 俺もそれくらい前向きに考えないとな〜・・・てかそもそも何人が参加するのかすら覚えてねぇや」

その言葉を聞いて晃平はこんなにも適当な性格だったかと少しだけ不安になりながらも

とりあえずは元気になったみたいだと安心して二人で部屋に戻ろうとしていた時だった

「あっ!何してるんですか部長!!もうそろそろみんなで決起集会をしますよ!?」

「ん?俺はそんな話は聞いてないんだが・・・まぁいいか・・・今から行く」

晃平は自分を呼びに来た伊勢谷に連れられてそのまま野球部がミーティングで使っている部屋に向かった

その様子を見ながら好夜は自分は何をして過ごそうかと思っているとそこへ部長が姿を現した

「あれ?どうかしたんですか部長?確かミーティングは終わったと思うんですけど・・・」

「いや・・・実はお前に個人的に話をしたいと思ってな・・・それで探してたんだ・・・少しだけいいか?」

どうやら部長は彼を探していたようで話がしたいと彼を談話スペースまで連れて行く

好夜は一体どんな話をするのだろうと思っていると部長はゆっくりと口を開き始めた

「・・・実はな好夜・・・俺は今回、個人戦に参加する可能性があったんだ・・・でも俺は・・・それを断った」



「好夜・・・俺はな・・・お前が怖いと思っているその感情から・・・逃げ出したんだ・・・」



「・・・・・」

部長の言葉を聞いて好夜はなんともいえない気持ちになったがそのまま静かに話を聞く事にした

この話は最後まで聞く事に意味があるはずだと直感がそう言っていたからだ

「菓家先輩は実は来年の個人戦には俺とお前で出場するように話していたんだ・・・

 それくらい俺の実力を高く評価してくれていた・・・それ自体はとても嬉しい事だったんだけど・・・

 俺は・・・その期待に応えられるだけの自信がなかった・・・だから部長を理由に出場を拒否したんだ」

どうやら部長の話では本当は彼も個人戦に参加するように菓家生徒会長から言われていたらしいのだが

その期待はあまりにも重過ぎたようで彼は部長になる事を言い訳にしてそれを拒んだそうだ

そして・・・同時にその事をとても後悔しているようでなんだかとても苦しそうな表情をしていた

「俺は今でも思うんだ・・・もしもあの時、逃げなければ何かが変わっていたんじゃないかって・・・

 でも時を巻き戻す事なんて出来ない・・・俺はあの日の事をずっと後悔しながら生きるしかないんだ・・・

 だからどうか・・・お前には後悔のない選択をしてほしい・・・!それはとても怖い事かもしれないけど

 これだけは言える・・・!逃げなければ・・・明日の自分が後悔する事だけはない・・・!」

部長がこの話で好夜に伝えたかったのは他でもない逃げてしまえば明日の自分が後悔をする事になる

それを理解している自分だからこそきっとこの気持ちを伝えられると彼は考えたのだろう

「・・・貴重なお話をありがとうございます・・・確かに俺は心のどこかで逃げたいという気持ちがあった・・・

 でも・・・大丈夫ですよ・・・俺を信じてくれている人がいる・・・

 あいつが見ている限り俺は頑張れる・・・そんな気がするんです」

しかし好夜にとってそのありがたい話自体は嬉しかったが既に覚悟に関しては決まっていた

そう・・・彼はもうとっくに恐怖と向き合う為の勇気をもらっていたのだ・・・他でもない命から・・・

「・・・そうか・・・やっぱりお前は俺と違って強いんだな・・・これで俺の話は終わりだ」

部長はゆっくりと立ち上がりその目に自分よりも強い後輩の姿を捉えていた

(菓家先輩・・・俺はあなたの期待にはとても応えられなかった・・・でも彼ならば・・・きっと・・・)

そしてもしかしたら彼ならば本当にみんなの期待に応えてくれるのではないかと考えていた

好夜はそんな彼の背中を見送りながら自分がどれほど期待されているのかを改めて理解していた

(・・・本当に・・・弱音を言ってる場合じゃないんだな・・・明日は一体・・・誰が相手だ?)



一方その頃、慶太は強制的にサッカー部のミーティングに参加させられており

本人としては話を聞くつもりはなかったので適当に聞き流していた

しかしそんな中で全く聞き逃す事の出来ないセリフが部長の口から発せられた

「それと今回なんだが・・・前から話していた通りフォーメーションは瑞樹のワントップでいく」

「はぁ!?ちょちょちょ何言ってるんですか部長!?俺ワントップなんて聞いてないですよ!?」

「いやお前・・・ずっと前のミーティングからその可能性もあるからって言われてたから・・・」

どうやらこの事実は慶太以外の全員が知っていた・・・というよりも彼だけが話を聞いていなかったようだ

そして話を聞いていなかった彼に部長はどうしてこうなったのかを改めて教えてくれる事になった

「いいか?この大会じゃ攻撃力の高いチームが多く参加している・・・だからこそウチは点取り合戦をするんじゃなく

 一点勝負を狙う!その為には守備を固める必要がある・・・つまりお前以外を中盤に回す必要があるんだよ」

「でも別にそれって俺じゃなくてもいいはずですよね!?なんてそんな重大な役目が俺なんですか!?」

「そんなもん決まってるだろ?お前がこのチームのエースだからだよ・・・!」

そう・・・本来ならばこれほどほどまでに無謀な作戦は部長も実行しようとは思っていなかった

しかしこれまでの慶太の頑張りを見続けてきた彼は自分達のエースを信頼する事にしたのだ

言うならばこれは慶太に期待しているからこその賭けであり最も勝つ見込みのある作戦なのだ

それを理解した慶太はもはや何も言えなくなってしまったがそれでも不満そうな顔はしており

部長はため息を吐きながらそんな慶太を諌めて今日のミーティングは終了になる直前だった

「そうだ・・・最後に言い忘れていたがお前らも分かっている通り・・・明日の大会は雪辱戦だ

 夢半ばで引退する事になってしまった先輩達の夢を・・・今度こそ俺達で叶えるぞ!」

最後の最後で気合いの入った掛け声をもらいその場にいた全員に気合が入ったのが理解出来た

そんな中で相変わらず慶太だけは不満そうな顔をしており不貞腐れた顔をしながら部屋に戻ろうとしていた時だった

「・・・随分と不貞腐れた顔してるけど・・・もしかしてまた何か悪い事でもしたんじゃないでしょうね?」

「なんで俺が不貞腐れてたら悪い事をした前提になるんだよ!?お前は俺の事をどんな目で見てんだ!?」

偶然にもその場に敬子が姿を現して不満そうな顔をしていた慶太の顔を見て何かしたのではないかと疑っていた

流石の慶太も今回ばかりは何もしていないのにこんな疑われるのは本意ではなかったようで少しだけ怒った様子だった

しかしすぐに気持ちを沈めると慶太は談話室に向かいその様子を怪しんだ敬子も一緒についていく



「・・・なるほどね〜・・・それであんな不満そうな顔をしてたってわけか」

慶太から大体の話を聞いた敬子は通りで不貞腐れた顔をしているはずだと思っており

同時に彼はここまで誰かに期待されている事をとても誇らしいと思っていた

しかし当の本人はそれよりもプレッシャーの方が大きいようなのでそれは敢えて言わず

今はとにかく彼の機嫌を直す事を先決しなければならないと敬子は考える

「なんつうか・・・実感がわかねぇよな〜・・・自分がこんなに期待されてるなんてさ・・・

 でも・・・やるしかないのも事実なんだよな・・・はぁ・・・」

「何?もしかしてそんなに自信ないの?随分とアンタらしくない落ち込み方じゃない」

「・・・俺だって試合前にナイーブになるくらいはあるっての・・・でも確かに・・・

 期待されて落ち込むのは俺らしくないよな〜・・・いつもなら喜ぶところだ」

自分の事を客観的に考えた慶太は確かに期待されれば調子に乗るはずなのだが

今回に関しては全くそうではなくむしろ気持ちとしては沈んでいる状態だった

一体どうしてなのだろうと思いながら隣を見ると何故か嬉しそうな笑みを浮かべる敬子の姿があった

「・・・なんだよ?俺が落ち込んでるのがそんなに嬉しいのか?」

「そう見える?だとしたらアンタはまだまだ女心を理解していない証拠ね」

そう言って敬子は嬉しそうにその場から去っていきその後ろ姿を見ながら慶太は思っていた



(そんなわけねぇだろ・・・お前がそんな奴じゃねぇって事はよく知ってるっての・・・)

次回!いよいよ大会本番!

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