体育祭 後編
今回で体育祭ラストです
体育祭は順調に進んで行きようやく午前の部が終了し
ここからはお昼休憩の時間となった
「はぁ・・・ここから俺はほとんど休みなしか・・・」
好夜はこの後の午後の部からはほぼ休みなしとなっていた
「お前だってそういう気持ちで望んでるんだろ?」
しかし晃平の言う通りこれは自分が望んだような結果なので
特に文句を言える立場でもなかった
「・・・数日前の自分に軽く後悔してる・・・」
時すでに遅いが好夜は過去の自分に後悔するのだった
「・・・そういえばお前・・・弁当はないのか?」
すると晃平がお昼休憩なのに何も持っていない好夜に疑問を持っていた
普通ならこの時間にお弁当を食べたりするはずだからだ
しかし好夜にはそんな素振りすらなかった
「・・・弁当・・・家に忘れた・・・」
好夜は小さく弁当を忘れたと言っていた
「・・・普通忘れるか?」
晃平はこの体育祭に持ってくる物などほとんどないはずなのに
何でその中から忘れ物をするのだと思っていた
「仕方ないだろ〜・・・生徒会の仕事で
朝早くに学校に来なくちゃいけなかったんだから・・・」
どうやら朝早くから好夜は学校に来たらしく
それでお弁当を完全に忘れたらしい
「でもどうするんだ?俺は一人分しか持ってきてないぞ?」
晃平はお昼をどうするつもりなのか聞く
「・・・やっぱり昼抜きで頑張るしかないかな?」
「こっ好夜くん!」
「ん?どうした命?」
好夜は声を掛けられて振り返ってみると
そこにはお弁当を差し出している命の姿があった
「こっこれ・・・よっよかったら・・・!」
どうやら命はこのお弁当を好夜に渡したかったようだ
「マジで?!もらっていいの?!」
好夜はこの世の救いかと言わんばかりに大喜びしていた
「マジで助かったぁ〜・・・
このままだったら午後は本気出せないところだったぜ!」
もらったお弁当を頬張りながら好夜は命に感謝していた
「おい・・・食べるか喋るかどっちかにしないと・・・」
晃平はそのままだと確実に喉が詰まると注意しようとしたが
どうやらすでに遅かったらしく
喉を詰まらせて命からお茶をもらっている姿があった
「で?なんだって?」
全く話の聞いていなかった好夜は何を言っていたのか聞き直すが
「いや・・・何でもない・・・」
すでに注意を失敗したのにまた言うのは恥ずかしいので
晃平は何でもないと言った
「あれ?もうお昼食べてるの?」
するとそこへお弁当を持った敬子達が現れた
「俺はまだだ・・・好夜は感動で先に手をつけている」
それを聞いて敬子は頭にハテナを浮かべる
「・・・実はな・・・」
晃平は先ほどまでの事を三人に話した
「・・・いや・・・同じ生徒会で命は忘れてないじゃない・・・」
「うぐっ?!」
真実をつきつけられた好夜はショックのあまりに胸を押さえる
「全く!俺はそんな風に忘れたりなんてしないぜ!」
慶太はそんな好夜に対して優越感に浸っていた
「いや・・・別に自分で用意したわけじゃないでしょ・・・」
敬子は何を自慢気に言っているんだとツッコむが
当の本人は全く気にせずに自分の弁当を開けていた
しかし開けた瞬間に何故か慶太は止まってしまう
五人はその弁当に中身を見てみると
底に五百円玉が貼り付けられているだけだった
「・・・マジかよ・・・」
これに関してはさすがの慶太も落ち込むしかなかった
「チクショォォォォォ!今、買ってきやるぅぅぅぅぅ!!」
そして五百円玉を弁当箱から取り出し
そのまま売店へと走って行った
「いや・・・さすがにもう売り切れだろ・・・」
しかし売店ではおそらく他にも猛者が募っているはずなので
おそらく何も残されてはいないだろうと晃平は思っていた
そしてしばらくするとやはり何も残っていなかったのか
手ぶらで慶太はこちらに戻ってきた
「くそ・・・帰ったら文句言ってやる・・・!」
戻ってきた慶太の顔はまさに恨めしそうな顔をしていた
「はぁ・・・とりあえず私のあげるわよ・・・」
敬子はその様子に呆れながらとりあえず自分のお弁当の半分を渡した
「・・・すいません・・・」
さすがの慶太も何も言えず大人しくそれを受け取るのだった
「・・・うまい・・・」
そして涙を流しながらお昼を食べるのだった
「なんか俺以上に居た堪れないな・・・」
それを見た好夜は自分以上に悲惨なのではないかと思っていた
「まぁ・・・さっきまでの態度を見ていたら自業自得だろうな・・・」
しかし晃平は先ほどまでの光景を見てある意味、自業自得だと思っていた
「あの〜・・・本当に大丈夫なの?この後も種目に出るんだよね?」
明希音は本当に午後の部で実力を発揮できるのかと思っていた
「大丈夫だろ・・・こいつらは本番に強いしな」
しかし晃平は全くと言っていいほど心配してなかった
そしてお昼の休憩は終わりいよいよ午後の部が始まろうとしていた
「・・・まさかの俺が騎手かよ・・・」
午後の部の最初は一年生の騎馬戦からだった
好夜は同じく参加している晃平に
変わってもらおうかと思っていたのだが
「悪いが俺も騎手だからな・・・交代できないぞ?」
晃平も同じ騎手として選ばれてしまっているので
交代することはできなかった
「結局こうなるのか・・・」
好夜はもはや諦めたのか大人しく鉢巻を頭に巻き始めた
そして相手の組の方を見据えてみると
「・・・・・」
そこにはすでに戦闘体制に入っている慶太の姿があった
そしてその目は好夜しか見ていなかった
(めちゃくちゃやる気満々だな・・・まぁそれでも・・・
負ける気はないけどな・・・!)
しかし好夜もそれを見てやる気が出たのか
とてもギラギラした目で慶太の方を見ていた
「おいおい・・・やる気出しすぎて怪我するなよ?」
すると慶太のクラスメイトがほどほどにしておけと肩を叩くが
慶太は全くと言っていいほど聞いていなかった
そしてお互いに準備を始めて開始の合図が鳴るのを待つ
『それでは・・・始め!』
スターターピストルがなり両クラス一斉に動き始めた
そしてスタートと同時に慶太の騎馬が好夜の元へとまっすぐに突き進む
「やっぱりこうなるか・・・!」
しかし好夜もこれくらいはすでに予想していたので
受けて立つ構えで臨んでいた
「あっぶね?!なかなかやるな!」
早速、好夜は鉢巻を取られそうになり焦りを見せる
「チッ!」
対する慶太も今ので取れなかったことをかなり悔しがっていた
お互いにどちらが先に鉢巻を取れるか熱中していたのだが
「「えっ?」」
鉢巻を取れたとお互いに思ったその瞬間に終了のホイッスルが鳴った
結果は一組が勝っていたのだが決着のつかなかった二人はその場で止まっていた
((さすがにかける言葉が見つからない・・・))
二人を乗せている騎馬の人達はなんと声を掛ければいいのだろうと思っていた
しかし他の学年の騎馬戦もあるので渋々二人は自分のクラスへと戻っていく
「惜しかったな?」
晃平は好夜に対してさっきのは惜しかったと慰める
「まさかこんな不完全燃焼になるとは思ってなかったけどな・・・」
しかし好夜はそんな事より決着が付かなかった事にショックを受けていた
「まぁ次のリレーで文字通り決着をつけれるだろ?」
晃平は最後のリレーで決着をつければいいのだと言っていた
「・・・そうだな・・・今は先輩達の応援をするか・・・!」
好夜は機嫌を直して会長達の応援をする事にした
そしていよいよ三年生の出番となり応援をしようかと思っていると
「貴様!今日という今日こそ俺の邪魔をするなよ!」
一番最初に出てきた龍間は邪魔をするとな警告する
「悪いけど・・・邪魔をしているのは君の方だよ!
みんなは僕の勇姿を見に来てるんだからね!」
しかし真島も譲るつもりなないらしくお互いに牽制しているのだが
「あの二人・・・同じクラスだよな・・・?」
「・・・・・」
二人とも同じクラスなのに全くと言っていいほど強力する気がなかった
「まぁ・・・あれはそういうものだと思って諦めるしかないな」
晃平はもう諦めているらしくそれ以上は何も言わなかった
「そして・・・その二人が喧嘩をしている間に・・・」
二人が言い争いをしていると
後ろから会長が現れて二人の鉢巻を手に入れる
「ああやって会長が全てを奪っていくのか・・・」
好夜は三年間どんな騎馬戦が行われていたのかと思っていたが
今ので大体の流れは掴めたようだ
「てかあの二人・・・まだ喧嘩してるし・・・」
しかも鉢巻を取られて尚も二人は喧嘩を続けていた
「こりゃあ優勝は完全に決まったな・・・」
こうしてみんなの予想どおり会長の圧勝で騎馬戦は終了した
そしていよいよ最後の種目・・・クラス対抗リレーの時間となった
「マジか〜・・・俺アンカーかよ・・・」
好夜はクラスのアンカーを務めることになっていた
(しかも相手は・・・)
そして二組のアンカーはもちろん慶太だった
(こりゃあここまでくる順位で決まるな・・・)
好夜は勝負の鍵を握るのは自分以外の走る選手次第だと思った
お互いの選手がスタート位置に立ち
みんなが緊張しながら見守る中・・・スタートのピストルが鳴り響いた
スタートは両者互角であり特にこれといった差はなかった
そのままリレーは順調に進んで行き
いよいよアンカーの前の走者にバトンが渡された
「?!」
しかしそこでアクシデントが起こってしまった
なんと一組の走者が途中で転けてしまったのだ
幸い怪我とかはしていなかったみたいだが
それの所為でだいぶ差が開いてしまった
「お先!」
そして慶太はバトンを受け取りそのままコースを走っていく
その何秒か後に好夜もバトンを受け取り慶太の後を追いかけていく
(さすがにこれだけの差は・・・埋めるのは楽じゃないぞ・・・)
好夜は慶太を追いかけていく中でさすがにこの差は無理だと諦めていた
するとコーナーを曲がる所に命の姿が見えた
ほとんどの人の応援で何も聞こえなかったが命は口を開いてこう言っていた
”頑張れ”
「だよな!」
何も聞こえていないはずの好夜だが
何を言おうとしていたのかは大体、理解したらしく
その応援で加速して行きとうとう慶太と横並びになった
そして両者ともにゴールテープを切り
勝敗はビデオで判定することになった
「・・・勝者一組!」
どうやら先にゴールテープを切ったのは好夜だったらしく
今年の優勝は一組となった
「へぇ・・・ちゅかれた・・・」
「・・・やっぱり負けたか・・・」
慶太は体育館の裏に来て落ち込んでいた
「何してるのよ・・・表彰式始まるわよ・・・」
そこへ心配して様子を見にきた敬子がいた
「やっぱりすごいな・・・好夜には勝てないわ・・・
みんなはああ言う奴を見ていたんだろうな・・・」
慶太は自分はそこまで期待されてないんだと思って落ち込んでいると
「馬鹿・・・ちゃんとあんたを見てる人だっているわよ・・・」
敬子は恥ずかしながらもちゃんと見ていたと告げる
それを聞いた慶太は少し驚いていたがすぐに笑顔になり
「それじゃああのプレッシャーはお前の視線だったのか〜
俺が負けたのはその所為かもな〜」
「なっ?!慶太ぁ〜!」
どうやら慶太はいつもの調子を取り戻したらしく
敬子に追いかけられながら自分のクラスへと戻っていった
たとえどんな無様でも自分を見てくれる人はちゃんといます




