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涙の卒業式

いよいよ卒業式

三年生への祝賀会が終わって早くも一週間が経ってしまい卒業式当日を迎えていた

「・・・あの・・・なんで在校生の送辞を俺が喋る事になってるんですかね?足立先輩・・・」

そしてその当日に何故か好夜は足立から自分の代わりに在校生の送辞を話してほしいと言われていた

というのも実は前日に足立は風邪をひいてしまい喉がやられて今日はうまく喋れないのだ

代わりを命に頼もうと思ったのだがこんな当日に言われては命の精神力が持たないと思い

大丈夫そうだと思っていた好夜に自分の代わりを任せようと足立は考えて自分の考えた文を渡した

「まぁいいんですけど・・・てかなんでこんな肝心な日に風邪をひいてるんですか・・・」

別に代わりをやる事自体は別に文句などない好夜なのだが文句を言いたいのは

どうしてこんな肝心な日に風邪をひいてしまったのかだった

すると喋れない足立はスケッチブックを取り出して文字を書くと

そこには祝賀会で披露していた脚本の書く事に寝る間も惜しんでやっていたようでそれが原因ではないかと

「・・・あんたは馬鹿なのか!!それでも風邪ひいて今日を迎えていたら意味がないでしょうが!!」

その理由を聞いた好夜は先輩ではあるが足立に対して怒りを隠せず椅子に座らせて叱りつけていた

「・・・どうでもいいんだが・・・もうそろそろ準備をしたほうがいいんじゃないか?」

そこへ晃平が現れて早く卒業式の準備をするべきではないのかと言われて急いで準備を始める

どうして晃平も生徒会と一緒に準備を手伝っているのかというと単純にボランティアで参加してくれている

他にも明希音が手伝いに来てくれているのだが彼女は命と一緒に飾り付けを行なっていた

「それにしても俺が在校生代表って・・・めちゃくちゃ気が重いんだけど・・・」

今回はこの前の祝賀会とは違い先生達も参加するし何よりもちゃんとした式になるので

プレッシャーが半端ではなく流石の好夜でも緊張しないわけがなくため息を吐くほどだった

「別に俺はそこまで心配はしていないがな・・・それよりも心配する事があるんじゃないのか?」

それを言われて好夜は一体他になんの心配をする必要があるのだと思っていると晃平がその答えを言う

「決まっているだろ?今日は学校の責任者・・・つまりは命に祖父さんなんかが参加するという事だぞ?」

好夜はその言葉を聞いてようやく晃平が何を言いたいのかを理解出来てしまった

実は命の祖父は非常に涙脆い人物であり卒業式には毎回、号泣して卒業生とその保護者を引かせているのだ

(・・・今回もそんな事にならない事を祈るしかないんだが・・・無理だろうな〜・・・)



そんな事を思いながら準備は着々と終わっていきいよいよ卒業式が始まろうとしていた

在校生は既に体育館の中におり三年生を担当していた先生の声で卒業生達が入場する

その中にはもちろん会長や香野の姿があり二人の顔に涙はなくとても晴れやかな顔をしていた

そして開会の言葉を校長から聞き終わるといよいよ卒業証書の授与へと変わる

一人一人の名前が呼ばれていきステージの上に立つと校長から卒業証書をもらっていく

その度に在校生や先生達から拍手が送られるのだが次第に保護者の席から涙の声が聞こえてきて

それに釣られてなのか在校生や先生達の中にも嬉しくて涙を流す人が出始めた

(まぁ流石に我慢するなとは言えないからな〜・・・てかあの人は大丈夫なのか?)

好夜は一番気掛かりだった命の祖父が号泣していないか心配してそちらの方を見ると

そこには珍しく涙を流さないで厳格な表情をしたまま卒業生を見送る姿があった

(・・・珍しいな・・・あの人が泣こうとしないなんて・・・でも様子が変だな?)

その様子を見て好夜は明らかにおかしいと思うと同時に何かおかしいと感じ取ったようで

じっくりと見てみるとそこには横の席で蓮花が太ももを抓っており

どうやら命の祖父はそれを我慢しているようで涙ではなく汗を流していたのだった

(・・・なんというか・・・とことん頭の上がらない人だな・・・あの人は・・・)

好夜は改めて蓮花には頭が上がらないと思っていると会長の名前が呼ばれて壇上に上がる姿が見えた

いつもとは違いスーツを着ているのだが相変わらずキチンと着こなしているのだけは変わらず

しかも一連の動作に無駄がないのを見て会長らしいと思わず好夜は苦笑していた

その次に呼ばれたのは香野で彼女の方は振袖を着ており凄くお淑やかな女性に見えた

そして二人が卒業証書を受け取ると同時に在校生だけではなく卒業生からも大きな拍手が送られて

どれほど二人が生徒達に信頼されていたのかよく分かり好夜達は改めてこんな風になりたいと決意する

こうして筒がなく卒業証書の授与が終わりいよいよ最後の生徒が席に着こうとしていた

『続いて在校生の送辞・・・在校生代表は生徒会庶務、如月好夜』

そして最後の人が席に着くと再び進行の先生がマイクの前に経って進行する

好夜はその言葉を聞くと同時に足立の考えた送辞の言葉が書かれた文を持ってステージ中央に向かう

(・・・緊張するけど・・・ここを決めないと会長達に笑われてしまいそうだからな・・・!)



『・・・本日・・・我々を引っ張ってくれた先輩達が卒業を迎える事が出来た事を心より嬉しく思っています

 私は生徒会という立場から色んな生徒と関わる機会が多く卒業生の皆様とも関わりました・・・

 駆け出しだった私に対して皆様は本当に快く接してくれて色んな事を教えてくれたました

 それは会長達だけではなく部活の先輩など数多くの人達に言える事だと私は思っています

 これからは私達がそんな先輩達に習って後輩達を引っ張っていき皆様に恥じない後輩でありたいと思います

 最後に改めて・・・ご卒業をおめでとうございます

 そして・・・本当にこれまでの間、ありがとうございました!』

好夜の言葉を聞いてこれまで我慢してきた卒業生も涙を流しておりその中には香野も含まれていた

そして好夜が壇上から離れると次は卒業生の答辞として会長が壇上に上がっていく

『今日という日を持って私達は巣立ちの日を迎えます・・・最初に入学してから三年のという月日

 それは私たちにとってはかけがえのない日々であり三年という時間はあっという間に過ぎていきました

 入学して当初は私達も先輩に教えられて色々な事を学びそして二年生になって初めて後輩を持ちました

 初めての後輩に対して色々な事を考えながら先輩達に教えられた事を後輩に教えていき

 先生達とも色々な話し合いや苦労をしながら色んな学校行事を乗り越えていきました

 そして三年生・・・私達が卒業する年になり私たちにとっては色んな事が最後になる年でした

 最初は体育祭・・・みんなで協力すると同時にクラスの誰かと本気で勝負できる最後になりました

 もちろん全てに納得出来るような結果ではなかったかもしれませんがそれでも楽しめた最後だったと思います

 次は部活での大会・・・ここで雪辱を果たせた者や目標を達成できた者

 それとは逆に悔しい結果に終わってしまった者や後悔の残った者もたくさんいるでしょう

 ですが私達はどんな試合であったとしても後輩に残せる最後になったと思っています

 そして最後は学校祭・・・クラスで色んな事を考えてお客さんを盛り上げる最後となりました・・・

 多少はトラブルなどがありましたが私の中では三年間の中で一番盛り上がったと思っております

 こうして私達の最後が終わっていきそして・・・今日という日を迎えております・・・

 後悔がないわけでもましてや寂しい気持ちがないわけではありません・・・

 ですが今日は笑って皆様とお別れをする事が出来るのは支えてくれた先生達に協力してくれた後輩達

 そして自分達の味方であり続けた保護者の皆様達のおかげだと思っています・・・』



『三年間・・・本当にありがとうございました・・・!』



会長の当時が終わるとみんなは拍手をしておりそして同時に遂に涙腺が崩壊したのかほとんどの人が泣いていた

そして最後は晴々しい気持ちと共に卒業生が退場していき在校生である好夜達はその背中を見送る

こうして卒業式が終わると卒業生のみんなは在校生と最後の別れを済ませたり記念の写真を撮ったりしていた

「随分と緊張しているようだったが俺は良かったと思っているぞ・・・お前の送辞」

そんな中で会長が好夜の前に現れて良い送辞だったと素直に褒めてくれたのだが

「いやまぁ・・・内容を考えたのは足立先輩なんですけどね・・・

 てかあの人はもうちょっと次期会長って事を自覚して欲しいんですけど・・・」

正直な話、好夜としてはそんな風に褒めてくれるよりも足立を叱って欲しいと思っていたのだが

その本人は既に命と一緒に香野と記念撮影などをしておりこの場にはいなかった

「確かに文の内容を考えたのは足立なのは間違いないが・・・あれはお前の言葉だったよ・・・」

会長の言う通り文を考えたのは足立だがその内容を読んで心を込められた言葉は間違いなく好夜のものだ

だからこそ会長達も嬉しいと思う事が出来たし答辞に対して気合いを入れる事が出来たくらいだ

それは褒められるべきものでありだからこそ会長はこんなにも素直に好夜を褒めていたのだ

「ありがとうございます・・・そういえば先輩は記念撮影とかしないんですか?

 確かテニス部でもう先輩達との記念撮影をしているみたいですけど・・・」

好夜は会長ならば記念撮影をしに向かわないのか尋ねると何やら難しい顔をしていた

「確かに俺も向かうべきなのだろうが・・・良い雰囲気を壊してしまうのではないか心配でな・・・

 自分でも言うのもなんだが会長として活動していた所為であまり部活には顔を出せていなかったからな」

どうやら会長も色々と気にしているようで記念写真と撮りに向かうという事はしないようだ

「・・・それなら最後は俺達と記念撮影してくれませんか?生徒会のみんなで」



「・・・そうだな・・・それが一番良さそうだ・・・」

卒業を迎えた会長と香野

次回はそんな二人を命の家で祝うぞ!

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