始まる三年生への祝賀会
いよいよ始まる祝賀会
あれからしばらく時間が経っていよいよ卒業式が迫ってきていた
そしてそれは同時にその前にある在校生からの祝賀会が前日まで迫っているという事でもあった
「とりあえず準備は終わったな・・・何とかだけど・・・いよいよ明日か」
準備は終えたし練習も十分にやって来たのだがそれでもやはり不安はあった
何故ならば今回のこの行事をやるのはこれが初めてだったからだ
しかしこれを成功させなくてはこれから送る卒業生に対して示しがつかない
「・・・おし!当日までに覚悟を決めないとな!」
好夜は気合を入れ直して再び準備に取り掛かるとみんなもそれを見て一緒に始め出した
他のクラスもそれぞれ準備を終えて行きそして放課後になると
好夜達は生徒会室で再び最後の確認チェックをしていた
「・・・と言っても・・・流石にこの量は多すぎると思うんですが・・・」
確かに好夜の言う通り今の生徒会室にある書類はもはや部屋を埋め尽くすほどであり
いくら処理をしてもどんどんと増えていきとても減っている気がしなかった
「・・・本当・・・あれから減らしたはずなのにどうしてこんなに増えているのかしら?」
足立もそれを理解しており未だに数の減らない書類に対して悩んでいた
明日が祝賀会当日ともなればどうにかしたいと考えるのは当然の事だろう
しかしあまりに数が多すぎてとても三人だけで終わらせられるような状況ではないのだ
「かと言って今から手伝いの人を増やしても仕方がないですし・・・
やはり私達だけで終わらせるしかないようですね」
人数を増やすにしても今は放課後なのでみんなはおそらくお別れ会の手伝いをしているだろうし
他のみんなも帰ってしまい手の空いている生徒などほとんど残っていないだろう
そんな人たちを探している暇があるのならば急いで仕事を終わらせたほうが早かった
するとそんな忙しい生徒会室の扉を叩く音が聞こえて返事をすると明希音の姿があった
「どうしたんだ?!もしかして何かトラブルでもあったのか?!」
急に現れた明希音に対して好夜達はもしかして何かトラブルでも発生したのかと焦っていたが
「いえ・・・香野先輩に言われて皆さんのお手伝いに来たんだけど・・・大丈夫?」
「なるほど・・・それでこんなにいっぱいの書類があったんだね・・・」
明希音はまるで大変だねと言わんばかりの苦い顔をして積み上げられた書類を見ていた
そして好夜達は今、それを必死に片付けておりその姿はまさに死屍累々といった感じだろう
それを見ていた明希音はこれからその手伝いをしなくてはいけないのかと思い
少しだけ自分には荷が重いのではないかとお願いしてきた香野の事を思い浮かべていた
「命〜!やる事なくなったらから手伝いに来たんだけど・・・えっ?何これ?」
そこへ更に敬子もやってきて今の生徒会室を見て目を見開いて驚いていた
みんなは忙しかったので明希音が代わりに説明すると敬子も呆れている様子だった
「明日が当日なのにこの量って・・・絶対に終わるわけないじゃん・・・」
それでもやるしかないと思い敬子も手伝いながら何とか書類を終わらせていく
終わる頃にはすでに日も沈みかけており生徒会室にいたみんなは死にかけていた
それこそもう家に帰る事すら出来ないほどに彼らは弱っていたのだ
それでも何とか立ち上がって好夜達は荷物を纏めて学校から出ていった
「はぁ・・・はぁ・・・終わったけど・・・もう疲れすぎて何も考えられない・・・」
流石の好夜もすでに限界を迎えているようで完全に疲れ切ったという顔をしていた
それに対してみんなも返事を返す事はなくただ頷く事しか出来なかった
「でも・・・これで明日を迎えられる・・・みんなのおかげだ」
好夜は素直にみんなへの感謝の言葉を述べると返事こそなかったがみんな嬉しそうな顔をしていた
そして各々が明日に控えている祝賀会に向けて思いを馳せる事になった
(・・・明日になれば祝賀会・・・そしてその次の週が・・・卒業式か・・・)
たったの一年だけだったとはいえ会長や香野から教わったものは多くそして尊敬もしていた
だからこそ好夜はあの人達に教えてもらった事に恥じないように祝賀会を送るつもりだった
それは同じ生徒会である命も同じである足立は受け継いだ生徒会長という役目を見せる事
そして他のみんなはお世話になった部活に先輩に対して感謝の気持ちを伝える為に
そう・・・みんなが本当にそれぞれの思いを胸にこの祝賀会を成功させたい気持ちでいっぱいだった
全ては卒業生が新しい生活を何の心配もなく送れるようにそして自分達が成長した姿を見せる為に・・・
一方その頃、香野は珍しく会長の家に来ておりしかも両親の許可を取って勝手に泊まっていた
「全く・・・少しは年ごろの女性なのだという事を実感してもらいたいんだがな・・・」
会長も流石にこれには呆れている様子で一体何をしに来たのだと思っていると
「そりゃあ私だって何も考えてないわけじゃないわよ?・・・というか分かってて言ってるでしょ?」
意地悪ではないかと思いながらも香野はそういえばそういう男だったと少しだけ納得している様子だった
「・・・いよいよ明日・・・そして来週か・・・あいつらがどれだけ成長したのかを見たいと思うが
それを見たら見たで・・・嬉しく感じながらも寂しいと感じてしまうんだろうな・・・」
確かに好夜達が成長した姿を二人は見たいがそれは同時に自分がいなくても大丈夫だという証だ
それは差し詰め子が親から離れる感覚にも似ており二人はまさにそれを感じているのだろう
「・・・って誰が親よ?!私はまだ18になったばかりだっての!!」
何故か香野は虚空に向かってツッコミを入れるが会長は何をしているのか理解できなかった
しかし問題はその本番で彼らが心配しないかという不安が残っている事だった
何せこの行事は自分達の代でもやった事のないまさに初めての行事なのだ
そしてどんなに万全を期したとしてもそう言った事には必ずトラブルが付き纏う
それこそ下手をすれば祝賀会がまともに進まなくなるほどのトラブルが起きるかもしれないのだ
そうなった場合、本当に好夜達だけで解決する事が出来るのか、それを会長達は心配していた
「あいつらなら大丈夫だとは思うが・・・不安な事に変わりはないからな・・・」
会長も全面的な信頼を好夜達においてはいるがそれでも心配な事には変わりなかった
何故ならばそれは自分達も最初の頃に経験した事であり唯一、会長が失敗した事でもあったからだ
「そういえば初めての行事は私達も失敗したもんね〜・・・
あれからだっけ?失敗しないように色々と出来るようになったのって?」
そう・・・実は会長も最初から何でもかんでもあんなに完璧にこなせるようになったわけではなく
初めての失敗を経てもうみんなに迷惑をかけるわけにはいかないと頑張り試行錯誤を繰り返すようになったのだ
それが認められて次期生徒会長にも選ばれて結果として今の会長が完成したという事だった
(・・・そう言った意味ではもしかしたら如月達にも経験させた方がいいのかもしれないな・・・
いや・・・もしかしたらあいつらはそんな事は簡単に乗り越えてしまうかもしれないな・・・みんなで)
そしていよいよ祝賀会当日の朝になり在校生は卒業生よりも早く学校に来て最後のチェックをしていた
出し物の時間はクラスでちゃんと決まっておりまずはそれを体育館の倉庫に運ばなくてはいけないのだ
それは生徒会も同じであり色々な準備やその最終チェックの点検などやる事はたくさんあった
「クラスの出し物を持ってきたんだがチェックを入れてもらっていいか?」
好夜がクラスの出し物チェックをしていると晃平がやってきて自分達のクラスもやってほしいと告げる
それを聞いて好夜は急いでクラスの方に向かい全ての道具が揃っている事をクラス委員から聞いて
問題はないと判断して持っていたチェックシートに丸をつけると向こうで騒ぎが聞こえてきた
「どうしました?何か問題でもあったんですか?」
どうやら騒いでいたのは二年生のクラスであり好夜は何があったのかを尋ねる
「実は俺達が最初に出し物をする事になってたんだけど肝心の主役をやる人が熱を出しちゃったみたいで
ちょっと内容を変更する必要が出てきたんだ・・・悪いんだけど順番を変えてもらってもいいかな?」
騒いでいた理由は自分達の出し物で主役をやるはずだった人が熱で出席出来なくなってしまい
それで内容を変更する必要があるので出し物の順番を変えてほしいとの事だった
「そうですか・・・とりあえずクラスの代表達に聞いてみたいと思うので待っていてください」
そう言って好夜はその場を離れて足立と命に事情を説明それぞれクラスの代表に聞いて回る事にした
「えぇっ?!そんな事を急に言われてもな〜・・・ウチは準備を出来る奴がまだ来てなくて
最終的な事は最初の人達が出している間にしようと思ってたからな〜・・・」
残念ながらどうやらこちらのクラスは準備に時間が掛かるようで時間を変える事は出来無かった
残されたのは一年生のクラスだけなのだが自分達のクラスも準備に時間を必要とするので
可能性があるのは慶太達のクラスしかなく好夜は流石にダメかと思っていると
「如月君!向こうのクラスから了承をもらって一回目で大丈夫だって言ってくれたわ」
慶太達のクラスは一回目で大丈夫だと了承してくれたようで好夜達は良かったと思いながら
先ほどの二年生のクラスに戻ってその事を告げるとみんなもホッとしたような顔をしていた
そして再び好夜は出し物のチェックに戻りながら慶太達のクラスに向かいお礼を言う事にした
「悪いな・・・まさかのトラブルでお前達に迷惑をかけちゃって」
好夜は申し訳なかったと慶太達に対して謝っていたが二人はそんなに気にしてはいなかった
「気にすんなって!実は俺達もどうせなら一回目にやりたかったからさ!」
「?一回目にやりたかった?」
次回は慶太達のクラスが出し物を披露します




