始まる新学期
いよいよ新学期が始まる
バレンタインの時期も終わりいよいよ新学期が始まって好夜達は学校に向かっていた
しかも好夜達は生徒会なので始業式などの準備もありみんなよりも早く登校しなくてはいけないのだ
「それにしても・・・なんか始まったらすぐに終わりそうですよね?この新学期も」
事実、この新学期は三月下旬までなので実質的に通うのは一ヶ月程度しかないのだ
「まぁこの新学期は学生生活においてはオマケのようなものだからな・・・
就職や進学活動で忙しかった三年生がおくる最後の学生生活だ」
それを聞いて好夜は会長達にとっては何の気兼ねもなくおくれる最後の一ヶ月なのだと自覚した
それがどれほどに貴重でどれだけ楽しく寂しいものになるのか本人にしか分からないだろう
「・・・そうですね・・・会長達と過ごせる最後の一ヶ月になるんでしたね・・・」
好夜は会長達と最後の一学期を楽しく過ごさなくてはいけないと考えていると
「何をそんなに暗い顔をしてるのよ!もっと楽しそうな顔をしないと駄目よ!」
確かに香野の言う通り暗い顔をしていても誰かを楽しませるなんて出来るわけもないし
もっと笑わなくてはいけないと思った好夜は無理矢理に笑顔を作ると思いきり笑われてしまった
「流石にその笑顔は酷すぎるわ・・・!それにしても大丈夫なの?始業式の言葉」
笑い終えた香野は会長に今日の始業式で話す言葉はもう思いついているのか確認する
するとどうやら既に書き終えていたようで懐からその封筒を見せる
「・・・本当に準備いいですよね・・・なんかこれにも慣れてきたわ・・・」
好夜は会長の超人ぶりにも段々と慣れて来たようでこの仕事の速さにも驚かないでいた
「そういえば気になっていたんですけど足立先輩はどうしたんですか?
それに命の姿も見えないし・・・遅刻って事は流石にないですよね?」
そんな中で好夜は先ほどから姿の見えない足立と命の事を気にしている様子だった
「二人なら理事長室で色々と打ち合わせの話をしてもらっている真っ最中よ
何でも今年からこの新学期にとある行事を足したらしくてそれを説明するらしいわよ?」
それを聞いてどうして会長と香野が理事長室に向かわなかったのか理解できた
本人達は今年で卒業してしまうので説明を聞いてもそれを次に活かす事が出来ないのだ
だからこそ今回はサプライズという形で会長達には何も言わない事にしたのだろう
(・・・まぁ命に関しては単純にあの祖父さんが会いたかっただけだと思うけど・・・)
流石にそれは言わないようにしながら好夜達は始業式の準備を終えて命達と合流し教室に戻った
「お疲れ様・・・相変わらず生徒会はかなり忙しいみたいだな?」
教室に戻ると晃平が既に来ており生徒会の仕事を終えた二人を労う
「まぁな・・・でも二年生になる時に比べたらまだマシだろ・・・多分・・・」
しかし好夜の問題はその生徒会の仕事でほとんどを一人で終わらせる会長がいなくなる新学年だった
今ですらあの人が仕事をしても結構ギリギリなのは間違い無いのにもういなくなるのだ
つまりは次に入ってくる新入生の中に仕事の出来る人間がいないとはっきり言って崩壊してしまう
「・・・どうしたもんかね・・・やっぱり生徒会にお前も入ってくれない?」
好夜は次の事も考えてもしもの時は晃平に入ってもらう事まで視野に入れているとかなり真剣な顔をしていた
「俺は野球部の部長だぞ?流石に生徒会までやるまで時間はない・・・」
しかし晃平も野球部の部長も務めなくてはいけないので生徒会までしている時間はなかった
それを聞いてそれもそうだと好夜は諦めるがやはり納得できない事もあるようで不満そうな顔をしていた
「そういえば部活動で引退式もやるんだろ?そっちは準備できてるのか?」
すると好夜は思い出したかのように部活での引退式についてを思い出していた
実は三年生は既に引退自体はしているのだがちゃんとした引退は三月なのだ
だからその最後の三月に引退式といういわゆるお別れ会をする事になっており
それを担当するのは他でもない次期部長達が色々と準備をしなくてはいけないのだ
「もちろん準備はしているんだが・・・あの人の好みがイマイチ分からないからな・・・」
どうやら準備自体はしていたらしいのだが前の野球部部長である龍間はどんな時でも熱い男で
それ故に何に対しても基本的には好意的に接しているので好みがわからないのだ
「確かにそれはあるよな〜・・・俺も会長が喜びそうなものとか検討がつかないわ・・・」
同じく会長も龍間とは違い理由で好みが分かりづらい一面があり
好夜もどんな事をすれば喜ぶのか全くと言っていいほど分からないでいた
「まぁ他の三年生はいるわけだし全員に喜んでもらえるようなものを用意するつもりだ
もしかしたら文句は出るかもしれないがそれは次期部長として責任を持つとするよ」
他にも三年生はいるので全員に喜んでもらえるように努力はすると晃平は考えているのだった
そして時間が経って始業式が始まり好夜と命は壇上の上からみんなを見ていた
(・・・あそこにめちゃくちゃコッテリ怒られた奴の姿が見える・・・)
その中にはおそらく宿題の事で怒られたのであろう慶太の姿があった
それを見てやはり怒られたのかと少しだけ呆れた様子を浮かべながら好夜は見ていた
そうしてつつがなく始業式は進行していきいよいよこの年から始まる
新学期の新しい行事についてを先生方が説明を始めた
『既にみんなも聞いているとは思うが・・・この年から新学期で新しい行事を始める事になった
それは他でもない・・・三年生を労い最後の学生生活を満喫させる為の行事・・・
その名も・・・卒業祝賀会!これを先導するのは生徒会の一・二年生達!
これから君達にはこの祝賀会に向けた出し物を決めてもらいその練習をしてもらいます
部活でのお別れ会もあるので忙しくはなると思いますが
先輩達の卒業を少しでも喜んでもらう為に協力してくださいね?』
主任である先生はお願いだと言ってみんなの方に対して頭を下げていたのだが
(((いや・・・もうそこまでされたら断る事が出来ないんじゃ・・・)))
その行動自体がもはや脅迫のように感じてとてもではないが断れるような雰囲気ではなかった
こうして微妙な空気感を残して始業式は終わりを迎えて一向は教室に戻り
残った時間を使って先ほどの話に上がった祝賀会で何をするのかを決める事にした
「と言っても・・・下手に派手な出しものを選んだとしても
他の学年やクラスと被る可能性があるからな・・・出来るならば誰もやらなそうなものがいいか」
確かに学級委員長の言う通りいくら学年が少なくクラスもそこまでないと言っても
他の被らないと言う保証はなく何をするにしても慎重に選ばなくてはいけないのだ
さらにいうのならばそれと同じ時くらいに部活別でのお別れ会もあるのでそれとも出し物が被ってはいけない
まさに四方八方と道を塞がれた状態で進まなくてはいけないというかなりキツい道のりなのだ
「とりあえずはみんなの意見を出して言ってくれ・・・それからどうするのかを多数決で決めよう」
こうしてみんなで必死に考えながら祝賀会での出し物をどうするのか色んな案を出し合って
最後は多数決をしながらもどうにか最後の最後で決める事が出来たのだった
「まさか学校側で考えていたのが祝賀会だったとはな・・・流石に驚いていたな」
放課後に仕事をしながら会長は始業式での発表は流石に驚いたと言っており予想できなかったようだ
「それは私も同じだけど・・・本当に大丈夫なの?流石にこの新学期はかなりの負担になりそうだけど」
確かに香野の言う通り生徒会に部活にクラスにと正直な話をするのならば好夜達の負担はかなり大きい
それでも部活とクラスの出し物に関しては先輩やクラスメイトが任せていいと言っていたので
実質的にはみんなと同じくらいの負担だけでいいのでかなり助けられたと思っていた
「それでも十分にやる事は多いでしょ?特に二年生は三年生からの引き継ぎもあるし
就職活動なんかもあるんだから」
香野が最も不安に思っていたのはやる事が何気に多い二年生のみんなだった
おそらくほとんどの部活は二年生に次期部長を任せているはずなのでお別れ会の事を考えているはずだし
それ以外にも今度も自分達が三年生になるので就職活動や進学などでかなり忙しいのだ
しかしそれでも先輩達には感謝しているのでその分のお礼はしたいと考えており
だからこそ今回の祝賀会に関してはかなり気合が入っていると言っていいだろう
「大丈夫です!むしろこっちの方に気合いが入っているので任せてください!」
それは大丈夫なのかと疑問に思ったのは仕方ないとしてもその言葉だけで安心できる気がした
「まぁあまり無理のないようにやってくれ・・・俺達が仕事を出来るのはあと少しだし
これから来るであろう後輩に向けての生徒会案内を作らなくてはいけないからな」
そう・・・会長達が今やっているのは自分達がいなくなった後に入ってくるであろう
新入生に向けて生徒会がどんな活動をするのかを教える為のテキスト作りだった
そしておそらくはこれが会長達にとって最後の生徒会活動になるだろう
「そうですね・・・マジで会長達が抜けた穴を埋められるか心配ですけどね・・・」
好夜は遠い目をしながら本当に会長達が抜けるのだと少しだけ現実逃避をしていた
しかしそこはもうどうしようもない事実なのでこれから入ってくる新入生に期待するしかなかった
「それに関しては私達も頑張れと言うしかないわね・・・でも実際はそこまで心配はしてないわよ?
だって貴方達はそれだけ困難と言われていた生徒会の活動を一年間やり通したんだから
そして足立は二年間も勤めてくれた・・・来年はちゃんと引っ張っていってね?」
「「「はい!」」」
次回からは新学期です




